僕が獣人？いいえ、人間です。内緒ですけど。

ただいま世界？

部長side部活体験者

一年の三谷から話があったのは二、三日前だった。何でも入学早々事故で昏睡になったクラスメイトが復帰して来たらしい。その男が中学の大会で準優勝した生徒なので部活体験に誘っても良いかと言うことだった。

本来ならもう新規の部員は入れないのだが、経験者で実力もあるという事もあって、二つ返事で了承したんだ。その後俺が友人に、一年でこんな奴がいるんだって話をしたところ、一人の目端の効く男がこう言った。


「風間守だろ？お前見た事ある？俺はあるぜ。風間三姉妹の弟で、めっちゃ綺麗な顔してるんだよ。背もそんな高くないし、まぁ高一だからな、ぱっと見女の子みたいだぜ？

へぇ、体験来るんだ。何かあんなに綺麗っていうか、可愛いと、着替える時見ちゃうかも。はは、お前報告しろよ、どうだったか。」

それはその場のノリでのおふざけの話だったけれど、現実では予想の更に上を行った。


目の前に現れたのは、ぱっと見女子にしか見えなかった。でも醸し出す雰囲気はそんな弱々しくもなく、三谷と話してる様子を観察してるとちょっとツンとした、注目慣れしてる男だった。

少し浮き足立ってる部員達が見て見ぬふりをしながらも、風間に注目しているのは明らかだった。三谷と喋りながらどんどん脱いでいく風間に少なくとも俺は妙に心臓が速くなった。


隣の三谷なんてすっかり呆然と突っ立ってる。風間は周囲を気にする事なくサッっと全裸になると、ロッカーから水着を出して着た。それは一瞬だったけれど、真っ白い肌の丸い尻や、下生えの少ない綺麗な股間とか、なんだか見てはいけないものを覗き見た気分になった。

実際は風間が堂々と見せてただけなんだが…。すっかり目に焼き付いてしまった。部員達も挙動不審だし。


俺は新人用の日焼け止めを、何故か分からないけれど自ら塗ってやっていた。胸元ばかり塗る風間の腹を塗ってやった時に、風間が馬鹿みたいにエロい声を出すから、皆んなして慌ててしまった。

風間が部員になったら、どうも波乱を起こしそうだなと困惑しながらも、ウォーミングアップで無心に泳ぐ風間は素晴らしいの一言だった。俺たちが普段忘れがちな、泳ぐ事の楽しさを体現している様だった。


俺は自分でも、何だか風間に優しくしてるなと自覚しながら、このまま風間が部活に入って欲しい様な、入って欲しくない様な矛盾した気持ちで、三谷と笑い合う風間を眺めたんだ。