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僕は僕
兄弟犬
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僕はテラスで王子様とガブリエルが真剣にボードゲームをしているのを遠目で見ながら、ビショップとその兄弟犬パウルを中庭で遊ばせていた。中庭には大きな噴水があるせいで、ジュニになって泳ぎたくなる。
『ジュニたん、今日は泳がないの?いっちょに泳ごうよ!』
ビショップが僕の足元に纏わりつきながら、顔を上げて誘ってくる。ビショップとまるで見た目が一緒のパウルも同じ様に僕の足元でウロウロするものだから、僕は足を取られて転びそうだ。
『ちょ、待って!危ないって。』
僕が二頭にそう言うと、ますます喜んで僕に絡んでくる。僕は思わず笑いながら二頭から逃げ回った。最終的に大きなモコモコの二頭に引き倒された僕は、芝の上に転がってケラケラと笑っていた。
「…随分とパウルに懐かれましたね。元々懐っこい子ですが、ここまで直ぐに打ち解けるのは初めてです。」
いつの間に側に来ていたのか、王子様の例の手帳従者が僕を見下ろしていた。僕は慌てて起き上がると、体についた草を手で払って言った。
「元々僕はビショップと仲良しですから、きっとそれがパウルの気を許したんでしょう。ビショップはパウルの事兄弟だって直ぐに思い出したみたいですし。他の二頭は何処に下げ渡されたんですか?」
僕がそうにこやかに尋ねると、手帳従者は一瞬黙ったけれど気を取り直して僕を探る様に見つめながら言った。
「なぜ貴方が兄弟犬の数をご存知なのですか?この事は王宮の関係者しか知られていない筈です。」
僕はハッとした。思わずビショップとパウルが話してた内容を言ってしまった。僕は動揺を隠して目を見開いて言った。
「え?大抵犬ってそれくらいの数が一度に産まれますよね。だからそう言っただけです。合ってました?ふふ、そっか、4頭全部が会えたら楽しいでしょうね。」
僕は何気ないフリでビショップ達をもふりながら、この妙に頭のキレる手帳従者を盗み見た。彼は少し僕を疑いの眼差しで見つめながらも何も言わなかった。
丁度その時、テラスで動きがあったので其方に二人で目をやると、ガブリエルと王子様の勝負がついた様だった。王子様は接待勝負は嫌いだと言っていたけれど、実際どうだったんだろう。
僕たちが彼らの側に近づくと、ガブリエルが王子様の顔を窺う様に見ていた。僕は胸に湧き上がる喜びを感じながら王子様の顔を見た。
「ガブリエルは凄い!私を最後に追い詰めて勝ち逃げたぞ?ハハハ、こんな楽しいボードゲームは初めてだ。ガブリエルを私の取り巻きの一人にしよう。良いだろう?ガブリエル。」
あ、ガブリエルの顔が笑ってるのに引き攣ってる…。僕のせいでこんな事になったよね?僕はビショップ達を王子様達の方へ行かせるとその場を誤魔化す事にした。
ビショップ達が二人に纏わりつくと、ガブリエルの強張った空気が解けた。…良かった。すると僕の耳元で手帳従者の囁き声がした。
「貴方、今なんて言いましたか?」
『ジュニたん、今日は泳がないの?いっちょに泳ごうよ!』
ビショップが僕の足元に纏わりつきながら、顔を上げて誘ってくる。ビショップとまるで見た目が一緒のパウルも同じ様に僕の足元でウロウロするものだから、僕は足を取られて転びそうだ。
『ちょ、待って!危ないって。』
僕が二頭にそう言うと、ますます喜んで僕に絡んでくる。僕は思わず笑いながら二頭から逃げ回った。最終的に大きなモコモコの二頭に引き倒された僕は、芝の上に転がってケラケラと笑っていた。
「…随分とパウルに懐かれましたね。元々懐っこい子ですが、ここまで直ぐに打ち解けるのは初めてです。」
いつの間に側に来ていたのか、王子様の例の手帳従者が僕を見下ろしていた。僕は慌てて起き上がると、体についた草を手で払って言った。
「元々僕はビショップと仲良しですから、きっとそれがパウルの気を許したんでしょう。ビショップはパウルの事兄弟だって直ぐに思い出したみたいですし。他の二頭は何処に下げ渡されたんですか?」
僕がそうにこやかに尋ねると、手帳従者は一瞬黙ったけれど気を取り直して僕を探る様に見つめながら言った。
「なぜ貴方が兄弟犬の数をご存知なのですか?この事は王宮の関係者しか知られていない筈です。」
僕はハッとした。思わずビショップとパウルが話してた内容を言ってしまった。僕は動揺を隠して目を見開いて言った。
「え?大抵犬ってそれくらいの数が一度に産まれますよね。だからそう言っただけです。合ってました?ふふ、そっか、4頭全部が会えたら楽しいでしょうね。」
僕は何気ないフリでビショップ達をもふりながら、この妙に頭のキレる手帳従者を盗み見た。彼は少し僕を疑いの眼差しで見つめながらも何も言わなかった。
丁度その時、テラスで動きがあったので其方に二人で目をやると、ガブリエルと王子様の勝負がついた様だった。王子様は接待勝負は嫌いだと言っていたけれど、実際どうだったんだろう。
僕たちが彼らの側に近づくと、ガブリエルが王子様の顔を窺う様に見ていた。僕は胸に湧き上がる喜びを感じながら王子様の顔を見た。
「ガブリエルは凄い!私を最後に追い詰めて勝ち逃げたぞ?ハハハ、こんな楽しいボードゲームは初めてだ。ガブリエルを私の取り巻きの一人にしよう。良いだろう?ガブリエル。」
あ、ガブリエルの顔が笑ってるのに引き攣ってる…。僕のせいでこんな事になったよね?僕はビショップ達を王子様達の方へ行かせるとその場を誤魔化す事にした。
ビショップ達が二人に纏わりつくと、ガブリエルの強張った空気が解けた。…良かった。すると僕の耳元で手帳従者の囁き声がした。
「貴方、今なんて言いましたか?」
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