お隣さんは僕のまたたび〜拗らせ両片思いの功罪

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
上 下
47 / 68
それは始まりの始まり

それは健全な毎日で

しおりを挟む
受験生の佳境に入った先輩は、本当にたまに僕とファーストフードで一緒にご飯食べるくらいで、ほとんどゆっくりとした時間は取れなかった。

時々じっと見つめられて何か言いたげな顔をするけれど、受験が終わるまではどんな方向に傾こうとも、一歩も進む気は無かったので僕は知らんぷりしていた。

「じゃあ先輩、これから塾でしょ。お勉強頑張ってね。」


そう言って僕は先輩と別れて駅へと向かった。今日はこれから青山さんとスポーツショップへ行く事になっている。街歩き用のスポーツシューズが欲しいとメッセージでやり取りしていたら、青山さんの良く利用するショップの4割引のチケットがあるからどうかと言われたんだ。

その店が家からそう遠くない駅だったこともあって、土曜日の午後に約束していた。先輩にはもちろん、これから靴を買いに行くと言ってある。特にやましいこともないけれど、変に誤解されて動揺させたくもないから青山さんの事は言ってない。


僕は内心本当は、先輩に青山さんの事を知られたくないのかなと感じていた。のこのこ青山さんと会っても大丈夫だよね?僕は少しの後ろめたさを感じながら、どんな靴を買おうかと電車に揺られながらスマホを眺めていた。

改札を出ると、飛び抜けて背が高い青山さんは目立っているのですぐに分かった。僕はクスッと笑って手を上げながら近づいてくる青山さんを見上げた。


「青山さんて、存在自体が目印になってますよね。身長どれくらいですか?」

青山さんは僕と並んで歩き出しながら、少し考えながら言った。

「あー、191cm?チームメイトは俺サイズは何人か居るし、あんまり気にした事ないけど。確かにこう言う場所では悪目立ちするよね。」

僕は翔ちゃんも昔から背の高さで皆の目を惹きつけていて、それに僕がいつもモヤモヤした気持ちになっていたなと思った。


「それって青山さんの事好きな人にとっては、あまり良い事じゃ無いかもですね。」

僕がそう言うと、少し驚いた顔で青山さんは僕を見つめて理由を尋ねてきた。僕はなぜこんな簡単な事が分からないのかなと面白い気持ちで言った。

「だって、ここにこんな素敵な人が居ますよって沢山の人にバレちゃうって事でしょ。それは青山さんを好きな人にとっては、見つかって欲しくないだろうし。好きな人なら誰にも見つからないで独占して置きたいんじゃないのかな。」


僕がそう言うと青山さんはしばらく黙りこくって歩いていたけれど、ショップの前まで来たら少しため息をついて言った。

「…さっきの侑くんの言葉、俺の人生をぶった斬ったよ。侑くんて本当に中二なの?」

そうなんとも言えない顔をして、僕をじっと見下ろした。僕は首を傾げて店のドアを押しながら青山さんを横目で見つめて言った。

「僕の言う事なんて間に受けないでくださいよ。たかだか14歳のガキなんですから。ね?」








しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

処理中です...