僕が獣人？いいえ、人間です。内緒ですけど。

さよならの準備

風間家の団欒

僕は食卓を囲む姉たちを眺めた。長女は僕が事故に会う前に一人暮らしを始めていたので、今は居ない。父さんは二年前から単身赴任だったのだけど、僕が意識不明になった事で急遽本社に戻してもらえて、こうして休日は一緒にご飯を食べられる様になった。

「でも、守が部活入るとか思わなかったし。絶対帰宅部だと思ってた私。」

そう言いながら、僕のエビフライを盗む年子の姉は、これでも噂に名高い有名な女子高生だ。


しょうがないわねと言いながら、自分の分のエビフライを僕に分けてくれる母さんは、最近太ってきた。そんなお年頃なのかな。父さんは機嫌良さげにビールを飲みながら、野球中継を見ながら晩酌中。

相変わらずマッチョで、背も高い。僕は父さんを眺めながらボソリと呟いた。

「僕って、父さんみたいにはなれないのかな。」


口から生まれた様な真ん中の姉貴がニヤニヤして言った。

「え？守、父さん目指してるの？あー、無理じゃないかな？どっちかというと、茂叔父さんの方向じゃないかな、守は。」

僕は茂叔父さんを思い浮かべた。母さんの弟の茂叔父さんは、中肉中背のシュッとした品の良い叔父さんだ。確か大学で助教授とかしてたんじゃないかな。


僕が今のまま成長すると、確かにあんな感じになるかもしれない。母さんに良く似てるし。父さんは僕をチラッと見て言った。

「…お前は俺に唇が似てる。」

ピンポイント来た～。そっか、父さんも僕は叔父さん系だと思ってるんだ…。僕は肩をすくめて、言った。

「そっか。僕大人になったら父さんみたいなマッチョになるって思ってたけど、流石に叔父さんとか見るとあっちの方が将来像に近い気がしてきた。母さんに似たんだね、僕。」


「可愛いから良いじゃない！今時の若い女子からは男臭いタイプよりは中性的な方がモテるんだから。でも、守は男にもモテそうね？」

年子の姉の揶揄いに、僕は考え事をしてたせいか、うっかり何も考えずに答えてしまった。

「ああ、そうかも。そーいえば彼氏になりたいって言われた。」

それから急に盛り上がった女子チームがうるさ過ぎて、僕と父さんは早々にテーブルを離れてリビングに逃げ込んだ。


「はぁ、うるさ。ねぇ、父さん、僕が眠ってた時、何か不思議な事起きてなかった？」

僕は父さんに思い切って尋ねた。あちらでスケルトン僕が存在するとするなら、こちらでも何か変化があったのかもしれないって考えたからだ。

父さんは少し驚いた顔をして、ちょっと黙り込んだ後、僕に話してくれたことは想像以上に不思議な話だった。やっぱり僕はどちらの世界にも繋がっていたんだ。