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ナオヤにののしられて
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私を怒鳴っている人間を初めて見た。
湯浴みの後、呑気に鼻歌交じりに出てきたナオヤが憎らしくて、私はナオヤを揶揄った。髪を拭く云々は本当だが、私とナオヤは最後までしていないのだから閨を共にしたわけではない。
呑気なナオヤを動揺させたかったのは、私が動揺してるせいだろうか。
昨夜は結局湯浴みしながら精力を削いだものの、ナオヤの痴態が頭を離れずまんじりとせずに夜は明けた。
私は夜番の使用人に自室のシーツを交換をさせると自分の部屋に戻った。ナオヤの側に居なければマシかと思ったが、そうでもなかった。これも漂流者の力なのだろうか。
目の前のナオヤは拳を握って、何なら吸い込まれそうな黒い目に涙さえ浮かべて私を罵っている。
この屋敷にナオヤが来てから、こんなにも真っ直ぐ見つめられたのはもしかして初めてではないだろうか。まぁ、罵られてるが。
私は目を合わせたまま、ゆっくりナオヤに近づいて腕の中にそっと抱き留めた。
「揶揄って悪かった。ナオヤが呑気に振る舞っているので、私だけ動揺してるのかと悔しく思ったのだ。」
身体を固くしたまま、ナオヤは私の喉元で喋った。
「…エラードさまも動揺したんですか?」
「…そうだな。私にとってもあれは事故の様なものだとは言え、忘れがたいものだ。それにナオヤは誤解している。私はお前を嫌ったりなんかしていない。むしろ無視されてるのは私の方だろう?」
ナオヤはハッと身体を離して私を潤んだ瞳で見つめると言った。
「僕は、エラードさまを無視なんてしてません。ただ、最初からエラードさまは僕と距離を取りたがっていた気がして…。」
「そうかもしれない。私は漂流者の守護者になりたくてなったわけではなかったからな。」
ナオヤは少し寂しそうに微笑んだ。
「僕もエラード様を選んだのは、素晴らしく立派な人物だと手の占いに出ていたのと、僕に関心が無さそうだったからですし。」
「…ナオヤは私に関心を寄せられたくないのか?」
私は何だか胸の奥が燻るような面白くない気持ちを感じて尋ねると、ナオヤは少し顔を赤くして目を彷徨わせた。
「今はそうでもないです…。」
しかし私の顔を見つめると、にっこり笑って言った。
「僕、貴方を守護者に選んで良かったと思います。僕、頑張ってこの世界に馴染んで、早くこのお屋敷を出られるように、自立出来る様に頑張りますから。」
湯浴みの後、呑気に鼻歌交じりに出てきたナオヤが憎らしくて、私はナオヤを揶揄った。髪を拭く云々は本当だが、私とナオヤは最後までしていないのだから閨を共にしたわけではない。
呑気なナオヤを動揺させたかったのは、私が動揺してるせいだろうか。
昨夜は結局湯浴みしながら精力を削いだものの、ナオヤの痴態が頭を離れずまんじりとせずに夜は明けた。
私は夜番の使用人に自室のシーツを交換をさせると自分の部屋に戻った。ナオヤの側に居なければマシかと思ったが、そうでもなかった。これも漂流者の力なのだろうか。
目の前のナオヤは拳を握って、何なら吸い込まれそうな黒い目に涙さえ浮かべて私を罵っている。
この屋敷にナオヤが来てから、こんなにも真っ直ぐ見つめられたのはもしかして初めてではないだろうか。まぁ、罵られてるが。
私は目を合わせたまま、ゆっくりナオヤに近づいて腕の中にそっと抱き留めた。
「揶揄って悪かった。ナオヤが呑気に振る舞っているので、私だけ動揺してるのかと悔しく思ったのだ。」
身体を固くしたまま、ナオヤは私の喉元で喋った。
「…エラードさまも動揺したんですか?」
「…そうだな。私にとってもあれは事故の様なものだとは言え、忘れがたいものだ。それにナオヤは誤解している。私はお前を嫌ったりなんかしていない。むしろ無視されてるのは私の方だろう?」
ナオヤはハッと身体を離して私を潤んだ瞳で見つめると言った。
「僕は、エラードさまを無視なんてしてません。ただ、最初からエラードさまは僕と距離を取りたがっていた気がして…。」
「そうかもしれない。私は漂流者の守護者になりたくてなったわけではなかったからな。」
ナオヤは少し寂しそうに微笑んだ。
「僕もエラード様を選んだのは、素晴らしく立派な人物だと手の占いに出ていたのと、僕に関心が無さそうだったからですし。」
「…ナオヤは私に関心を寄せられたくないのか?」
私は何だか胸の奥が燻るような面白くない気持ちを感じて尋ねると、ナオヤは少し顔を赤くして目を彷徨わせた。
「今はそうでもないです…。」
しかし私の顔を見つめると、にっこり笑って言った。
「僕、貴方を守護者に選んで良かったと思います。僕、頑張ってこの世界に馴染んで、早くこのお屋敷を出られるように、自立出来る様に頑張りますから。」
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