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戻りまして候

僕が今すべきこと

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「伯爵、僕、王立学園に戻ろうかと思います。」

僕はこの獣人の世界に戻ってきて1週間経ったある日、伯爵とのお茶会で話を切り出した。伯爵は何か考え深げに僕の顔をじっと見つめて言った。

「身体の調子は、ほとんど問題ないと昨日の医官も言っていたな。…マモルは離宮に戻るのかい?」

伯爵の探る様な眼差しを受け止めて、僕はクスッと笑って言った。


「伯爵が僕のことをとても心配してくださっているのは存じています。今王宮は、皇太子が正妃と婚礼をしたばかりで、しかも間もなく側妃も迎えるのでしょう?

僕は皇太子がどれだけ二人の貴妃に気を遣わねばならないのかと想像すると、ちょっとゾッとするくらいです。

リチャードも夏の夜が終わって、最終決定も間近でしょう。僕が離宮に居たら、彼らも落ち着かないでしょうし、僕も貴妃たちに結婚早々恨まれたくはありません。


僕もお二人にお礼を言いたいのは山々ですし、とても会いたいですけど、今はやめておいた方が無難です。そうは思いませんか?そもそも、僕は学生ですからね。

もう一度寮に入るか、場合によってはここから通っても良いと思ってるんです。ロクシーも、ここの方が伸び伸び遊べますから。ああ、そうは言っても、試験はどうなったのかな。

僕がこの世界でゼリーの様になっていた間に、結構な時間が過ぎましたよね。…まさか、留年だとか…!」


伯爵はふぅと息を吐き出すと言った。

「試験や、留年のことは何とでもなるだろう。マモルは獣人ではなく、人間なのだからな。寮に戻るのはやめておいた方が良いかもしれない。

王族の婚姻が慌ただしいこの時期だ。寮に居るマモルの所にリチャードや皇太子が訪れていって、下手な騒動を巻き起こすとも限らんからな。ここで会う分には、まだマシであろう。

マモルは王族の婚姻について思うところはあるのかい?」


僕はじっと目の前の、紅い澄んだ紅茶の色を見つめながら答えた。

「伯爵、僕の元の世界の国にも権力はこちらとは違いますが、王族の様な立場の方は居ましたし、他の国にも居ました。その方達を見ていたから分かるんです。

王族というものの為さねばならないこと、血筋を保つことの大切さを…。ですから多少はモヤモヤしますけど、僕自身を見てください。王族に負けないくらいハーレムですよ?


…冗談はさて置き、僕はまだ16歳ですから、勉学に励むことにします。あちらの世界では結婚なんて30歳前ですから。元の世界で普通の学生に戻って、僕はその事に気づいたんです。

ここは、あまりにもあちらと違うって。違いすぎて、僕は自分の感覚までおかしくなってしまっていたんです。だから伯爵もそんな心配そうな顔をしないで、僕との生活を楽しんで下さい。ね?」
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