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夜遊びの副産物
執事見習いsideペットの捜索
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マケロン伯爵家の執事長であるセバスチャンの甥である私は、伯爵家に勤めてからもう二年になる。普段はセバスチャンの雑用や補佐を務めているのだが、時々坊ちゃん方の付き添いなどもこなす様になった。
今日はガブリエル坊ちゃんのペット探しに借り出されるようだが、ジュニを探すとなると何処を探して良いか皆目見当もつかなかった。ジュニは見たこともない動物で、可愛さと賢い仕草に虜になる者が続出で、伯爵家でとても可愛がられている。私も噴水にいくらコインを投げ込んだか覚えていないくらいだ。
ジュニが城から逃げ出す事を、皆が考えていないのは不思議だが、私もジュニは放っておいても戻ってくる気がするので、そその感覚はちょっと説明し難い。だからガブリエル坊ちゃんが探しに行きたいと言い出したのは、帰れなくなった事情が発生している可能性があるのかもしれない。
私と年齢が近く、人を威圧する様な見かけの割に気の良い性格のケインは、坊ちゃんの護衛としてもぴったりの男だった。私は彼に馬車を用意する様に頼むと、ジュニが何処ら辺で見つかりそうなのか当てはあるのかと尋ねた。
「最近ジュニは街の方へ遊びに行ってるようで。だから心当たりがあるんです。」
私たちがそう話していると、伯父のセバスチャンと一緒にガブリエル坊ちゃんがやって来た。
「ケニー、ガブリエル様を頼むぞ。もし見つからなくても適当な時間で戻ってくる様に。」
そう小声で私に囁くセバスチャンに頷くと、私とガブリエル坊ちゃんはケインの操る馬車に乗り込んだ。坊ちゃんは何か考え込んだ表情で居たかと思うと、とりあえず王都の街へ行くようにと私に指示した。
それからまた何か考え込む様な素振りをしながら、時々私を見つめた。
「ガブリエル様は、ジュニが帰れない原因があるとお考えですか?」
私がそう尋ねると、ガブリエル様はため息をついて私を見て言った。
「…そうだね。僕たちが迎えに行けても、城に戻るのは難しいかもしれないんだ。」
そう謎解きのような事を言う、ガブリエル坊ちゃんの次の言葉を眉を顰めて待っていると、ガブリエル坊ちゃんが諦めたように私を見つめて言った。
「実は昨日、ケインに頼んでジュニを外に連れ出してもらっていたんだよ。ジュニも夜遊びがしたかったみたいだからね。その時にジュニがケインと人助けしたみたいなんだ。そのせいで疲れ切って寝込んでしまったジュニが、助けた人の家で介抱されているんだって。
だから父上には内緒だったんだけど、実は僕たちはジュニを迎えに行くところなんだよ。さっきはケニーにどう説明したら良いか分からなかったんだけど、ギーク侯爵家に行くとなるとケニーに対応してもらわなくちゃならないから、秘密を打ち明けたんだ。」
私は話の内容を理解しようと、ガブリエル坊ちゃんの口元を見つめた。けれど、やはりジュニがよりにも寄って、ギーク侯爵家に預けられているという状況がいまいちハッキリとは掴めずに、只々ガブリエル坊ちゃんの美しい緑色の瞳が、悪戯っぽく光るのを見つめることしか出来なかった。
今日はガブリエル坊ちゃんのペット探しに借り出されるようだが、ジュニを探すとなると何処を探して良いか皆目見当もつかなかった。ジュニは見たこともない動物で、可愛さと賢い仕草に虜になる者が続出で、伯爵家でとても可愛がられている。私も噴水にいくらコインを投げ込んだか覚えていないくらいだ。
ジュニが城から逃げ出す事を、皆が考えていないのは不思議だが、私もジュニは放っておいても戻ってくる気がするので、そその感覚はちょっと説明し難い。だからガブリエル坊ちゃんが探しに行きたいと言い出したのは、帰れなくなった事情が発生している可能性があるのかもしれない。
私と年齢が近く、人を威圧する様な見かけの割に気の良い性格のケインは、坊ちゃんの護衛としてもぴったりの男だった。私は彼に馬車を用意する様に頼むと、ジュニが何処ら辺で見つかりそうなのか当てはあるのかと尋ねた。
「最近ジュニは街の方へ遊びに行ってるようで。だから心当たりがあるんです。」
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「ケニー、ガブリエル様を頼むぞ。もし見つからなくても適当な時間で戻ってくる様に。」
そう小声で私に囁くセバスチャンに頷くと、私とガブリエル坊ちゃんはケインの操る馬車に乗り込んだ。坊ちゃんは何か考え込んだ表情で居たかと思うと、とりあえず王都の街へ行くようにと私に指示した。
それからまた何か考え込む様な素振りをしながら、時々私を見つめた。
「ガブリエル様は、ジュニが帰れない原因があるとお考えですか?」
私がそう尋ねると、ガブリエル様はため息をついて私を見て言った。
「…そうだね。僕たちが迎えに行けても、城に戻るのは難しいかもしれないんだ。」
そう謎解きのような事を言う、ガブリエル坊ちゃんの次の言葉を眉を顰めて待っていると、ガブリエル坊ちゃんが諦めたように私を見つめて言った。
「実は昨日、ケインに頼んでジュニを外に連れ出してもらっていたんだよ。ジュニも夜遊びがしたかったみたいだからね。その時にジュニがケインと人助けしたみたいなんだ。そのせいで疲れ切って寝込んでしまったジュニが、助けた人の家で介抱されているんだって。
だから父上には内緒だったんだけど、実は僕たちはジュニを迎えに行くところなんだよ。さっきはケニーにどう説明したら良いか分からなかったんだけど、ギーク侯爵家に行くとなるとケニーに対応してもらわなくちゃならないから、秘密を打ち明けたんだ。」
私は話の内容を理解しようと、ガブリエル坊ちゃんの口元を見つめた。けれど、やはりジュニがよりにも寄って、ギーク侯爵家に預けられているという状況がいまいちハッキリとは掴めずに、只々ガブリエル坊ちゃんの美しい緑色の瞳が、悪戯っぽく光るのを見つめることしか出来なかった。
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