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ドキドキの種類

遭遇

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ホールを談話室の方からやって来る、機嫌の良さげな足音は一人分だった。窓から差し込む月あかりに照らされたのは、赤い短髪。げ、マイケルか。僕は嫌な奴に遭遇してしまったと眉を顰めた。

あいつ、城に泊まっていたのか。ゲストルームは確か一階のこちらを回った側だから、きっと談話室で酒でも飲んでいたんだろう。辺りに漂う酒の匂いが、どれだけ飲んだのか示している様だった。僕は息を潜めて、マイケルが通り過ぎるのを待った。僕は花台の裏側を、ソロリとマイケルの動きに合わせて動いた。


マイケルがふらつきながら、一階のゲストルームへの廊下へと向かう後ろ姿を見送って、ホッとして肩の力を抜いたその時、僕は何かに身体をぶつけた。

恐る恐る振り返ると、至近距離にルークが僕を見下ろしていた。しかもいつの間にか怪我をした方の腕が掴まれていて、少しの痛みを感じながら、僕は逃げる事は無理そうだと瞬時に判断せざるを得なかった。

ルークは何を考えているのか判らない表情で僕をじっと見つめていた。その視線がゆっくりと僕の顔から身体の方へとなぞる様に降りていく。僕はパニックになって、この場をどうやって切り抜けるかを必死で考えていた。


「…どうしてここに君が?…夢?」

ポツリと呟いたルークは、明らかに酷く酔っ払っていて、僕はそこにチャンスを見出すしか無かった。僕はルークが掴んだ腕が少し緩んだのを感じると、ルークの頬に指先を伸ばした。

呆然としているルークに微笑んで、その指先を首筋に回してグイと引き寄せた。もうね、追い込まれたカワウソ人間としては、なりふりを構っていられない。動揺させて隙を突くしかないんだ。


僕はルークに唇を合わせた。これで何とか誤魔化されてくれ。そう期待する僕の意に反して、ルークは僕をグイっと馬鹿みたいな力で引き寄せると、ガッツリとキスしてきた。

僕は目を白黒させながら、押し付けられるルークの唇に息も出来なかった。少し弱められたその隙に息をすると、ヌルリとルークの舌が僕の口の中に入ってきた。わ、どういう事!?ちょ、ちょっと!


僕は何とかルークを押しやろうと頑張ったけれど、酔っ払っているせいなのか、ルークは容赦なく僕の口の中を舌でまさぐった。ルークの舌は僕を翻弄して、心臓が馬鹿みたいに踊らされて、すっかり動揺してしまったのは僕の方だった。ひとしきり貪られた僕は、ようやく離れたルークの顔をぐったりと見上げた。

ぼんやりした表情のルークは、僕をじっと見下ろして、うっとりと微笑んで呟いた。

「…なんていい夢なんだ。」






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