僕が獣人？いいえ、人間です。内緒ですけど。

僕を取り巻く世界

夢でロクシーと

『ロクシー！』

僕はスケルトン僕の前にいる、少し大きな竜生のロクシーに声を掛けた。僕は何故か透けている自分自身の側に寄ることが出来ない。磁石の様に弾かれてしまうんだ。

ロクシーは直ぐに僕の方を向いて飛んで来てくれた。ロクシーの側には伯爵がいたけれど、伯爵には僕の声は聞こえないみたいで、キョロキョロとロクシーの飛んでいる方向を見るばかりだった。


僕はロクシーに抱きついて言った。

『ロクシー、来てくれたんだね？僕、こっちに戻らないともう戻れなくなるかもしれないんだ。何となく時間がない気がして…。だからロクシー、ユニコーンを呼んでくれる？あっちに一緒に行って？』

ロクシーは僕の姿は見えない様だったけれど、感触と声は聞こえる様だった。ギョイとひと鳴きすると、僕の指示通りにユニコーンのモチーフまで飛んだ。


モチーフの側に掴まると、ロクシーはじっとユニコーンのモチーフを見つめた。

『なぜユニコーンのモチーフがここにあるのか不思議なんだけど、ロクシーは何か感じるかい？』

ロクシーは急に大きな声で吼えた。

『ギューイィ！』

するとモチーフの色が少しだけど変化した様な気がした。同時にロクシーの身体が少しだけ熱く感じた。


僕はこのユニコーンはやっぱり今回の解決の糸口になりそうな気がしつつ、ロクシーを撫でた。さっきより少し疲れた顔のロクシーを見ると、もしかしたら魔法を使ったのかもしれない。

僕はロクシーから離れて、ユニコーンのモチーフに触ってみた。少しだけど、石膏の感触は前回よりもひんやりとはしていなかった。


『…ロクシー、やっぱりロクシーの魔法で、このユニコーンはあの時の様に姿を現すかもしれない。透けている僕と向こうの世界の僕を一つにする事が出来るのは、僕にはユニコーンしか思い当たらないんだ。

僕はロクシーや伯爵、みんなの元に戻りたいよ。君たちが望むのならね…。』

最後はちょっと自信がなくて小さな声になってしまったけれど、ロクシーはギュイとひと鳴きすると、僕をじっと見た。多分僕の姿ははっきりとは見えないのだろうけど、竜の魔法のセンサーの様なもので感じとってるのかもしれない。


僕はふと、上を見上げている伯爵を忘れていた事に気づいた。もう一度ロクシーに掴まると一緒に伯爵の側まで降りて行った。

ロクシーと一緒にいるだろう僕を探そうとじろじろ見つめる伯爵が、すっかり痩せたのを感じた僕は伯爵の側まで近づくと手に触れて言った。

『伯爵、ご飯はちゃんと食べて下さいね。そうじゃないと、僕が戻った時に怒りますよ？』

そう言いながら、ちょっとだけ涙声だったのは内緒にしてね、ロクシー。