上 下
124 / 148
新しい僕

ポーション

しおりを挟む
僕は好奇心で目を輝かせているルークを横目に、ただひたすら困っていた。あんなのは冗談に過ぎないのに。入り口で真っ白な上衣を着せられて手を綺麗に洗うと、聖水の入った大きな瓶が何本か並んでいた。

僕はそのガラス瓶を眺めて首を傾げた。

「ここにあるものは全て同じものですか?これだけ違って見えますね。」

僕がそう言うと、ルークが近づいて来てガラスに顔を寄せた。それから僕を見上げて言った。

「いや、私には同じものに見えるが。」


僕はもう一度顔を寄せて目を凝らせた。やっぱり違って見える。色は同じ透明だけど、こちらの数本はキラキラと細かな粒子が揺れている。他は普通の水の様だ。

「僕にはこの3本はまるで別に見えますけど。ちょっとキラキラしていると言うか。こっちの2本は普通の水っぽいです。」

すると顔を青褪めさせた司祭の一人が、一緒に来ていた司祭長達に跪いて言った。

「申し訳ありません!聖水が無くなってしまって普通の水を代わりに使おうと先程汲んできたんです。」


僕は顰めっ面している副司祭長の顔を見つめて言った。

「僕ちょっと前に滝壺まで行ったんですけどね、あそこはなかなかどうして辿り着くのも、重い聖水を下げて戻るのも大変な場所でしたよ。皆さん行った事が有りますか?おじさんが一人で汲みに行っているみたいでしたけど…。」

すると項垂れた司祭がハッと顔を上げて言った。

「実はいつも聖水を運んでくれているその人が、怪我をしてしばらく行かれないと言う事だったのです。けれどもポーションの供給本数は賄わないといけないしで、思わず…!申し訳ありません!」


司祭長は僕の方を向いて言った。

「これは解決しなければならない教会の問題ですね。確かに聖水はあの男に任せきりでしたから。私達も何か手立てを考えないといけないかもしれません。しかしジュシア様の神の使いというお力は、ここに証明されました。

それにやはり聖水には特別な力があるという事がはっきり分かって、こんなに喜ばしい事はありません。」

そう言って僕の方を向いて微笑んだ。僕もリアル神の使いの片鱗を見せることが出来て、正直ホッとした。


それからポーションを一緒に作ったものの、別に僕が作ったからと言って見た目に変化も見えなかったので、実際に使用比べてみないと、それについては分からないと言うことになった。

僕はルークと馬車に乗って教会を出立しながら、とりあえず教会に弾劾されたりする恐れは無くなったと思って、胸を撫で下ろした。そんな僕の顔を見つめながら、ルークは急に甘やかな表情で呟いた。


「さっきから我慢してたんだ。…今からジュシアの部屋に行ってもいいかい?さっきの続きをしよう。」



しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

処理中です...