僕が獣人？いいえ、人間です。内緒ですけど。

ただいま世界？

風間三姉妹の余波

朝から正門で待ち伏せされてる。僕を見るなり駆け寄って来た憲吾は、煩く言い募った。

「な、マジで水泳部の体験するのか？え？経験者？はぁ、大丈夫かなぁ…。」

僕はチラッと憲吾を見上げて言った。

「何で憲吾がそんなに色々言ってるの？まだ入るか分かんないし。うるさく言われるなら、昨日ナインで教えなければよかった。…憲吾は部活どこだっけ？」


僕はもはやストーカーのような付きまといの憲吾が面倒で、今では呼び捨てていた。そうした方が嬉しそうなのが何か…。まぁ、いいや。

「そんなつもりは無いんだけど…。俺？俺はバスケだよ。な、もし水泳部入らなかったらバスケのマネージャーしない？守なら、きっとみんな喜ぶと思うんだけど。」


僕は眉を顰めて答えた。

「…僕バスケには詳しくないし。何かリア充がいっぱいいそうだから、ちょっと僕には荷が重いかな。じゃあ、ここで。バイバイ。」

ちょっと萎れた顔の憲吾を放って、僕は教室へ向かった。席に着くと三谷が嬉しそうに放課後楽しみだって言ってきた。うーん、入部するか分かんないけどね。


僕としては、あっちの世界で役に立つように泳ぎの勘を取り戻したいって、そっちの気持ちが9割だよ。僕が水泳部の部活体験する話はクラスに広まっていて、みんなチラチラ僕を見てヒソヒソするのがうざい。

「ねえ、部活体験するのって珍しいのかな？何か噂されてるから。」

僕がそう言って三谷に尋ねると、三谷が視線を彷徨わせて答えた。


「…時期がズレてるから珍しいのと、どっちかというと風間君の動向が気になって噂されてるって方が大きいかもね。風間君は気づいてないかもしれないけど、結構ファンがいるんだよ？」


僕は意外な話に目を見開いた。獣人の世界で人間が魅了を発揮するのはしょうがないとして、ここは人間の世界。魅了なんて効くはずもない。

その時僕は、自分が風間三姉妹の弟だってことを意識してなかったんだ。風間三姉妹はこの高校にも噂が流れるくらい有名な美人姉妹だってことも。


そして、その弟ってだけでも注目されるのに、僕は直ぐ上の年子の姉に良く似た顔をしていたんだ。高校は違っても、現役女子高生の姉は、この高校でも結構知られていたみたいだ。

そんな事を三谷から聞かされて、僕はあの傍若無人な姉が人気な理由が分からないと思った。家の外では、きっと相当猫被りしてるんだろうな。


「みんな、物好きだね。うちの姉妹は結構ヤバいよ？」

そう言って笑ったんだ。