カワウソの僕、異世界を無双する

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
上 下
46 / 148
夜遊びの副産物

執事見習いsideペットの捜索

しおりを挟む
マケロン伯爵家の執事長であるセバスチャンの甥である私は、伯爵家に勤めてからもう二年になる。普段はセバスチャンの雑用や補佐を務めているのだが、時々坊ちゃん方の付き添いなどもこなす様になった。

今日はガブリエル坊ちゃんのペット探しに借り出されるようだが、ジュニを探すとなると何処を探して良いか皆目見当もつかなかった。ジュニは見たこともない動物で、可愛さと賢い仕草に虜になる者が続出で、伯爵家でとても可愛がられている。私も噴水にいくらコインを投げ込んだか覚えていないくらいだ。


ジュニが城から逃げ出す事を、皆が考えていないのは不思議だが、私もジュニは放っておいても戻ってくる気がするので、そその感覚はちょっと説明し難い。だからガブリエル坊ちゃんが探しに行きたいと言い出したのは、帰れなくなった事情が発生している可能性があるのかもしれない。

私と年齢が近く、人を威圧する様な見かけの割に気の良い性格のケインは、坊ちゃんの護衛としてもぴったりの男だった。私は彼に馬車を用意する様に頼むと、ジュニが何処ら辺で見つかりそうなのか当てはあるのかと尋ねた。


「最近ジュニは街の方へ遊びに行ってるようで。だから心当たりがあるんです。」

私たちがそう話していると、伯父のセバスチャンと一緒にガブリエル坊ちゃんがやって来た。

「ケニー、ガブリエル様を頼むぞ。もし見つからなくても適当な時間で戻ってくる様に。」

そう小声で私に囁くセバスチャンに頷くと、私とガブリエル坊ちゃんはケインの操る馬車に乗り込んだ。坊ちゃんは何か考え込んだ表情で居たかと思うと、とりあえず王都の街へ行くようにと私に指示した。


それからまた何か考え込む様な素振りをしながら、時々私を見つめた。

「ガブリエル様は、ジュニが帰れない原因があるとお考えですか?」

私がそう尋ねると、ガブリエル様はため息をついて私を見て言った。

「…そうだね。僕たちが迎えに行けても、城に戻るのは難しいかもしれないんだ。」

そう謎解きのような事を言う、ガブリエル坊ちゃんの次の言葉を眉を顰めて待っていると、ガブリエル坊ちゃんが諦めたように私を見つめて言った。


「実は昨日、ケインに頼んでジュニを外に連れ出してもらっていたんだよ。ジュニも夜遊びがしたかったみたいだからね。その時にジュニがケインと人助けしたみたいなんだ。そのせいで疲れ切って寝込んでしまったジュニが、助けた人の家で介抱されているんだって。

だから父上には内緒だったんだけど、実は僕たちはジュニを迎えに行くところなんだよ。さっきはケニーにどう説明したら良いか分からなかったんだけど、ギーク侯爵家に行くとなるとケニーに対応してもらわなくちゃならないから、秘密を打ち明けたんだ。」


私は話の内容を理解しようと、ガブリエル坊ちゃんの口元を見つめた。けれど、やはりジュニがよりにも寄って、ギーク侯爵家に預けられているという状況がいまいちハッキリとは掴めずに、只々ガブリエル坊ちゃんの美しい緑色の瞳が、悪戯っぽく光るのを見つめることしか出来なかった。






しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...