上 下
130 / 148
僕は僕

王都へお散歩

しおりを挟む
「ジャックさん!すみませんご無沙汰しちゃって!ビショップを入り口に繋いで置いても良いですか?」

僕が店先から顔を覗かせて古着屋の主人に呼びかけると、目を見開いたジャックさんが慌てて僕のところまでやって来た。そして足元の大きな白いムクムクのビショップに、また目を見開くと言った。

「ジュシアは、何度も驚かせるな!元気だったか?その見事なワンコロは店の中へ連れて来ていいぞ。カウンターの側に繋いで置いた方が良い。外じゃ連れていかれそうで心配だ。いかにもお貴族様のペットだからなぁ。」


僕がビショップをカウンターの脚に繋いでいると、ジャックさんが笑いながら言った。

「光ってるって噂は聞いたが、まさかこんなにジュシアが神々しく見えるとは思わなかったぞ?今やジュシア様なのか?」

僕は王都でどんな話になっているのか知らなかったので、ジャックさんにニヤリと笑うと軽口を叩いた。

「ええ、僕は存在自体が神々しいですから。きっとご利益はありますよ?」

ジャックはガラス窓の向こうから目を見開いたお客さんが次々に店舗に入ってくるのを眺めながら、呆れた様に言った。

「ご利益は凄まじい威力がある様だ。時間があるならジュシア、例のやつやってくれるか?」


それから僕とジャック、そして店員は目の回る忙しさでお客様の見立てをどんどんしていった。久しぶりの仕事は楽しかったけれど、流石に店の目ぼしい服が売り切れた後ではグッタリとしてしまった。

ビショップも待ちくたびれたのか、すっかり眠りこけている。店を閉めたジャックは僕に美味しいお茶を飲ませながら尋ねた。

「結局なんだ、ジュシアは神様の使いなのか?噂ではそうなってるが。」


僕は首を傾げてひと息つくと、ジャックの人好きする顔を見つめて言った。

「どうかな。身体が光っちゃったから、そうなったって感じだけど。でも僕は以前とそう変わらないよ。まぁ、皆が好きに考えてくれたら良いんじゃないかな。」

そう言うとジャックは弾ける様に笑って言った。

「なるほどな。確かにちょっと神々しいが、ジュシアはジュシアだな。なぁ、これからワンコロと散歩するんだろう?俺の知り合いが貴族相手のペットの店やってんだ。サービスしてくれると思うぞ?…いや、なに、御利益をな、そいつにも分けてやりたくてよ。」


僕はニヤリと笑うと、ビショップの首を撫でながら言った。

「ビショップが良い子で待っててくれたからね、丁度ご褒美をあげたかったんだ。美味しいおやつがあると良いね、ビショップ?」

いや、ビショップ、そんな歯を剥き出しにしたら怖いよ。ほら、涎垂れすぎだし…。僕たちはビショップに引きずられる様にペットの店を目指して歩き出した。



しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

処理中です...