上 下
23 / 69
遅れてきた初恋

目まぐるしい変化

しおりを挟む
俺たちは高三になって、俺の目指したように生徒会執行部になった。勿論俺が会長だ。他の会長候補の弱みを握って軽く脅したとは言わないが、それに近いことはしたかもしれない。うん、記憶がない。


副会長は蓮だ。実力はあるのに覇気のないやつだった蓮は、去年から急に色々と目覚ましい進化を遂げた。成績も俺を抜くこともあるくらいだし、妙に周囲にも目配りする様になった。

大人になったのか?って俺が揶揄うと、あいつは俺をじっと見て、もう出遅れるのは懲り懲りなんだと呟いた。俺には何のことだか分からないけど、まぁあいつも色々あったんだろう。


壱太は相変わらずの遊び人だが、最近は少々相手を選んでるみたいだ。壱太には口煩いひとつ上の幼馴染がいて、その女が時々壱太に説教しにくる。

普段の壱太なら強気でいなしてしまうのだが、幼馴染に弱みでも握られているのか言い合ってばかりだ。案外仲良いんじゃないのか?


篤哉は相変わらずの溺愛ぶりで、理玖、理玖とうるさい。理玖はまだヒートも来てないのに、篤哉にいいように貪られてると思うと癪に触るんだ。もっとも篤哉は、兄貴の作った約束10か条を真面目に守ってるみたいだけどな。

俺は案外理玖の方が、弾けて篤哉を困らせるんじゃ無いかって思ってる。やっぱり、理玖もあんな風で三好家の人間だから。マイペースで、我が強いのは俺たちと一緒なんだ。


俺はスマホを眺めながら、ぼうっとしてたみたいだ。後ろから髪を触られて見上げると蓮がいた。

「会長、どうした?ぼぅっとして。生徒会の疲れが溜まってるのか?いつもの様にマッサージしてやろうか。」

俺は首筋を蓮に見せながら、大きな手で首や頭、肩周りを揉みほぐす蓮に身を委ねた。生徒会室で時間を過ごす事が増えて、俺たちは前よりも一緒にいる事が増えた。


葵も卒業して付属の大学へは進学したものの、高校と大学ではカリキュラムが違う以上、中々時間が合わなくて一週間会わないこともざらだった。

俺は前回会った時の葵の顔を思い出していた。葵は何となくいつもと違った雰囲気で、俺たちは些細なことで口喧嘩したんだ。いつもなら折れてくれる葵が、その時ばかりは我を張っていた。


俺は謝ることも出来ずに、先に部屋を出て来てしまったけれど、それ以来連絡がない。俺は深いため息をつくと、言うともなしに言った。

「やっぱり、環境が変わると人の気持ちも変わるのかな…。」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

噛痕に思う

阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。 ✿オメガバースもの掌編二本作。 (『ride』は2021年3月28日に追加します)

運命なんて知らない[完結]

なかた
BL
Ω同士の双子のお話です。 双子という関係に悩みながら、それでも好きでいることを選んだ2人がどうなるか見届けて頂けると幸いです。 ずっと2人だった。 起きるところから寝るところまで、小学校から大学まで何をするのにも2人だった。好きなものや趣味は流石に同じではなかったけど、ずっと一緒にこれからも過ごしていくんだと当たり前のように思っていた。そう思い続けるほどに君の隣は心地よかったんだ。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

天上の果実

曙なつき
BL
 大きな果実の実が頭に当たったことにより、記憶を失った婚約者のルシス。  目を覚ました彼に、私はこう言った。 「愛しい人。あなたと私は愛し合っていました。来年には式を挙げる予定なのですよ」  それは少しの真実と多くの嘘を織り交ぜた言葉だった。  ルシスは私を嫌い、厭うていた。  記憶を無くした少年と、彼を囲いこむ王子の物語です。  ※なお、ルシスの兄と弟の物語も併せて掲載します。完結まで予約済みです。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

処理中です...