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並行な道

ああ、そう言うことか

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僕はふわふわした気持ちでベッドへ転がった。翔ちゃんとキスしちゃった…。指でなぞるとそれは本当だったと自覚する。キスはキスでもいきなりディープなやつだった。いや、どうかな。びっくりし過ぎてあまり記憶がない。

僕はベッドに突っ伏して、足をバタバタさせて呻いた。マジかー!これって何のご褒美?正直五十嵐先輩とのキスは性的興奮だとか、エロいとか、好奇心で始まったキスだった。

だからさっきの翔ちゃんとのキスとは違う…。ドキドキ半端なかったな…。


僕はガバリとベッドに起き上がって顔を顰めた。

「翔ちゃんて彼女いるじゃん…。」

声に出してしまえばそれは馬鹿みたいに現実が僕をタコ殴りしてくる。そう言えば翔ちゃん言ったよね。『関係ないなら、関係ある様にする。』って。要は僕が先輩とイチャコラしてるのが心配で、口出すために僕とキスして関係者になるって事なのかな。

僕はもう一度仰向けに寝転がって呟いた。

「そっかぁ。そう言う事なのか…。」


そう言えば慶太ともお試しのキスしたじゃんね、僕。ハハ、手当たり次第だ。でも翔ちゃんとのキスは翔ちゃんからして来たんだ。僕のせいじゃないよ。翔ちゃんは僕が中学生なのに、先輩とイチャコラするのが気に入らないのかな。

男同士で妊娠もしないし、別に関係なくない?あ、…翔ちゃんて男ともキス出来るって事だよね。僕といっぱいした。どうせ彼女ともキスやそれ以上もしてるんだろうから、そう言うのって何だっけ。…バイだ。やな感じ。僕は女の子と全然そんな気になれないから、なんか…。


結局そんな事ばかりうだうだ考えているうちに、すっかり眠ってしまっていた。朝になって気がつけば、メッセージがあちこちから来ていた。

先輩からはマンションから撮った、綺麗な花火の写真。一緒に見たかったってコメントついてたけど、慶太と約束してなかったら、一緒に見てただろうし、翔ちゃんとキスも無かっただろうし、何か複雑な気持ちだな。

[綺麗だね。近くで見上げたらお腹に響いたよ。]

当たり障りのないコメントを送って、慶太のゴメンスタンプに大丈夫スタンプとコメントを送り返す。

[今度アイス奢って]


意外な人からもメッセージが届いているみたいだ。昨日連絡先を交換した青山さんだ。見たら返さなくちゃいけないから保留…。もう一つ最後に残してたメッセージを恐る恐る開いた。翔ちゃんから届いたコメントをじっと見つめた。

[無事に帰った?]

え。これだけ?僕はスマホをベッドに放ると目を閉じた。訳がわからない。関係者って何よ。どうせ幼馴染が男遊びしてるから心配したとかそう言うやつでしょ。自分がキスすればもうしないと思ってる?くそっ。やっぱり訳わかんない。

考えても分からないから返信もどう返して良いか分からない…。保留。


昨日の花火大会で、随分と振り回された。でも一生無いと思ってた、翔ちゃんとキス出来ただけ良いと思うべきなのかな。なぞる様に思い出せば、結構ちゃんとしたキスだった。気持ち良くてうっとりした。翔ちゃんキスも上手なのか。

…これから何か始まるのかな。翔ちゃんには彼女いるから、始まるわけないと本当は分かってるけど。

しばらく先輩と会うのも止めた方がいいかも。こんな気持ちで先輩とイチャイチャ出来ない。あまり振り回して受験に響いても困るし。


結局僕は先輩にとっては疫病神のような気がしてきた。先輩は大丈夫だって言ってたけど、もし僕が他の人とキスしたって知ったら、動揺する気がするし。もう、会わない方がいい?

考えてもキリのない事をウダウダ考えているうちに、部活の時間が近づいてきた。僕は慌てて飛び起きると、シャワーを浴びて母さんにせっつかれながら玄関を飛び出した。

夏休みは、もう後残り1週間だ。







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