21 / 148
ドキドキの種類
忍び足で確認
しおりを挟む
結局、マイケルはあの時に酒場にいた四人のうちの一人だという事が判明した。何処かで聞いた様な声だとは感じていたけれど、噴水遊びの後ガブリエルがお勉強に行ってしまって、僕が寝そべったビショップの隣の籠の中でうとうとしている時に、証言が出たんだ。
「なぁ、あれからあの可愛い青年に会えたか?」
そうマイケルが言い始めて、僕はピクリと耳をそば立てた。執事の入れたコーヒーを飲みながら、ルークは答えた。
「私もあれから2回しか夜に出掛けてないけどね、全然欠片も会えてない。酒場では幻の青年とも言われ始めてる。着ていたものも上質だったし、何処かお忍びの貴族令息だったんじゃないかな。年齢も誤魔化して。流石に私も3~4歳年下は全部把握してるわけじゃないからね。」
そう、ルークが言うと、マイケルが考え込んで言った。
「…貴族令息なら何処かしらで会った事があるだろう?それにあれほど人目を惹けば、噂になってるはずだ。そうなると、金持ちの商人の息子か、旅行で来ていた隣国の者と言うこともあるかもしれない。だが、言葉に困ってる風は無かったな…。はぁ、全然わかんね。」
僕は可笑しくなってしまって、口元に手を当てて笑いを堪えた。するとマイケルが僕を覗き込んで言った。
「おい、コイツ本当に変な動物だな。何か仕草が人間みたいで。今、口に手をあてて笑ってなかったか?」
するとルークが僕をじっと見つめると、ボソリと呟いた。
「変な感じといえば、どうもジュニを見ると何か思い出す気がして。最初見た時から気になってるんだが、思い出せないんだ。それより、また近いうちに夜出掛けよう。あいつらにも連絡しておくよ。」
僕は二人の関心が逸れたことにほっとして、寝たふりを決め込みながら頭の中はフル回転していた。夜の街で僕が噂になっていたのにも驚きだけど、やはり今夜、隠してある服の確認が必要そうだ。
確認だけしてサッと戻ってくれば、近いうちに抜け出して遊びに行く時に慌てなくて済む。僕は脳内シュミレーションをして夜になるのを待った。
窓から差し込む月の光が傾く頃、僕はむくりと起き上がって、ガブリエルの部屋の気配を窺った。規則正しい安らかな寝息が聞こえて、僕はスルリと人間型になると、やっぱり全裸だったけれど、ガブリエルの寝顔を覗き込んだ。
指先で優しく金色の髪を解いてから、僕は忍び足で部屋の扉に近づいた。耳をすましても物音ひとつ聞こえない。僕はドアノブをそっと回すとゆっくりと引いた。静かな廊下はやっぱり人の気配はしなかった。
前回の様に衣装部屋に忍び込むと、手近にあったブラウスとズボンを手早く身につけた。着てから少しヒラヒラしてる気がしたけれど、今はそんな事を気にしている時間は無かった。
僕はあえて裸足でこっそりと階段を降り、テラスへと急いで外に出ると、側の植え込みを確認した。雨が当たらない場所のせいか、脱いだ時のままになっていた。
僕はシャツを広げると、着てきたブラウスと交換した。デブでも着れるトップスと交換だ。以前着て行ったシャツはほこりっぽくて、バタバタと手で払うと、袖を通した。ん?やばい、このシャツ案外ピタッとしてるみたいだ。ボタンが止まらない。
僕はしょうがなく袖だけ通すと、テラスから室内へと戻って階段に向かって歩き出した。その時、ホールから誰かがやって来たみたいだった。僕は思わず周囲を見渡して階段の下の大きな花瓶の影に息を潜めて隠れた。心臓がドキドキと煩く鳴り響く音が聞こえる様で、僕は思わず息を止めた。
「なぁ、あれからあの可愛い青年に会えたか?」
そうマイケルが言い始めて、僕はピクリと耳をそば立てた。執事の入れたコーヒーを飲みながら、ルークは答えた。
「私もあれから2回しか夜に出掛けてないけどね、全然欠片も会えてない。酒場では幻の青年とも言われ始めてる。着ていたものも上質だったし、何処かお忍びの貴族令息だったんじゃないかな。年齢も誤魔化して。流石に私も3~4歳年下は全部把握してるわけじゃないからね。」
そう、ルークが言うと、マイケルが考え込んで言った。
「…貴族令息なら何処かしらで会った事があるだろう?それにあれほど人目を惹けば、噂になってるはずだ。そうなると、金持ちの商人の息子か、旅行で来ていた隣国の者と言うこともあるかもしれない。だが、言葉に困ってる風は無かったな…。はぁ、全然わかんね。」
僕は可笑しくなってしまって、口元に手を当てて笑いを堪えた。するとマイケルが僕を覗き込んで言った。
「おい、コイツ本当に変な動物だな。何か仕草が人間みたいで。今、口に手をあてて笑ってなかったか?」
するとルークが僕をじっと見つめると、ボソリと呟いた。
「変な感じといえば、どうもジュニを見ると何か思い出す気がして。最初見た時から気になってるんだが、思い出せないんだ。それより、また近いうちに夜出掛けよう。あいつらにも連絡しておくよ。」
僕は二人の関心が逸れたことにほっとして、寝たふりを決め込みながら頭の中はフル回転していた。夜の街で僕が噂になっていたのにも驚きだけど、やはり今夜、隠してある服の確認が必要そうだ。
確認だけしてサッと戻ってくれば、近いうちに抜け出して遊びに行く時に慌てなくて済む。僕は脳内シュミレーションをして夜になるのを待った。
窓から差し込む月の光が傾く頃、僕はむくりと起き上がって、ガブリエルの部屋の気配を窺った。規則正しい安らかな寝息が聞こえて、僕はスルリと人間型になると、やっぱり全裸だったけれど、ガブリエルの寝顔を覗き込んだ。
指先で優しく金色の髪を解いてから、僕は忍び足で部屋の扉に近づいた。耳をすましても物音ひとつ聞こえない。僕はドアノブをそっと回すとゆっくりと引いた。静かな廊下はやっぱり人の気配はしなかった。
前回の様に衣装部屋に忍び込むと、手近にあったブラウスとズボンを手早く身につけた。着てから少しヒラヒラしてる気がしたけれど、今はそんな事を気にしている時間は無かった。
僕はあえて裸足でこっそりと階段を降り、テラスへと急いで外に出ると、側の植え込みを確認した。雨が当たらない場所のせいか、脱いだ時のままになっていた。
僕はシャツを広げると、着てきたブラウスと交換した。デブでも着れるトップスと交換だ。以前着て行ったシャツはほこりっぽくて、バタバタと手で払うと、袖を通した。ん?やばい、このシャツ案外ピタッとしてるみたいだ。ボタンが止まらない。
僕はしょうがなく袖だけ通すと、テラスから室内へと戻って階段に向かって歩き出した。その時、ホールから誰かがやって来たみたいだった。僕は思わず周囲を見渡して階段の下の大きな花瓶の影に息を潜めて隠れた。心臓がドキドキと煩く鳴り響く音が聞こえる様で、僕は思わず息を止めた。
26
お気に入りに追加
1,250
あなたにおすすめの小説
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる