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夜遊びで釣れるもの
賓客扱い
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まさか僕がマケロン伯爵の秘密の愛人と思われているとも知らずに、僕は届けられた軽食に舌鼓を打っていた。軽食というにはあれこれと品数が豊富なワゴンいっぱいの食べ物は、どれも美味で結局全部食べ尽くしてしまった。
誰も見ていない警戒心ゼロのこんな時は、カワウソ根性が顔を覗かせてしまうんだ。僕は膨れたお腹を撫でながら、一緒に届けられた衣装を箱から出して並べた。
多分僕が助けた時の衣装を参考にしたんだろう。使用人が着るには妙に小洒落たピンストライプのシャツにベルベットのリボンタイ、上品なパンツや小物が目の前に並んだ。
とは言え、僕もいつもコソコソとルークのお下がりを盗み着ていたせいで、こうして堂々と自分のものである衣装を着るのは気分が良かった。
鏡に映るのは、シュッとした青年…、いや少年?衣装の見立てがどうも可愛い気がする。やはり実年齢を間違えられているのでは無いかな。確かにケインなど、二歳違いだというのに、全然大人っぽい。僕は軽くため息をつくと、せめて髪型だけはと、伸びて来た髪を耳に掛けた。
丁度その時部屋に近づく足音を聞いた僕は、自分から赴いて扉を開けに行った。召使いがワゴンなどを取りに来たのかと思ったからだ。しかし、目の前にいたのは先程医者と一緒にいた若い執事だった。
執事は僕が扉の前にいた事に酷くびっくりしただけじゃなくて、僕が着込んだ衣装を上から下までジロジロと見た。僕は何だか面白くなってしまって、思わず首を傾げて揶揄ってしまった。
「この格好似合わないかな?やっぱり少し可愛過ぎるでしょ?僕は18歳だから、これは必要ないよね?」
そう言って僕は首に結んでいたベルベットのリボンをスルリと抜き去ると、首元に指を差し込んで緩めた。それからそのリボンを執事の手首に結んだ。
ぼんやりとリボンが結ばれていくのを見つめていた執事は、急にハッとして少し狼狽えた様に僕を見下ろして言った。
「…実はもう直ぐジュシア様のお迎えが来ると知って、旦那様が一言お礼を仰りたいとのことで、お迎えにあがりました。どうぞ、こちらにいらしてください。」
僕はケインがもう直ぐ迎えに来てくれるのかとホッとしたせいもあって、執事に微笑んで答えた。
「あの体格の良い、息を吹き返した御仁はもう大丈夫なんですか?あまり水を飲んでなかったとは思うけど。…それに僕に丁寧な物言いは必要ないですよ。」
すると手首からシュルリとリボンを解いた執事は咳払いをすると、もう一度僕の首にリボンタイを結びながら言った。
「…確かにあなたには少し幼かった様ですが、旦那様の前に出ますので、しばしこれをお付けください。アルフレッド様は午後にはベッドから起き上がられて、助けてくださったあなたの事を心配されていました。
元々強靭な方でございますれば、尚の事あなたが水の底からアルフレッド様を引き上げる事が可能だったことが、私には想像もつきません。」
そう言って柔らかに微笑んだ。さっきの動揺が無かったみたいに振る舞うプロ根性に、僕は流石執事の質も侯爵家仕様なのだと思った。僕は迎えに来るという事と、執事に気を取られていて、僕自身の身の上が風前の灯だなんてうっかり忘れてしまっていた。
誰も見ていない警戒心ゼロのこんな時は、カワウソ根性が顔を覗かせてしまうんだ。僕は膨れたお腹を撫でながら、一緒に届けられた衣装を箱から出して並べた。
多分僕が助けた時の衣装を参考にしたんだろう。使用人が着るには妙に小洒落たピンストライプのシャツにベルベットのリボンタイ、上品なパンツや小物が目の前に並んだ。
とは言え、僕もいつもコソコソとルークのお下がりを盗み着ていたせいで、こうして堂々と自分のものである衣装を着るのは気分が良かった。
鏡に映るのは、シュッとした青年…、いや少年?衣装の見立てがどうも可愛い気がする。やはり実年齢を間違えられているのでは無いかな。確かにケインなど、二歳違いだというのに、全然大人っぽい。僕は軽くため息をつくと、せめて髪型だけはと、伸びて来た髪を耳に掛けた。
丁度その時部屋に近づく足音を聞いた僕は、自分から赴いて扉を開けに行った。召使いがワゴンなどを取りに来たのかと思ったからだ。しかし、目の前にいたのは先程医者と一緒にいた若い執事だった。
執事は僕が扉の前にいた事に酷くびっくりしただけじゃなくて、僕が着込んだ衣装を上から下までジロジロと見た。僕は何だか面白くなってしまって、思わず首を傾げて揶揄ってしまった。
「この格好似合わないかな?やっぱり少し可愛過ぎるでしょ?僕は18歳だから、これは必要ないよね?」
そう言って僕は首に結んでいたベルベットのリボンをスルリと抜き去ると、首元に指を差し込んで緩めた。それからそのリボンを執事の手首に結んだ。
ぼんやりとリボンが結ばれていくのを見つめていた執事は、急にハッとして少し狼狽えた様に僕を見下ろして言った。
「…実はもう直ぐジュシア様のお迎えが来ると知って、旦那様が一言お礼を仰りたいとのことで、お迎えにあがりました。どうぞ、こちらにいらしてください。」
僕はケインがもう直ぐ迎えに来てくれるのかとホッとしたせいもあって、執事に微笑んで答えた。
「あの体格の良い、息を吹き返した御仁はもう大丈夫なんですか?あまり水を飲んでなかったとは思うけど。…それに僕に丁寧な物言いは必要ないですよ。」
すると手首からシュルリとリボンを解いた執事は咳払いをすると、もう一度僕の首にリボンタイを結びながら言った。
「…確かにあなたには少し幼かった様ですが、旦那様の前に出ますので、しばしこれをお付けください。アルフレッド様は午後にはベッドから起き上がられて、助けてくださったあなたの事を心配されていました。
元々強靭な方でございますれば、尚の事あなたが水の底からアルフレッド様を引き上げる事が可能だったことが、私には想像もつきません。」
そう言って柔らかに微笑んだ。さっきの動揺が無かったみたいに振る舞うプロ根性に、僕は流石執事の質も侯爵家仕様なのだと思った。僕は迎えに来るという事と、執事に気を取られていて、僕自身の身の上が風前の灯だなんてうっかり忘れてしまっていた。
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