9 / 148
もうひとつの顔
夜遊び
しおりを挟む
「なんだ。お前もこれから街に行くのか?俺も今から行くところなんだ。乗っていくか?」
マジビックリした。僕は見かけよりも随分と気の良い、さっき僕の前に立ちはだかった雑用係の大男のケインと一緒に、荷馬車に乗って夜の街に向かっていた。歩いたらそこそこ掛かりそうな一本道は、荷馬車だったらあっという間だった。
直ぐに賑やかな繁華街の喧騒が感じられて、僕は心が浮き立つのを感じた。ふとケインが僕の方をチラチラ見ているのに気がついた。地味な服を選んだけれど、ルークの服じゃ、やはりお上品になってしまうんだろうか。そういえば鏡でチェックもしていない。
でもケインは僕の顔を見ていた。ケインは躊躇いつつ僕に尋ねてきた。
「なぁ、お前何歳だ?もしかして未成年か?」
僕はキョトンとしてから、笑って答えた。
「僕は18歳だよ。何で?未成年に見えた?最近伯爵家に雇われた、ガブリエル坊ちゃんの子守り兼遊び相手だって言ったろ?」
うむ。嘘は言ってない。実際はカワウソ様だが。
「いや、随分若く見えるからさ。そっか、俺とそう変わらないな。俺は20歳だ。俺もひと月前に雇われたばかりで、屋敷の人の事はよく知らないんだ。でも、流石に坊ちゃんの側に居るだけあって、身綺麗なものだな。」
僕は自分の服を見下ろして、ケインに尋ねた。
「僕、この街は初めてなんだけど、この格好じゃ変かな?足元見られるかな?」
するとケインはニヤリと笑って言った。
「お前が何処に行くかによるだろ?俺は娼館へ行く予定だけど、ジュシア、お前は?」
僕はケインを呆れ顔で見つめて言った。
「週末でもないのに娼館へ行くケインも凄いけど、僕は遠慮しとくよ。ちょっと夜の街をぶらつきたいだけだから。」
するとケインはもう一度僕をじっと見つめて言った。
「お前を一人歩きさせるのはちょっと心配だけどな。俺は女が好きだけど、お前の様な可愛い顔の男が好きな奴は多いんだ。いいか?ひと気の無い路地には絶対行くなよ?必ず賑やかな店だ。分かったか?」
そう心配そうに言うケインに礼を言うと、僕は荷馬車を降りて、賑わっている夜の街に繰り出した。ああ、マジで楽しみ。全然状況が分からないけど、きっと何とかなるだろう。
酒の一杯くらい引っ掛けて帰れば上等って事で、僕は勇んで街の通りを歩き始めた。僕はカワウソ人間型では初めての人間社会に興奮していたから、見るもの全てが珍しく感じて、僕自身を沢山の視線が追いかけてきているなんて、全然気が付かなかった。
丁度教会の鐘が鳴って、時刻は夜の8時を指していた。これから大人の時間だ。僕はニンマリすると、賑やかな人達の集まる大きな酒場に入って行った。
マジビックリした。僕は見かけよりも随分と気の良い、さっき僕の前に立ちはだかった雑用係の大男のケインと一緒に、荷馬車に乗って夜の街に向かっていた。歩いたらそこそこ掛かりそうな一本道は、荷馬車だったらあっという間だった。
直ぐに賑やかな繁華街の喧騒が感じられて、僕は心が浮き立つのを感じた。ふとケインが僕の方をチラチラ見ているのに気がついた。地味な服を選んだけれど、ルークの服じゃ、やはりお上品になってしまうんだろうか。そういえば鏡でチェックもしていない。
でもケインは僕の顔を見ていた。ケインは躊躇いつつ僕に尋ねてきた。
「なぁ、お前何歳だ?もしかして未成年か?」
僕はキョトンとしてから、笑って答えた。
「僕は18歳だよ。何で?未成年に見えた?最近伯爵家に雇われた、ガブリエル坊ちゃんの子守り兼遊び相手だって言ったろ?」
うむ。嘘は言ってない。実際はカワウソ様だが。
「いや、随分若く見えるからさ。そっか、俺とそう変わらないな。俺は20歳だ。俺もひと月前に雇われたばかりで、屋敷の人の事はよく知らないんだ。でも、流石に坊ちゃんの側に居るだけあって、身綺麗なものだな。」
僕は自分の服を見下ろして、ケインに尋ねた。
「僕、この街は初めてなんだけど、この格好じゃ変かな?足元見られるかな?」
するとケインはニヤリと笑って言った。
「お前が何処に行くかによるだろ?俺は娼館へ行く予定だけど、ジュシア、お前は?」
僕はケインを呆れ顔で見つめて言った。
「週末でもないのに娼館へ行くケインも凄いけど、僕は遠慮しとくよ。ちょっと夜の街をぶらつきたいだけだから。」
するとケインはもう一度僕をじっと見つめて言った。
「お前を一人歩きさせるのはちょっと心配だけどな。俺は女が好きだけど、お前の様な可愛い顔の男が好きな奴は多いんだ。いいか?ひと気の無い路地には絶対行くなよ?必ず賑やかな店だ。分かったか?」
そう心配そうに言うケインに礼を言うと、僕は荷馬車を降りて、賑わっている夜の街に繰り出した。ああ、マジで楽しみ。全然状況が分からないけど、きっと何とかなるだろう。
酒の一杯くらい引っ掛けて帰れば上等って事で、僕は勇んで街の通りを歩き始めた。僕はカワウソ人間型では初めての人間社会に興奮していたから、見るもの全てが珍しく感じて、僕自身を沢山の視線が追いかけてきているなんて、全然気が付かなかった。
丁度教会の鐘が鳴って、時刻は夜の8時を指していた。これから大人の時間だ。僕はニンマリすると、賑やかな人達の集まる大きな酒場に入って行った。
22
お気に入りに追加
1,249
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる