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覚悟がないセフレの関係
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単なる性欲の解消の相手に、タカはなぜ僕を選んだんだろう。それは最初から疑問だった。突然僕に降りかかったこの難問は僕がいくら考えても答えなど出なかった。
タカはこの手の事に慣れている様なのに、男相手は経験が浅い気がした。だからタカに、どうして男を、僕をセフレに選んだのか思わず尋ねてしまったんだ。
すると僕からズルリと出てゴムの処理をした後、タカは横たわった僕を見下ろして短い髪を少し掻きむしった。
「…言わなかったか?女は面倒なんだ。しょっちゅう連絡をくれって煩いし、妊娠させない様に気をつけなくちゃいけないだろ?寮にいると、そう外出するのもかったるい。
その点、男なら寮内で気にせず会えるし。誰でも良いわけじゃないけどな。…奏は俺の好みだったって事だ。何だ不満なのか?それに奏だって、いきなり俺とそう言う事になっても抵抗無かっただろう?…俺、奏に嫌だって言われてないよな?奏は男が好きなんだろ…?」
僕はそう言われて、聞かなければ良かったと正直思ってしまった。セフレはセフレだ。都合の良い相手で、取り替えのきく相手。僕は一体何を期待したんだろう。僕は黙って身体を起こして立ち上がると、シャワールームに向かって歩き始めた。
「…もう部屋に戻ったら。」
これ以上タカの顔は見たくなかった。まるで自分が便利なオナホになった気持ちだった。僕自身が男が好きだとか考えた事もないのに、タカが相手だから出来ただけで、他の男とこんな事が出来るとは思えなかった。
背中に刺さる視線を感じながら、シャワールームに篭って温かなお湯を頭から浴びながら、僕は全て間違ってしまったのかもしれないと思った。タカの事を好きな気持ちが、タカに穢されていく気がした。
憧れと、純粋な好きと言う恋心をタカに利用されて、踏み付けにされている。肌を合わせている時は幸せだと思っていたのは、自分への騙しだったのかな。
でもこの関係を僕は手放せるのだろうか。僕の気持ちはタカにあって、身体の関係だけだとしても、タカを誰よりも身近に感じたかったその欲が今の関係になったんだ。
僕はため息をついてシャワーの栓を捻り止めた。ポタポタと水滴が落ちるのを眺めながら、僕は外の音に耳を澄ました。もうタカは帰っただろうか。何となく顔を合わせるのは気不味い。
ガチャリとサッシのドアを開けると、タカが横に立っていて黙ったまま僕をタオルで拭き始めた。
「…すまん。言い過ぎた。無神経な事言った‥よな?」
僕は黙ってタカに雫を拭き取られながら呟いた。
「…僕は今までこんな経験ないんだ。だから自分の性癖も分からない。他の誰かと同じ様にしてみたらハッキリするのかな…。安田君に頼んでみようか。抱いてくれって。」
するとタカはピタリと手を止めると、僕の顎を掴んで強張った顔で僕を睨みつけた。
「あいつは男は抱かない。それに執行部内で奏を誰かと共有する気はない。…試すなら俺の知らない男にするんだな。」
そう冷たく言い放つと、踵を返して部屋を出て行ってしまった。僕はノロノロと床に落ちたタオルを拾うと、結局僕がセフレに成りきれないのがこの状況を生んだのだと思った。
さっきまで気持ち良くて、それこそ嬉しかったはずなのに、もう僕とタカの関係は壊滅的になってしまった。僕が要らぬ事を知りたがったせいなのか、タカは言い過ぎたって謝ってくれたのに。
「もう無理だよ…。」
僕にはやっぱりセフレなんて無理なんだ。いくら好きな相手だからって、タカに良いように踏みつけにされたくは無かったし、タカにもそんな男になって欲しくなかった。やるなら僕の知らないところですれば良い。
僕はきっと欲張りになってしまったんだ。タカに優しく愛撫されて、もっと愛されたくなってしまった。このままセフレを続けるなら、僕もタカを利用するくらいじゃないとダメだ。…僕にそんな事出来る?
