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貴族学院
領地にて
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ぐっすり眠った僕はスッキリした良い気持ちで目が覚めた。今日は領地に到着する日だ。昨夜は恥ずかしながら眠ってしまった僕をパロス様が抱き上げて運んで下さったらしい。朝からセブの説教だった…。はぁ。
ワコレール家の皆さんにご挨拶してお暇する際には、パロス様に昨夜のお詫びとお礼をしたのだけど。パロス様は目元を赤くしてしどろもどろになってしまい、シャルロット様に何か言い募られてた。
僕、関係ないよね?
久しぶりの領地ではお兄様は居ないけれど、皆でのんびり葡萄狩りをしたり、りんご狩りをしたり、うん、食べてばかりだった。僕はもっと沢山食べてマッチョな大男にならないといけないから、張り切って食べた。
セブは僕を憐れな目で見ながら相変わらずぶつぶつ独り言。『もっと肉付き良くなってしまったらますます狙われませんかねぇ。』
んっ?何か言ったの?
僕は領地でリンゴチップスを作ったり、ついでにジャガイモ、サツマイモでもチップスを提案して皆に好評を博した。この後王都でお酒のつまみに、おやつにとトランプチップスとして大流行するなんて思いもしなかったけどね。
王都に帰る前日、僕はセブに無理を言ってラグーンに来ていた。僕はここが大好きなんだ。人魚伝説で大変な目にも合ってしまったけれど、波の音は僕の心を癒してくれる。
僕は岸から波間に揺れる魚影を見ながら、無性にお兄様にお会いしたくなってしまった。領地に来てから届いた手紙のせいかもしれない。
手紙を開くとお兄様の爽やかな柑橘系の香りがして、僕は身体が震えるような、胸が締め付けられるような焦がれる想いに気づくと涙がこぼれ落ちていた。お兄様も僕を愛しく思ってくれているのだろうか。
それとも彼の地で他の方と、心じゃなくても肌を通わせているのだろうか。
僕は学院生活をしてるうちに、若さゆえの衝動というものがあるという事を知った。友人らから聞いた話であったり、噂話であったり、僕自身の現実であったり。
僕はただでさえ大好きなユアと同室で二人きりだから、ちょっとしたキッカケで口づけたり、抱きしめたりは日常のひとコマになってしまっている。
たまにユアが耐えきれない様に僕を翻弄することもある。そして僕もやすやすとその誘惑に乗ってしまう。
僕は夏の終わりに初めての夢精を迎えて、ユアの気持ちが痛いほどわかるようになってしまった。だから僕たちはお互いの欲を吐き出すまで口や手で慰め合う。
多分それ以上の先が有るような気がするのだけど、ユアも僕も見ないふりをしているんだ。僕はまだ進んではいけない気がして。ユアはそんな僕の気持ちに寄り添って。
でもお兄様は大人で、閨の勉強も終わっている。だからその先を彼の地で僕以外の人たちと行っているかもしれない。そしてその考えをどこかで当然の事として諦めて受け入れている。
でもやるせない気持ちにもなっているんだ。自分の事を棚に上げて。
そんな複雑な感情を抱えながら、僕は時間の許す限りラグーンの煌めきを黙って眺めていた。
ワコレール家の皆さんにご挨拶してお暇する際には、パロス様に昨夜のお詫びとお礼をしたのだけど。パロス様は目元を赤くしてしどろもどろになってしまい、シャルロット様に何か言い募られてた。
僕、関係ないよね?
久しぶりの領地ではお兄様は居ないけれど、皆でのんびり葡萄狩りをしたり、りんご狩りをしたり、うん、食べてばかりだった。僕はもっと沢山食べてマッチョな大男にならないといけないから、張り切って食べた。
セブは僕を憐れな目で見ながら相変わらずぶつぶつ独り言。『もっと肉付き良くなってしまったらますます狙われませんかねぇ。』
んっ?何か言ったの?
僕は領地でリンゴチップスを作ったり、ついでにジャガイモ、サツマイモでもチップスを提案して皆に好評を博した。この後王都でお酒のつまみに、おやつにとトランプチップスとして大流行するなんて思いもしなかったけどね。
王都に帰る前日、僕はセブに無理を言ってラグーンに来ていた。僕はここが大好きなんだ。人魚伝説で大変な目にも合ってしまったけれど、波の音は僕の心を癒してくれる。
僕は岸から波間に揺れる魚影を見ながら、無性にお兄様にお会いしたくなってしまった。領地に来てから届いた手紙のせいかもしれない。
手紙を開くとお兄様の爽やかな柑橘系の香りがして、僕は身体が震えるような、胸が締め付けられるような焦がれる想いに気づくと涙がこぼれ落ちていた。お兄様も僕を愛しく思ってくれているのだろうか。
それとも彼の地で他の方と、心じゃなくても肌を通わせているのだろうか。
僕は学院生活をしてるうちに、若さゆえの衝動というものがあるという事を知った。友人らから聞いた話であったり、噂話であったり、僕自身の現実であったり。
僕はただでさえ大好きなユアと同室で二人きりだから、ちょっとしたキッカケで口づけたり、抱きしめたりは日常のひとコマになってしまっている。
たまにユアが耐えきれない様に僕を翻弄することもある。そして僕もやすやすとその誘惑に乗ってしまう。
僕は夏の終わりに初めての夢精を迎えて、ユアの気持ちが痛いほどわかるようになってしまった。だから僕たちはお互いの欲を吐き出すまで口や手で慰め合う。
多分それ以上の先が有るような気がするのだけど、ユアも僕も見ないふりをしているんだ。僕はまだ進んではいけない気がして。ユアはそんな僕の気持ちに寄り添って。
でもお兄様は大人で、閨の勉強も終わっている。だからその先を彼の地で僕以外の人たちと行っているかもしれない。そしてその考えをどこかで当然の事として諦めて受け入れている。
でもやるせない気持ちにもなっているんだ。自分の事を棚に上げて。
そんな複雑な感情を抱えながら、僕は時間の許す限りラグーンの煌めきを黙って眺めていた。
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