139 / 148
番外編〜12年後のガブリエルと僕
僕の可愛い子はもう居ない
しおりを挟む
「ジュシア、そろそろはっきりさせないと。ガブリエル様の忍耐も限界なんじゃないか?」
ケインにそう言われて、僕はすっかり貫禄の増した目の前の男を睨んだ。この男は昔からそうだけど、いつだって余裕がある。相変わらず女たちにモテているけれど、妻帯もせずに遊んでばかりだ。
「ケイン、それってマケロン伯爵家の従者頭として言っているの?それとも僕の親友として?」
すると、大きなゴブレットの発泡酒を一気に飲み干して言った。
「あー、どっちも?俺はマケロン家にこの身を捧げていて恩義があるし、ルーク様が去年結婚しただろう?お前、自分がそうさせといて、凹んでいたからな。親友としては幸せになって貰いたいというか。
正直、俺はガブリエル様が怖いんだ。あの人は敵に回したくないっていうか、ま、俺のためにもジュシアを犠牲にしようと思ってさ。」
僕はため息と一緒に、一気に発泡酒を飲み干した。僕は実際逃げてばかりだ。ルーク様が結婚した時は、嬉しい気持ちとどこかショックな気持ちで思わずケインと深酒したのは苦い思い出だ。
最近はガブリエルを避けてばかりで、自分でもどうしたら良いか分からなくなっていた。そんな僕にケインは気不味い様子で尋ねた。
「で?結局、お前はガブリエル様と寝たのか?」
途端に咽せる僕の背中を摩りながらケインは質問を引っ込ませる気はないみたいだ。僕はしぶしぶ言った。
「…しょうがないだろ?発情期でフラフラだったんだ。いつもはルークに頼んでいたけど、流石に妻帯者に無理言える訳ないし。お前は絶対引き受けてくれないだろう?アルフレッドもルークと同時期に隣国へ外交派遣されていないし。
若い頃、他の人に手を出して危うく監禁される羽目になってから、怖くて誰でも良い訳じゃないし。」
ケインは暫く考え込んで言った。
「俺はお前とやるほど命知らずじゃねぇしな。そうか、お前が逃げ回るほどガブリエル様は下手だったのか。あの人にも苦手な事があったんだな。」
僕は自分の顔が熱くなるのを感じて、酒場の主人にお代わりを頼んだ。
「…別に下手じゃない。ガブリエルが下手な訳ないだろ?ケイン、ガブリエルはまだ20歳なんだ。学院時代からアーサー王子の側近として仕事をしていて人より大人っぽいとは言え、一方の僕は30歳だ。いくら何でも歳が離れすぎじゃない?僕はどうしてもそこが気になってしまうよ。」
「そうかぁ?お前は見た目的には24、5歳にしか見えないし、普通の人間と同じ括りには入らないだろう?何たって神様の使いだしな。それに俺から言わせたら、手遅れだと思うけどな。あのガブリエル様がお前を手放すと思うか?
ルーク様やアルフレッド様が戦線離脱したのも丁度ガブリエル様が成人さなった頃だ。それってタイミング良すぎないか?まぁそれは俺の憶測だけどな。…ほら、お迎えが来たぞ。」
ケインの視線を辿っていくと、ひとの目を惹きつけるいかにも洗練された金髪の騎士が丁度酒場に入って来た。僕はケインの顔を睨んで文句を言った。
「…なんで。ケイン、ガブリエルを呼んだの?」
耳元で少し苛立った声が聞こえてきた。
「別に呼ばれた訳じゃない。ジュシアの行動パターンはお見通しってだけだ。さぁ飲み過ぎないうちに帰ろう、ジュシア。ケイン、ゆっくり飲んでいってくれ。」
そう言ってカウンターに何枚か銀貨を置いたガブリエルにケインは満面の笑みで答えた。
「ガブリエル様、いつもご馳走様です!ジュシア、ガブリエル様の言う事を聞くんだぞ?」
ケインにそう言われて、僕はすっかり貫禄の増した目の前の男を睨んだ。この男は昔からそうだけど、いつだって余裕がある。相変わらず女たちにモテているけれど、妻帯もせずに遊んでばかりだ。
「ケイン、それってマケロン伯爵家の従者頭として言っているの?それとも僕の親友として?」
すると、大きなゴブレットの発泡酒を一気に飲み干して言った。
「あー、どっちも?俺はマケロン家にこの身を捧げていて恩義があるし、ルーク様が去年結婚しただろう?お前、自分がそうさせといて、凹んでいたからな。親友としては幸せになって貰いたいというか。
正直、俺はガブリエル様が怖いんだ。あの人は敵に回したくないっていうか、ま、俺のためにもジュシアを犠牲にしようと思ってさ。」
僕はため息と一緒に、一気に発泡酒を飲み干した。僕は実際逃げてばかりだ。ルーク様が結婚した時は、嬉しい気持ちとどこかショックな気持ちで思わずケインと深酒したのは苦い思い出だ。
最近はガブリエルを避けてばかりで、自分でもどうしたら良いか分からなくなっていた。そんな僕にケインは気不味い様子で尋ねた。
「で?結局、お前はガブリエル様と寝たのか?」
途端に咽せる僕の背中を摩りながらケインは質問を引っ込ませる気はないみたいだ。僕はしぶしぶ言った。
「…しょうがないだろ?発情期でフラフラだったんだ。いつもはルークに頼んでいたけど、流石に妻帯者に無理言える訳ないし。お前は絶対引き受けてくれないだろう?アルフレッドもルークと同時期に隣国へ外交派遣されていないし。
若い頃、他の人に手を出して危うく監禁される羽目になってから、怖くて誰でも良い訳じゃないし。」
ケインは暫く考え込んで言った。
「俺はお前とやるほど命知らずじゃねぇしな。そうか、お前が逃げ回るほどガブリエル様は下手だったのか。あの人にも苦手な事があったんだな。」
僕は自分の顔が熱くなるのを感じて、酒場の主人にお代わりを頼んだ。
「…別に下手じゃない。ガブリエルが下手な訳ないだろ?ケイン、ガブリエルはまだ20歳なんだ。学院時代からアーサー王子の側近として仕事をしていて人より大人っぽいとは言え、一方の僕は30歳だ。いくら何でも歳が離れすぎじゃない?僕はどうしてもそこが気になってしまうよ。」
「そうかぁ?お前は見た目的には24、5歳にしか見えないし、普通の人間と同じ括りには入らないだろう?何たって神様の使いだしな。それに俺から言わせたら、手遅れだと思うけどな。あのガブリエル様がお前を手放すと思うか?
ルーク様やアルフレッド様が戦線離脱したのも丁度ガブリエル様が成人さなった頃だ。それってタイミング良すぎないか?まぁそれは俺の憶測だけどな。…ほら、お迎えが来たぞ。」
ケインの視線を辿っていくと、ひとの目を惹きつけるいかにも洗練された金髪の騎士が丁度酒場に入って来た。僕はケインの顔を睨んで文句を言った。
「…なんで。ケイン、ガブリエルを呼んだの?」
耳元で少し苛立った声が聞こえてきた。
「別に呼ばれた訳じゃない。ジュシアの行動パターンはお見通しってだけだ。さぁ飲み過ぎないうちに帰ろう、ジュシア。ケイン、ゆっくり飲んでいってくれ。」
そう言ってカウンターに何枚か銀貨を置いたガブリエルにケインは満面の笑みで答えた。
「ガブリエル様、いつもご馳走様です!ジュシア、ガブリエル様の言う事を聞くんだぞ?」
22
お気に入りに追加
1,249
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる