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戻りまして候

ショックかも

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僕はロクシーと屋敷の温室へと向かった。伯爵が気を利かせてくれたのか、執事はお茶の用意だけすると、呼び出しのベルだけ置いて、人払いをしてくれた。

僕はロクシーが小さな竜に戻って温室の中を自由に飛び回っているのを、懐かしさ半分、本当に戻ってきたんだという実感半分で眺めていた。


さっき伯爵から言われた事を僕は考えていた。僕をこちらに呼ぶため必要だったのは大量の魔力。子供のロクシーの魔力では、ユニコーンを実体化に相当な時間が必要だと分かったこと。

皇太子は無理をして痩せるロクシーを見て、皇太子自身も僕をこちらに引き寄せたいと、魔力生成術を持っている隣国との婚姻を決めた…。


僕が感じた違和感…。あの場に皇太子が居なかった訳は、まさにそのせいだったんだ。僕はこの獣人の国の王族は獅子族で、いずれハーレムを構成すると知っていたし、覚悟していた。

僕自身だって、人の事をとやかく言える状況じゃない。けれど、思ったより現実にそれを突きつけられると案外ショックなのだなと、僕の身勝手さに苦笑いするしかなかった。


ただ、皇太子はそんな結婚でよかったのだろうか。僕のために、自分の結婚生活を売り飛ばした様に思える。でも、皇太子はきっと王妃として迎えた隣国の姫の事を、ちゃんと大事にするだろう事は想像できた。

それは考えると胸がギュッとなる事だった。そしてリチャードもまた、自分の王族としての責任を取るつもりなのだと伯爵は僕に言った。彼はこの国のスペアであるって事を誰よりもヒシヒシと感じている獣人だ。


丁度僕がこちらに呼び出される直前に、リチャードの『夏の夜』が行われたのだと伯爵は言った。そうか。リチャードもまた自分の役割を果たす覚悟をしたんだな。

そう言えば昨日別れ際リチャードが『…マモル。私たちはどんなに状況が変わろうとも、マモルを愛する気持ちは変わらない。それだけは信じてくれ。』そう言ったのは、この事だったのか。


僕は二人に会いたくなった。顔を見てちゃんとお礼を言いたかった。僕に彼らの王族としての使命を、とやかく言えるはずもなかったけれど、それでも抱きしめて彼らに言いたかった。

僕が彼らがどんな決断をしようとも、大好きだって伝えたかった。僕がそんな事を考えているとロクシーが僕のところへ戻ってきた。僕は腕を広げてロクシーを抱き止めると、ギュッと抱きしめて言った。


「ありがとう、ロクシー。僕は君の側にずっと居るよ。大好きだよ、ロクシー。」

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