カワウソの僕、異世界を無双する

秘密の発覚

証人台

僕は緊張しながら、扉の影から捕まった男の顔を見た。やっぱりあいつだ。僕が騎士団としてこの場に居るアルフレッドに頷くと、僕の肩にそっと手を置いて扉の向こう側へと姿を消した。

少し開いた扉の向こうから漏れ聞こえて来るのは、ギルドの窓口の男が裁定員に罪状を告げられている声だった。結局、この男は、王都へ来たばかりの住所が定まっていない様な、慣れない若者たちをあの手この手で騙して、客に提供していたのが明るみに出たのだった。


多くの若者は泣き寝入りしていたが、事件が明るみに出ると被害を訴える者が何人も名乗り出て、男が残していた手帳との辻褄合わせで、とんでもなく王都を賑わす事件になったのだった。

僕もルークに連れられて今日ここに証人として来たのだけれど、裁定の後、アルフレッドが随分恐ろしげな顔をして言った。

「ジュシアが危ない目に遭ったとは、本当に許せない話だ。あの男はあまりにも多くの者に害を及ぼした。極刑は免れないだろうよ。私も、腹が煮えたぎる。」


僕はアルフレッドがあまりにも怒っているので、どうにかしないといけないと苦笑して言った。

「確かに僕も不用心だったんです。王都には怖い人もいるんだって身に染みました。でも僕が逃げた事でこの事件が明るみに出て本当に良かったです。ルーク様も助けてくれましたし、実際僕にあの男は手出し出来なかった訳ですし、アルフレッド様、そんなに怒らないでください。」

するとアルフレッドが、僕の手を両手で握りしめて言った。


「…ジュシア、私が君を、過不足ない生活をさせてあげるよ。これは命の恩人であるジュシアへの私の感謝の印だ。君は私に何も返す必要は無いし、ただ自分の好きな事をして生活すれば良い。今はマケロン伯爵家で子守りをしているそうだが、それを続けたって良いんだ。どうだろう。私の提案を受け取ってはくれないだろうか。」

僕はアルフレッド様の言う真意が分からなくて、首を傾げて尋ねた。

「…もしかして、僕を愛人にと仰っているんですか？」


するとアルフレッドは大袈裟に首を振って言った。

「まさか！私は命の恩人にそんな無体な話を提案するわけがない。腐っても侯爵家の人間は後ろ暗いところは無いのだよ。私はただ、安全な生活をジュシアに用意してあげたいだけだ。考えておいてくれないか。」

僕はアルフレッドの真剣な様子に、思わず頷いてしまっていた。これって棚ぼたな感じ？