上 下
44 / 148
夜遊びの副産物

ガブリエルsideジュニが居ない夜

しおりを挟む
ジュニがあの人目を引く人間の姿になって、夜に出掛けるのはしょうがないと僕は諦めた。ジュニ曰くは18歳らしいし、兄上を見ているとその年頃で夜出掛けるのは当たり前みたいだし。でも兄上と同い年には全然見えないな。人間のジュニに抱きしめられると案外柔らかいし、あまり男って感じがしない。

もっとも兄上は騎士団に入るくらい鍛えてるから、比較対象にならないかもしれない。騎士団参謀の父上も似たり寄ったりで、僕もあんな風に分厚い身体になるのかと思うと、ちょっと嫌かも。僕はどちらかと言うと頭を使った仕事の方が良いな。勉強も嫌いじゃないし。


ジュニとケインを見送って、執事と部屋に戻ると、部屋がいつもと違う気がした。ジュニのちょっとした独り言の様な鳴き声も聞こえないし、僕が眠るまで一緒にベッドに横になってくれている、人間のジュニも今日は居ない。

僕はベッドにモゾモゾ入りながら、妙にシーンとした部屋の暗闇をじっと見つめた。窓の方を向けば、薄くなった月が浮かんでいて、闇夜を照らしてはくれなかった。


「…ジュニ、ちゃんとお土産買ってきてね。」

独り言も妙に部屋に響いた。するとその時、扉がノックされた。僕がハッと身動きして恐る恐る扉を見つめていると、聞き慣れた声が掛かった。

「ガブリエル、私だ。さっき執事に聞いたんだ。今夜はジュニが居ないんだろう?…少し話をしようか?」

兄上の優しい声がして、僕はバッと起き上がると、入ってと大きな声で呼び掛けていた。兄上は片手にトレーを持っていた。

「執事がこれをガブリエルに持っていこうとしてたから、引き取ってきたんだ。美味しそうなココアだぞ?」


僕は嬉しさでクフクフ笑うと、ベッドボードに枕を集めて寄り掛かった。兄上はベッドに腰掛けると、僕にココアの入ったカップを渡してくれた。ひと口飲むと、温かくて甘い優しさが身体に流れ込んで来た。

「美味しい…。兄上、持ってきてくれてありがとう。僕、ジュニが居なくて寂しくなってたから嬉しい。」

すると兄上が、少し考え込んで僕を見て言った。

「もしあれなら、ケインの所から今からでもジュニを連れてこようか?少しうるさい方が良いんじゃないか?」


僕は慌てて首を振って、夜中にかなり煩いから本当に良いんだと言ったんだ。今ケインの部屋に兄上に行かれたら、困ってしまう。ケインもジュニも出掛けて居ないんだから。

それから僕は兄上に、来季僕が行く事になっている学院の話などを聞きながら、気がつけばココアも飲み干していて、瞼も重くなっていた。横になった僕は兄上におでこに優しく口づけされると、ジュニは居なくても兄上が気遣ってくれたおかげで、温かな気持ちで目を閉じることが出来た。

おやすみなさい、兄上。おやすみ、ジュニ。



しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...