カワウソの僕、異世界を無双する

夜遊びで釣れるもの

服の調達

「今夜はまた随分とお貴族様っぽい服だな。」

そう言われて、ケインの部屋の曇った鏡を覗き込んだけれど、ハッキリとは見えなかった。確かにシャツというより、ドレープの効いたヒラついたブラウスは、ちょっとしたお洒落着という感じだった。

この優美なブラウスをルークが着ていたと思うと少し面白い。けれども、案外似合っていたかもしれない。ルークも客観的に見ればシュッとしたイケメンには違いない。ま、ガブリエルの様な可愛らしさはないけどね。


「これは衣装部屋から借りた服だからね。今日は酒場に行く前に古着屋に寄って何か見繕いたいけど、付き合ってくれる？流石にこんな気取った服ばかりじゃ目立ってしょうがないだろ？」

そうケインに言うと、僕の顔を見てため息をついた。僕はいそいそとドアから顔を出して使用人棟の出入り口へ急いだ。ケインがノシノシと歩いていて全然急がないので、僕は周囲を伺いながら尋ねた。


「誰かに見つかったら僕、言い訳できないよ。急がなくちゃ。」

するとケインは肩をすくめて笑った。

「週末でもないのに街まで出歩く、タフな召使いは居ないさ。まして使用人棟の居心地は良いからな。マケロン伯爵家は給金も良いし、当たりの雇い主だぜ。」

僕は噴水遊びのコイン投げでも、道理で随分皆気前が良かったんだと納得してしまった。お陰で服も買えるってものだ。僕はポケットに入っている軍資金を確認して、ケインが手綱を握る荷馬車に乗り込んだ。


今日はまだ夜というには早い時間だったので、僕らは荷馬車を預けるとケインに連れられて古着屋の通りに向かった。物珍し気にキョロキョロしていると、なかなか洒落た服が飾られている一軒の店が目についた。

ケインに断ると僕は店の中へと入って行った。そこには組み合わせ次第では、中々洒落た装いになりそうな服が取り揃えてあり、僕は熱心に物色して、幾つかの組み合わせを作って並べてみた。その中の二組ほどを試着してどちらが良いか迷っていると、さっきから僕の様子を見ていた店の主人が声を掛けてきた。


「あんた、服の見立てが良いな。試着している服もそうだが、ここに並べた組み合わせも、俺には思いつかなかった組み合わせだが、人気が出そうだ。なぁ、ものは相談だが、この店にある服を上手く組み合わせてくれないか。

どれも品物は悪くないんだが、着こなすのが難しいって、案外敬遠されるんだ。こうやってセンス良く組み合わせて見せれば、きっとすぐに買い手が付きそうだ。もちろんその代わり、あんたが今試着していた二組の古着をお礼に受け取ってくれ。どうだい？引き受けてくれるかい？」