カワウソの僕、異世界を無双する

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
上 下
138 / 148
僕は僕

僕の人生は案外上手くいっている 【 完 】

しおりを挟む
少し寝たりなさそうな不機嫌なガブリエルと一緒に起きて部屋に戻ると、ルークが僕の部屋の前で待っていた。

「そろそろ起きる頃かなと思ってね。私はしばらく遠征で帰って来られないからジュシアの顔を見てから行こうと思ったんだ。それにジュシアに聞きたいこともあったし。」

そう僕を見つめるルークに僕は少し動揺していた。そう言えば以前ルークは僕のことを好きだって言ったよね。その事だろうか。

「話ってなあに?」


僕が自分の部屋のドアを開けて浴室へ向かうと、慌てた様にルークが僕の腕を掴んだ。

「…時間がないから、話を先に聞いてくれるか?」

僕は振り返ってルークに向き直った。すると突然ルークが僕をぎゅっと抱きしめてきた。ん?何これ。朝からこんな事はされた事はない。するとルークは僕を抱きしめたまま耳元で言った。

「…ジュシアは誰かと恋人になる気はないのかい?もしその気があるなら、私が立候補しようと思ってる。何だか私が居ない間に他の誰かに盗られそうで心配なんだ。かと言って私のものではないのは分かっているんだけど。」


僕はルークの腕の中は気持ちがいいなと思いながらも、そっと胸を押して抜け出した。

「ね、ルーク。僕はルークが好きだよ。でも僕は人間じゃないでしょ。発情期もあるし、気楽なカワウソになるのも案外好きなんだ。だからルークの言うような決まった相手の恋人には向いていないと思う。自分でもどう行動しちゃうか約束出来ないし。ましてルークは伯爵家の後継で、色々責任があるでしょう。僕に拘るのは良くないよ。」

するとルークは唇を噛み締めて俯いた。

「何となくそんな感じの事を言われそうな気がしたんだ。…ジュシアを独占するのは難しそうだね。でもチャンスがあればジュシアを腕の中には抱けるって事かい?」


僕はクスクス笑って、ルークに抱きつくと首に手を回して顔を引き寄せて口づけた。

「遠征行くんでしょ?もう行かなくちゃ。いってらっしゃい。」

ルークは青い瞳を揺らして困ったような顔をして、自分から僕の唇に吸い付くとため息をついて言った。

「まったく懐くような、懐かない様な困った獣だ。その自由さが私を魅了するのかもしれないね。…行ってきます。いい子にしてるんだよ?」

そう言うと踵を返して部屋を出て行った。僕は浴室で温かなぬるいお湯を被りながら良い匂いのボディクリームを身体に塗った。それは何処かルークの匂いに似ていて、そう言えばこれもルークに貰ったのだと思い出していた。



それから制服を着たガブリエルと一緒に朝食を食べて、学院へ向かうガブリエルの馬車を見送ると僕はケインの所へ行った。

「ケイン、もし手が空いてたら教会へ連れて行ってくれる?荷物が多いから、出来れば一緒に行って欲しいんだけど。」

ケインはもう少ししたら手が空くと言うので、執事見習いのケニーにポーションの空き瓶は無いか聞きに行った。

「ジュシアさん、最近奥様がこちらの赤いポーションがお気に入りで定期的にお飲みになられるんです。これって何の効能があるんですか?」

僕は美しい箱の中の空き瓶をチェックしながらケニーに答えた。


「ああ、それ?それ僕が考えたんだけど、女性の美容と健康に効果があるんだ。ほら、夫人がご機嫌が良いと全て上手く行くものだろう?結果伯爵家にとっても良いんじゃないかな。今度は伯爵に効きそうなポーションも考えようと思って。ケニーは何に効くポーションが欲しい?ケニーは若いから特に問題は無さそうだけどね?」

ケニーはしばらく考え込んでいたけれど、チラッと僕を見て言った。

「あの、私好きな娘が居るんです。惚れ薬なんて効能はないですよね?」

僕はクスクス笑って言った。


「ケニー、流石にそんな魔法の様な薬はないよ。それよりケインにノウハウを聞いたらどう?ケインはいつも女性にモテモテだから。」

するとケニーは顰めっ面をしてこちらに向かってくるケインを見つめて言った。

「彼は馬鹿みたいに精力が有りますからね。あまり参考にはなりません。」

僕はハッとして、思わず手を叩いた。

「ハハ、それだ。いいよ、ケニーのために何か考えるから。期待して待ってて。」


僕はケニーに手を振りながら、ケインの操る荷馬車の横に乗って教会へ向かった。最近教会で作っているポーションに僕が口出しをして、色々な効能を付けたものを試作しているんだ。だから試しに使いたい材料を荷馬車に積み込んでいた。

実際伯爵夫人の飲んでいるポーションは、レモンやザクロの果汁を合わせたものに豆の成分を抽出したエキスが含まれているご婦人向けポーションだ。試作ながら結構反応が良いみたいで、近々大量に作り始めるらしい。


今度はケニーの希望する様な、精力に効くポーションを考えるのも良いかもしれない。それは伯爵にも喜ばれそうだ。僕はチラッとケインを見て尋ねた。

「ねぇ、ケインは何が好物なの?」

ケインは眉を上げて言った。

「なんかまた王都が騒ぎになる様なものを考えているんじゃないだろうな?ジュシアの考えるポーションは地味に効果があるから、教会の良い収入になり始めているけどな。まぁその金で慈善活動が充実してるから、ジュシアはやっぱり神様の使いなのかもしれないな。」


僕はクスクス笑って言った。

「まぁ光ってる僕に飽きた皆に、役立たずって追い回されたくはないからね。案外目立つのも大変さ。でも僕は今の生活が気に入ってるよ?」

するとケインは僕を呆れた様に見つめて言った。

「自覚がない様だけどな、ジュシアは色々な事を端からひっくり返していくんだ。常識も通用しないし、ジュシアの周りをウロウロする男たちが時々哀れにさえ思うよ、俺は。まぁジュシアの無双状態みたいなものだからな。見てる分には楽しいぜ?」

僕は声を立てて笑った。

「まさか!僕は単なるちょっと可愛いカワウソなだけだよ?そうだ、教会から帰ったら噴水でひと泳ぎしようかな?ビショップとも遊んでやらないと、あいつ可愛い盛りだからね!そのうち生意気になるのかなぁ。ちょっと想像できないけどねぇ。」

僕はケインとそんな話をしながら、眩しい王都の街並みを眺めた。ああ、今日もいい天気だね!






*** 後書き ***

ここで『カワウソの僕、異世界を無双する』本編を完結と致します♡読んでいただきありがとうございました♪

が、このまま引き続き番外編として、10数年後のジュニとご主人様のガブリエルがどうなったのか覗き見たいと思います!
安心してください!まだ終わりませんよぉ~?笑


本編は138話15万文字以上で完結です♡可愛いコツメカワウソが出てくる作品が書きたいだけで書き始めたこの作品でしたが、沢山の方に楽しんで貰えた様で、嬉しかったです。

結局ジュニは周囲を翻弄してスルリスルリと手の中から逃げ出してしまう性質の様ですが、果たしてガブリエルにもそれが通じるかどうか?そこら辺を番外編では書いてみたいと思いますので、楽しみにしていて下さい♡





しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...