僕は鏡に映る自分の顔を見つめて、さっき掴まれた顎に赤く指の跡がついているのに気がついた。
「…タカを僕のセフレにすればいいのかな。」
鏡の中の僕の顔はそんな冗談に笑えてなくて、耳に届く声はひび割れていた。
タカはこの手の事に慣れている様なのに、男相手は経験が浅い気がした。だからタカに、どうして男を、僕をセフレに選んだのか思わず尋ねてしまったんだ。
すると僕からズルリと出てゴムの処理をした後、タカは横たわった僕を見下ろして短い髪を少し掻きむしった。
「…言わなかったか?女は面倒なんだ。しょっちゅう連絡をくれって煩いし、妊娠させない様に気をつけなくちゃいけないだろ?寮にいると、そう外出するのもかったるい。
その点、男なら寮内で気にせず会えるし。誰でも良いわけじゃないけどな。…奏は俺の好みだったって事だ。何だ不満なのか?それに奏だって、いきなり俺とそう言う事になっても抵抗無かっただろう?…俺、奏に嫌だって言われてないよな?奏は男が好きなんだろ…?」
僕はそう言われて、聞かなければ良かったと正直思ってしまった。セフレはセフレだ。都合の良い相手で、取り替えのきく相手。僕は一体何を期待したんだろう。僕は黙って身体を起こして立ち上がると、シャワールームに向かって歩き始めた。
「…もう部屋に戻ったら。」
これ以上タカの顔は見たくなかった。まるで自分が便利なオナホになった気持ちだった。僕自身が男が好きだとか考えた事もないのに、タカが相手だから出来ただけで、他の男とこんな事が出来るとは思えなかった。
背中に刺さる視線を感じながら、シャワールームに篭って温かなお湯を頭から浴びながら、僕は全て間違ってしまったのかもしれないと思った。タカの事を好きな気持ちが、タカに穢されていく気がした。
憧れと、純粋な好きと言う恋心をタカに利用されて、踏み付けにされている。肌を合わせている時は幸せだと思っていたのは、自分への騙しだったのかな。
でもこの関係を僕は手放せるのだろうか。僕の気持ちはタカにあって、身体の関係だけだとしても、タカを誰よりも身近に感じたかったその欲が今の関係になったんだ。
僕はため息をついてシャワーの栓を捻り止めた。ポタポタと水滴が落ちるのを眺めながら、僕は外の音に耳を澄ました。もうタカは帰っただろうか。何となく顔を合わせるのは気不味い。
ガチャリとサッシのドアを開けると、タカが横に立っていて黙ったまま僕をタオルで拭き始めた。
「…すまん。言い過ぎた。無神経な事言った‥よな?」
僕は黙ってタカに雫を拭き取られながら呟いた。
「…僕は今までこんな経験ないんだ。だから自分の性癖も分からない。他の誰かと同じ様にしてみたらハッキリするのかな…。安田君に頼んでみようか。抱いてくれって。」
するとタカはピタリと手を止めると、僕の顎を掴んで強張った顔で僕を睨みつけた。
「あいつは男は抱かない。それに執行部内で奏を誰かと共有する気はない。…試すなら俺の知らない男にするんだな。」
そう冷たく言い放つと、踵を返して部屋を出て行ってしまった。僕はノロノロと床に落ちたタオルを拾うと、結局僕がセフレに成りきれないのがこの状況を生んだのだと思った。
さっきまで気持ち良くて、それこそ嬉しかったはずなのに、もう僕とタカの関係は壊滅的になってしまった。僕が要らぬ事を知りたがったせいなのか、タカは言い過ぎたって謝ってくれたのに。
「もう無理だよ…。」
僕にはやっぱりセフレなんて無理なんだ。いくら好きな相手だからって、タカに良いように踏みつけにされたくは無かったし、タカにもそんな男になって欲しくなかった。やるなら僕の知らないところですれば良い。
僕はきっと欲張りになってしまったんだ。タカに優しく愛撫されて、もっと愛されたくなってしまった。このままセフレを続けるなら、僕もタカを利用するくらいじゃないとダメだ。…僕にそんな事出来る?
僕は鏡に映る自分の顔を見つめて、さっき掴まれた顎に赤く指の跡がついているのに気がついた。
「…タカを僕のセフレにすればいいのかな。」
鏡の中の僕の顔はそんな冗談に笑えてなくて、耳に届く声はひび割れていた。
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