カワウソの僕、異世界を無双する

夜遊びで釣れるもの

僕の素性

皆に見つめられて、僕は覚悟を決めて口を開いた。

「…僕はガブリエルお坊ちゃんの遊び相手兼子守です。…最近雇われたばかりなので、伯爵がご存じかどうか。執事が別枠で僕を採用した様なので。」

途端に執事と召使いがハッと顔を見合わせて、気まずげに僕を見つめた。何だろう、さっきからこの二人は様子が変だな。すると侯爵が納得した様に言った。


「そう言えば、マケロン伯爵家の御令息たちは歳が離れていたのだったな。アルフレッドは嫡男とは面識があるのかい？」

するとアルフレッドは僕と侯爵を交互に見つめながら言った。

「ええ、ルークは私よりは年下ですが、面識はあります。来季から王宮騎士団に所属する事が決まっているので、私の部下になるかもしれません。中々冷静な武に秀でた男ですよ。」

僕はなるほどガタイの良いのは騎士だからなのかとアルフレッドを見つめながら、ルークが外面では上手いことやっているんだなと、少し面白く聞いていた。


そんな僕に気づいたのか、アルフレッドは僕に尋ねた。

「君は一体何歳なんだい？マケロン伯爵家の次男は確かまだ相当幼かった気がしたけれど。」

僕はガブリエルを思い出して微笑みながら答えた。

「ガブリエル坊ちゃんは僕から見ても素晴らしく賢くて可愛らしい方です。時々本当に7歳かとびっくりさせられます。僕は18歳なのに、ガブリエル様がまるで僕の保護者の様に色々心配するので、今もきっと随分と心配掛けているに違いありません。」


僕が顔を曇らせてそう言うと、侯爵もアルフレッドも少し驚いた表情で僕を見つめた。アルフレッドがボソリと呟いた。

「…18歳？ルークと同い年なのかい？ちょっと信じられないな。」

僕はクスッと笑って、どうしてこうも同じ反応をされるのかと面白い気持ちになった。

「侯爵、気絶してしまった僕を介抱して下さってありがとうございました。もう直ぐ迎えも来るとお聞きしましたので、これ以上侯爵のお時間を取らせるのも申し訳なく思います。」


そう言って立ち上がると、侯爵もまた立ち上がり、微笑みながら僕に手を差し出して言った。

「ありがとう、本当に。君にどうお礼をして良いか分からないが、何か望みがあったらいつでも執事に言付けるが良い。私がその望みを出来るだけ叶えよう。それがアルフレッドの命の恩人への私からのお礼だよ。」

僕は偉い立場に居るはずなのに、ゴツゴツとした手の感触を感じて、侯爵も武人なのかなと思った。僕と侯爵が微笑みあっていると、咳払いが聞こえて、隣のアルフレッドもまた手を差し出していた。


僕が同様に握手すると、少し驚いた表情を浮かべて僕の手を見つめたアルフレッドは、僕の目をじっと見つめて言った。

「いつでも遊びに来てくれ。その、良かったらガブリエル君と一緒に。ここにはガブリエル君の様に7歳くらいの少年が好きそうな、ちょっとした冒険が楽しめる場所もあるんだ。」

僕は思わずガブリエルが喜びそうな話だと感じて、にっこり笑ってお礼を言ったのだけど…。あの、もう手を離してもらっても良いですか？