上 下
27 / 148
秘密の共有

頼もしい協力者

しおりを挟む
僕はシーツにくるまって、ガブリエルの隣に寝転がると、欠伸を連発し始めたガブリエルの頭を撫でながら言った。

「ガブリエル、そろそろ眠ろう。僕は君の元から逃げ出すつもりは無いし、さっき言った様に、時々は人間として楽しむかもしれないけど、カワウソ生活も好きなんだ。僕はガブリエルが大好きだから。だから安心して眠ってね?」

するとトロンと眠たげに瞼を閉じたガブリエルが僕の手を握って言った。

「…居なくなっちゃダメだよ、ジュニ。おやすみ…。」


僕はしばらくガブリエルがぐっすり寝付くまで側で見守っていたけれど、一緒に朝まで寝落ちしそうになったので、慌てて起き上がった。そしてベッドの下からシャツとズボンを引っ張り出すと、綺麗に畳んでガブリエルの机の大きな引き出しの中へ仕舞い込んだ。

ここはガブリエルの勉強道具や、私物が入っているので、召使いも滅多に開けたりしない。とりあえず証拠隠滅は出来たはずだ。僕は部屋の扉を見つめると、そろそろと近づいて耳をそば立てた。物音ひとつしない。とりあえず、ルークも寝てしまったようだ。


僕はホッとすると、部屋の鍵を開けて、スルリとカワウソに戻るとマイベッドへと潜り込んだ。人間のベッドも良いけど、これはこれで居心地が良い。僕は状況が許さなかったとは言え、ガブリエルに正体がバレてしまったのが今後どう言うことになるのか全然予想がつかなかった。

小さな子供がいつまでも嘘をついて居られるだろうか。カワウソのジュニはガブリエルの側に居られるけれど、人間のジュシアはそうではないと言うことはハッキリしていたからだ。


やっぱり僕は、人間としてのもうひとつの生活を築く必要があるんじゃ無いかな?しかしどうしたら良いんだろう。流石に僕も夜中に色々あり過ぎたせいで疲れから欠伸が止まらなくなった。

考えるのも限界になった僕は、最終的にはしらばっくれるという奥の手でどうにでもなると開き直って、睡魔に引き寄せられて行った。


いつもの様に執事がガブリエルを起こしに来た気配で、僕はぼんやりと顔を上げた。流石にガブリエルは夜中に僕と話をしていたせいでなかなか目が覚めない様だった。

すると、執事がキョロキョロと部屋を見回して、カーテンの影や、クローゼットの中、死角になりそうな場所をチェックし始めた。そしてついにはベッドの下を覗き込んで何か探している様だった。


僕が思わず呆然とその様子を見つめていると、執事が僕に気がついて優しく何度か撫でながら言った。

「ジュニ、昨日の夜、この部屋に誰か来なかったかい?どうも若い男が城に入り込んだみたいなんだ。でも見知らぬ人間がここに入ったら、きっとジュニがその鳴き声で教えてくれるはずだな?…ここには来なかったんだろう。さ、ガブリエル坊ちゃんを起こしてくれるかい?」

僕は顔を引き攣りながら、執事を見上げたに違いない。そいつは僕ですけどって、言える状況じゃないしね?ああ、色々仕事増やしてごめんなさい!
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

処理中です...