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包囲網

侯爵家のとっておきの場所

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マケロン伯爵家より広いギーク侯爵の敷地には、なるほど凝った造りの箱庭の様なものがあった。アルフレッドの背より高い場所から落ちる滝や、その下の美しい滝壺、芝地へ続く小花の咲くお花畑。

僕はひと目でここが何を模しているのかに気がついた。ここはサウリ山の聖水の滝壺を模しているんだ。僕が思わずじっとその滝壺を見つめていると、ガブリエルが繋いでいた手を引っ張って心配そうに尋ねた。

「ジュ、…ジュシアどうかした?」

するとアルフレッドが滝壺の淵に近づいて、屈んで手を浸して言った。


「美しいだろう?此処はサウリ山の聖水の滝壺を模して造られているんだ。勿論大きさは随分小さいけどね。ガブリエルも、もう少し大きくなったら、滝の上から飛び込むことも出来るよ。少年の頃は何度も友人と飛び込んだものだ。だから本当は、運河に落ちても大丈夫な筈だったんだけどね。まぁ、あの時は気を失ってたから…。

ここはサウリ山に聖水を汲みに良く通っていた、従者に調べさせた報告を元に、お祖父様が造らせたんだ。実は聖水の滝壺の裏には洞窟があるって知ってたかい?それも再現してあるんだよ。」


アルフレッドの言葉に、僕は何だか胸がザワザワした。あの滝壺に洞窟なんてあっただろうか。僕が覚えてないだけ?でも確かにあそこで僕はカワウソとして過ごしていた。時には人間としてあの花畑で寝転がった事もある。

でも人間よりもカワウソの方が過ごし易かったせいで、僕は呑気に泳いだり、魚を追いかけたりばかりしていたんだ。滝の飛沫の裏には潜って行ったけれど、滝壺の裏?そっちには行ってないかもしれない。そうだ、一度蛇が襲って来て近寄らない様にしていたんだ。


僕は急に好奇心が増してきて、サウリ山の聖水の滝壺を模したと言われてから、私を心配そうに見つめるガブリエルに大丈夫だとにっこり笑い返すと、先頭を立つアルフレッドの後を二人で手を繋いでついて行った。

目の前の大人一人が入れる岩の裂け目の奥には、そこそこ広い洞窟があった。正確にはトンネルだろうか。向こう側からも日差しが入ってくる。真ん中に岩で出来た階段の様なものがあってそれが滝へと繋がっているのだと、アルフレッドは教えてくれた。


階段の対面には何か祭壇の様な石の台があった。僕がそこに手を置くとチラチラと頭の隅に情景が浮かんで来た。けれども、それは形を成さなくて、僕は眉を顰めて周囲を見回した。

そんな僕にアルフレッドは、にこやかに微笑んで言った。

「ジュシアは暗いところが苦手なのかな?でもここは暑い時は涼しくて、寒い時は暖かいから、ちょっとした休息の場所になるんだよ。しかも壁の苔は夜光苔だから、夜は美しく光ってロマンチックなんだ。…好きな人を連れて、夜の散歩をするには素敵なところさ。」

そう言って僕をじっと見つめた。ん?もしかして口説かれてる?まさかね。





~お知らせ~

新作『紋様皇子が私に毒を喰らわされたと訴えてきます』本日12時公開開始します♡

恋愛小説大賞のお祭り?に参加するために、久しぶりに恋愛ものを書いてみました♪似て異なるトカゲ亜人の世界に異世界転移した瑠璃が、自分こそ異端の存在として生きるハメになるものの、美しくも逞しい皇子に掴まって溺愛される話です。
相変わらずのワクワクに、過去作『ちょっと味見したかっただけですわ』のエロさに反省して以来、恋愛R18は封印してきましたが解禁します♡よろしくお願いします(*≧∀≦*)ハハハエロモカイチャウモンネ


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