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夜遊びの副産物
ガブリエルsideジュニが居ない夜
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ジュニがあの人目を引く人間の姿になって、夜に出掛けるのはしょうがないと僕は諦めた。ジュニ曰くは18歳らしいし、兄上を見ているとその年頃で夜出掛けるのは当たり前みたいだし。でも兄上と同い年には全然見えないな。人間のジュニに抱きしめられると案外柔らかいし、あまり男って感じがしない。
もっとも兄上は騎士団に入るくらい鍛えてるから、比較対象にならないかもしれない。騎士団参謀の父上も似たり寄ったりで、僕もあんな風に分厚い身体になるのかと思うと、ちょっと嫌かも。僕はどちらかと言うと頭を使った仕事の方が良いな。勉強も嫌いじゃないし。
ジュニとケインを見送って、執事と部屋に戻ると、部屋がいつもと違う気がした。ジュニのちょっとした独り言の様な鳴き声も聞こえないし、僕が眠るまで一緒にベッドに横になってくれている、人間のジュニも今日は居ない。
僕はベッドにモゾモゾ入りながら、妙にシーンとした部屋の暗闇をじっと見つめた。窓の方を向けば、薄くなった月が浮かんでいて、闇夜を照らしてはくれなかった。
「…ジュニ、ちゃんとお土産買ってきてね。」
独り言も妙に部屋に響いた。するとその時、扉がノックされた。僕がハッと身動きして恐る恐る扉を見つめていると、聞き慣れた声が掛かった。
「ガブリエル、私だ。さっき執事に聞いたんだ。今夜はジュニが居ないんだろう?…少し話をしようか?」
兄上の優しい声がして、僕はバッと起き上がると、入ってと大きな声で呼び掛けていた。兄上は片手にトレーを持っていた。
「執事がこれをガブリエルに持っていこうとしてたから、引き取ってきたんだ。美味しそうなココアだぞ?」
僕は嬉しさでクフクフ笑うと、ベッドボードに枕を集めて寄り掛かった。兄上はベッドに腰掛けると、僕にココアの入ったカップを渡してくれた。ひと口飲むと、温かくて甘い優しさが身体に流れ込んで来た。
「美味しい…。兄上、持ってきてくれてありがとう。僕、ジュニが居なくて寂しくなってたから嬉しい。」
すると兄上が、少し考え込んで僕を見て言った。
「もしあれなら、ケインの所から今からでもジュニを連れてこようか?少しうるさい方が良いんじゃないか?」
僕は慌てて首を振って、夜中にかなり煩いから本当に良いんだと言ったんだ。今ケインの部屋に兄上に行かれたら、困ってしまう。ケインもジュニも出掛けて居ないんだから。
それから僕は兄上に、来季僕が行く事になっている学院の話などを聞きながら、気がつけばココアも飲み干していて、瞼も重くなっていた。横になった僕は兄上におでこに優しく口づけされると、ジュニは居なくても兄上が気遣ってくれたおかげで、温かな気持ちで目を閉じることが出来た。
おやすみなさい、兄上。おやすみ、ジュニ。
もっとも兄上は騎士団に入るくらい鍛えてるから、比較対象にならないかもしれない。騎士団参謀の父上も似たり寄ったりで、僕もあんな風に分厚い身体になるのかと思うと、ちょっと嫌かも。僕はどちらかと言うと頭を使った仕事の方が良いな。勉強も嫌いじゃないし。
ジュニとケインを見送って、執事と部屋に戻ると、部屋がいつもと違う気がした。ジュニのちょっとした独り言の様な鳴き声も聞こえないし、僕が眠るまで一緒にベッドに横になってくれている、人間のジュニも今日は居ない。
僕はベッドにモゾモゾ入りながら、妙にシーンとした部屋の暗闇をじっと見つめた。窓の方を向けば、薄くなった月が浮かんでいて、闇夜を照らしてはくれなかった。
「…ジュニ、ちゃんとお土産買ってきてね。」
独り言も妙に部屋に響いた。するとその時、扉がノックされた。僕がハッと身動きして恐る恐る扉を見つめていると、聞き慣れた声が掛かった。
「ガブリエル、私だ。さっき執事に聞いたんだ。今夜はジュニが居ないんだろう?…少し話をしようか?」
兄上の優しい声がして、僕はバッと起き上がると、入ってと大きな声で呼び掛けていた。兄上は片手にトレーを持っていた。
「執事がこれをガブリエルに持っていこうとしてたから、引き取ってきたんだ。美味しそうなココアだぞ?」
僕は嬉しさでクフクフ笑うと、ベッドボードに枕を集めて寄り掛かった。兄上はベッドに腰掛けると、僕にココアの入ったカップを渡してくれた。ひと口飲むと、温かくて甘い優しさが身体に流れ込んで来た。
「美味しい…。兄上、持ってきてくれてありがとう。僕、ジュニが居なくて寂しくなってたから嬉しい。」
すると兄上が、少し考え込んで僕を見て言った。
「もしあれなら、ケインの所から今からでもジュニを連れてこようか?少しうるさい方が良いんじゃないか?」
僕は慌てて首を振って、夜中にかなり煩いから本当に良いんだと言ったんだ。今ケインの部屋に兄上に行かれたら、困ってしまう。ケインもジュニも出掛けて居ないんだから。
それから僕は兄上に、来季僕が行く事になっている学院の話などを聞きながら、気がつけばココアも飲み干していて、瞼も重くなっていた。横になった僕は兄上におでこに優しく口づけされると、ジュニは居なくても兄上が気遣ってくれたおかげで、温かな気持ちで目を閉じることが出来た。
おやすみなさい、兄上。おやすみ、ジュニ。
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