カワウソの僕、異世界を無双する

二重生活

不覚にもデジャブ

う…ん。何か狭い…。僕は身体が動けなくて目が覚めた。目が覚めると同時に感じたのはデジャブ。ああ、前もあったな。でもあの時よりはマシなのかもしれない。だって、全裸じゃない。

ベストは無いし、ズボンも履いてないけど、下着は履いてるし、ブラウスも辛うじて身体に、まとわりついてる。僕は昨日誰といたのか思い出して、恐る恐る僕を抱き寄せる筋肉質の太い腕の持ち主を見上げた。


目の中に飛び込んでくる、青みの感じる灰色の特徴的な髪はアルフレッドのもので間違いなさそうだ。僕は息を殺して、目を閉じて呑気に眠っているアルフレッドからこっそり逃れるにはどうしたら良いか考えた。

だけど思いの外がっちりと抱き込まれているせいで、逃げようも無い。僕は諦めて、アルフレッドの頬に手を伸ばしてペチペチと叩いた。

「…アルフレッド、起きて。ね、離して。」


するとアルフレッドが、突っつく僕の手を握って口の中に押し込んだ。突然の事に僕は唖然として、指先を大きな舌で舐められるままだった。は？何してくれてんの？

僕はジタバタとアルフレッドを押しのけようとしたけれど、いかんせんぽっちゃりカワウソ対、騎士団員のガチムチじゃ勝負ははなから決まってる。その間も僕の指はアルフレッドにねっとりと舐められて、僕は妙な気分になって来た。


「…あんっ！」

口から飛び出した自分でも聞いたことのない甘い声に、僕は目を丸くした。ヤバい。何がヤバいって、アルフレッドが僕をもっと引き寄せて、ギラついた眼差しで見つめていたから。

「ジュシアはひどい男だ。どんどん周囲の仲間を調子に乗らせて、何なら甘えて。私が何度も引き剥がさなかったら、目を離した隙に連れて行かれたはずだ。

その挙句酔い潰れて。馬鹿みたいに甘えてくるジュシアをモノにするのは簡単だったが、目が覚めたら絶対私を恨むだろう？夜中、必死に耐えた私にご褒美をくれてもいいと思う。」


え？自分のその硬くしたソレを僕に押し付けながらそんな事言っちゃうの？僕はそろりと周囲を見回した。案の定慣れた僕の秘密基地だった。僕の様子を見ていたアルフレッドが薄く笑って言った。

「もちろんこの場所は知ってたよ。私が直接恩人のために心を配って選んだのだからね。しかし、正体の無い本人を連れ込む事になるとは思わなかった。…私はジュシアに正式に招待されるまで待とうと思っていたんだから。でもこれもまた運命の悪戯かもしれない。ジュシア、私にご褒美をくれ。」