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中学二年生
屋上への階段で
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「なぁ侑、今日俺んち来る?それか俺が侑の家へ行っても良いけど。部活休みだから今日ならあのゲーム一緒に出来るよ。」
中学校の廊下ですれ違った慶太が僕に声を掛けて来た。慶太は一緒に歩いていた友達を先に行かせると、僕の側に近づいて来た。
「慶太が部活休みとか珍しいね。僕は部活あるけど筋トレだけで5時には終わるから、それからでも良い?慶太と遊べるなんて、ちょっと久しぶり過ぎて嬉しいな。ね?」
そう言うと慶太は髪に手をやって、僕より少し高い位置にある顔を不貞腐れた様に俯かせた。
「侑が二年だからさ、なかなか誘うのむずいんだよ。学年で階も違うし。」
僕はクスクス笑って慶太に言った。
「慶太がサッカー部で忙しいからでしょ。聞いたよ?二年の女子にもモテてるって。…あ。あ、じゃあ、部活終わったら慶太の家行くね。楽しみにしてるから。」
目の端に映った、三年の五十嵐先輩が廊下の角に立って僕を待っているのを見て、僕は慶太に手を振ると先輩の所に向かった。先輩は僕の後ろをじっと見つめていたけれど、僕が振り返るともう慶太は居なくなっていた。
「先輩すみません。待たせちゃって。」
今日の昼食後は五十嵐先輩と約束していた。月に2回だけ、こうして昼休みに二人で会ってる。会って何するかと言うと、ナニしてるんだ。図書室の隣の空き教室の先、屋上へと続く階段が僕たちのいつもの場所。ここなら図書室へ行って来たと言う言い訳がつくから。
五十嵐先輩はもう引退したけれど、同じ弓道部の先輩だ。引退と同時に告白された僕は、告白は受け入れなかったけれど、先輩は受け入れた。僕は男が恋愛対象なんだと思う。昔から女の子にちょっかい出されても、鬱陶しかったし興味がなかった。それにあの時に自覚したのかもしれない。
だから先輩に告白された時に、言ったんだ。
『僕、好きな人がいるんです。でも僕には手が届かないってはっきりしてる人。でも先輩は嫌いじゃないですよ。僕、多分女の子はダメですから。』
結局、僕が男でも好きになったんだって泣いちゃうから、僕も絆されてこうしてたまに会ってる。僕の事を縛らない、僕が先輩の事好きにならなくても怒らないって条件で。僕たちは中学生だから、そんな取り決めを大人になった気分で交わした。
でもさっきの慶太を見つめる先輩の眼差しは、怒ってるみたいだった。いつもの様に死角になる屋上入り口の階段に腰掛けると、僕は五十嵐先輩に向き直った。
「先輩、慶太の事勘違いしてますよ。僕の好きな人はあいつじゃないです。慶太は単なる幼馴染ってだけです。」
五十嵐先輩は困った顔をして僕の手を繋いで、ボソリと言った。
「ごめん、嫉妬しちゃいけなかったのに。」
五十嵐先輩が涼しげな目元を赤くして顔を強張らせるのを見つめながら、繋いだ弓だこのある手をぎゅっと握った。
「先輩にはもっとちゃんと心を返してくれる相手が居ると思うけど…。辛くなったらいつでも離れますから言って下さいね。」
そう言って隣に座った先輩の顔を見上げると、先輩は苦しげな顔を寄せて僕にキスして来た。柔らかな感触と、少し甘い味。優しく啄む先輩のキスは好きだ。ぬるりと遠慮がちに僕の唇を舐めるのも。
もっと奥まで掻き混ぜて欲しいのに、先輩はそれ以上進もうとはしなかった。だから僕も五十嵐先輩との行儀の良いキスを月二回の少しの時間楽しんでいた。中学二年の夏休みにはまだ早い暑い階段で、先輩と触れ合うだけのキスをしながら、僕は首に汗が流れるのを感じた。
中学校の廊下ですれ違った慶太が僕に声を掛けて来た。慶太は一緒に歩いていた友達を先に行かせると、僕の側に近づいて来た。
「慶太が部活休みとか珍しいね。僕は部活あるけど筋トレだけで5時には終わるから、それからでも良い?慶太と遊べるなんて、ちょっと久しぶり過ぎて嬉しいな。ね?」
そう言うと慶太は髪に手をやって、僕より少し高い位置にある顔を不貞腐れた様に俯かせた。
「侑が二年だからさ、なかなか誘うのむずいんだよ。学年で階も違うし。」
僕はクスクス笑って慶太に言った。
「慶太がサッカー部で忙しいからでしょ。聞いたよ?二年の女子にもモテてるって。…あ。あ、じゃあ、部活終わったら慶太の家行くね。楽しみにしてるから。」
目の端に映った、三年の五十嵐先輩が廊下の角に立って僕を待っているのを見て、僕は慶太に手を振ると先輩の所に向かった。先輩は僕の後ろをじっと見つめていたけれど、僕が振り返るともう慶太は居なくなっていた。
「先輩すみません。待たせちゃって。」
今日の昼食後は五十嵐先輩と約束していた。月に2回だけ、こうして昼休みに二人で会ってる。会って何するかと言うと、ナニしてるんだ。図書室の隣の空き教室の先、屋上へと続く階段が僕たちのいつもの場所。ここなら図書室へ行って来たと言う言い訳がつくから。
五十嵐先輩はもう引退したけれど、同じ弓道部の先輩だ。引退と同時に告白された僕は、告白は受け入れなかったけれど、先輩は受け入れた。僕は男が恋愛対象なんだと思う。昔から女の子にちょっかい出されても、鬱陶しかったし興味がなかった。それにあの時に自覚したのかもしれない。
だから先輩に告白された時に、言ったんだ。
『僕、好きな人がいるんです。でも僕には手が届かないってはっきりしてる人。でも先輩は嫌いじゃないですよ。僕、多分女の子はダメですから。』
結局、僕が男でも好きになったんだって泣いちゃうから、僕も絆されてこうしてたまに会ってる。僕の事を縛らない、僕が先輩の事好きにならなくても怒らないって条件で。僕たちは中学生だから、そんな取り決めを大人になった気分で交わした。
でもさっきの慶太を見つめる先輩の眼差しは、怒ってるみたいだった。いつもの様に死角になる屋上入り口の階段に腰掛けると、僕は五十嵐先輩に向き直った。
「先輩、慶太の事勘違いしてますよ。僕の好きな人はあいつじゃないです。慶太は単なる幼馴染ってだけです。」
五十嵐先輩は困った顔をして僕の手を繋いで、ボソリと言った。
「ごめん、嫉妬しちゃいけなかったのに。」
五十嵐先輩が涼しげな目元を赤くして顔を強張らせるのを見つめながら、繋いだ弓だこのある手をぎゅっと握った。
「先輩にはもっとちゃんと心を返してくれる相手が居ると思うけど…。辛くなったらいつでも離れますから言って下さいね。」
そう言って隣に座った先輩の顔を見上げると、先輩は苦しげな顔を寄せて僕にキスして来た。柔らかな感触と、少し甘い味。優しく啄む先輩のキスは好きだ。ぬるりと遠慮がちに僕の唇を舐めるのも。
もっと奥まで掻き混ぜて欲しいのに、先輩はそれ以上進もうとはしなかった。だから僕も五十嵐先輩との行儀の良いキスを月二回の少しの時間楽しんでいた。中学二年の夏休みにはまだ早い暑い階段で、先輩と触れ合うだけのキスをしながら、僕は首に汗が流れるのを感じた。
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