上 下
134 / 148
僕は僕

兄弟犬

しおりを挟む
僕はテラスで王子様とガブリエルが真剣にボードゲームをしているのを遠目で見ながら、ビショップとその兄弟犬パウルを中庭で遊ばせていた。中庭には大きな噴水があるせいで、ジュニになって泳ぎたくなる。

『ジュニたん、今日は泳がないの?いっちょに泳ごうよ!』

ビショップが僕の足元に纏わりつきながら、顔を上げて誘ってくる。ビショップとまるで見た目が一緒のパウルも同じ様に僕の足元でウロウロするものだから、僕は足を取られて転びそうだ。


『ちょ、待って!危ないって。』

僕が二頭にそう言うと、ますます喜んで僕に絡んでくる。僕は思わず笑いながら二頭から逃げ回った。最終的に大きなモコモコの二頭に引き倒された僕は、芝の上に転がってケラケラと笑っていた。

「…随分とパウルに懐かれましたね。元々懐っこい子ですが、ここまで直ぐに打ち解けるのは初めてです。」

いつの間に側に来ていたのか、王子様の例の手帳従者が僕を見下ろしていた。僕は慌てて起き上がると、体についた草を手で払って言った。


「元々僕はビショップと仲良しですから、きっとそれがパウルの気を許したんでしょう。ビショップはパウルの事兄弟だって直ぐに思い出したみたいですし。他の二頭は何処に下げ渡されたんですか?」

僕がそうにこやかに尋ねると、手帳従者は一瞬黙ったけれど気を取り直して僕を探る様に見つめながら言った。

「なぜ貴方が兄弟犬の数をご存知なのですか?この事は王宮の関係者しか知られていない筈です。」

僕はハッとした。思わずビショップとパウルが話してた内容を言ってしまった。僕は動揺を隠して目を見開いて言った。

「え?大抵犬ってそれくらいの数が一度に産まれますよね。だからそう言っただけです。合ってました?ふふ、そっか、4頭全部が会えたら楽しいでしょうね。」


僕は何気ないフリでビショップ達をもふりながら、この妙に頭のキレる手帳従者を盗み見た。彼は少し僕を疑いの眼差しで見つめながらも何も言わなかった。

丁度その時、テラスで動きがあったので其方に二人で目をやると、ガブリエルと王子様の勝負がついた様だった。王子様は接待勝負は嫌いだと言っていたけれど、実際どうだったんだろう。

僕たちが彼らの側に近づくと、ガブリエルが王子様の顔を窺う様に見ていた。僕は胸に湧き上がる喜びを感じながら王子様の顔を見た。


「ガブリエルは凄い!私を最後に追い詰めて勝ち逃げたぞ?ハハハ、こんな楽しいボードゲームは初めてだ。ガブリエルを私の取り巻きの一人にしよう。良いだろう?ガブリエル。」

あ、ガブリエルの顔が笑ってるのに引き攣ってる…。僕のせいでこんな事になったよね?僕はビショップ達を王子様達の方へ行かせるとその場を誤魔化す事にした。

ビショップ達が二人に纏わりつくと、ガブリエルの強張った空気が解けた。…良かった。すると僕の耳元で手帳従者の囁き声がした。


「貴方、今なんて言いましたか?」



しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

父親に会うために戻った異世界で、残念なイケメンたちと出会うお話【本編完結】

ぴろ
BL
母親の衝撃の告白で異世界人とのハーフであることが判明した男子高校生三好有紀(みよしあき)が、母と共に異世界に戻り残念なイケメン達に囲まれるお話。 ご都合主義なので気になる方にはオススメしません。イケメンに出会うまでが長いです。 ハッピーエンド目指します。 無自覚美人がイケメン達とイチャイチャするお話で、主人公は複数言い寄られます。最終的には一人を選ぶはずだったのですが、選べないみたいです。 初投稿なので温かく見守って頂けたら嬉しいです。

抱かれてみたい

小桃沢ももみ
BL
16歳になったアーロンは王都の貴族学院に入学する事に。学院は3年制だが、アーロンには卒業後に帰ってくる場所はない。何故ならアーロンの家は貧乏男爵家で、しかも10人兄弟の末っ子だから。 この国では貴族に生まれても将来が安泰なのは長男とせいぜい次男のみ。裕福な家ならともかく、そうでないなら三男以降はなんとかして在学中に卒業後の進路を決めなくちゃいけない。だから学院では勉強よりも、将来の為に就職活動に励む生徒が多い。 中でも人気なのは、裕福な貴族の男の愛人になる事。つまり在学中に将来の有望株をゲットするって事。その為、母親似で可憐な見た目のアーロンに、家族はリッチな男の先輩を捕まえて愛人になるように勧めるけど、アーロンは気が進まなくて……。 ※男尊女卑の考え方が主流の世界です。 ※更新お休み中です。『引きこもりの』が終わったら再開します。(2024.6.11)

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

【完結】凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕

みやこ嬢
BL
2023/01/27 完結!全117話 【強面の凄腕冒険者×心に傷を抱えた支援役】 孤児院出身のライルは田舎町オクトの冒険者ギルドで下働きをしている20歳の青年。過去に冒険者から騙されたり酷い目に遭わされた経験があり、本来の仕事である支援役[サポーター]業から遠退いていた。 しかし、とある理由から支援を必要とする冒険者を紹介され、久々にパーティーを組むことに。 その冒険者ゼルドは顔に目立つ傷があり、大柄で無口なため周りから恐れられていた。ライルも最初のうちは怯えていたが、強面の外見に似合わず優しくて礼儀正しい彼に次第に打ち解けていった。 組んで何度目かのダンジョン探索中、身を呈してライルを守った際にゼルドの鎧が破損。代わりに発見した鎧を装備したら脱げなくなってしまう。責任を感じたライルは、彼が少しでも快適に過ごせるよう今まで以上に世話を焼くように。 失敗続きにも関わらず対等な仲間として扱われていくうちに、ライルの心の傷が癒やされていく。 鎧を外すためのアイテムを探しながら、少しずつ距離を縮めていく冒険者二人の物語。 ★・★・★・★・★・★・★・★ 無自覚&両片想い状態でイチャイチャしている様子をお楽しみください。 感想ありましたら是非お寄せください。作者が喜びます♡

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...