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ただいま世界?

戸惑い

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「風間ってずっと昏睡状態だったんだろ?何か奇跡の生還てやつ?」

そう言って僕の席の周りに集まった同級生達が、好奇心を滲ませた顔で僕を見つめた。

「う、うん。でも僕何も覚えてないから…。」

僕の返事に皆がザワザワして、好き勝手喋っている。僕は引き攣った笑いを浮かべたけれど、授業の始まるチャイムの音にホッと息をついた。


何だか美形じゃない顔に取り囲まれるのが慣れない。馬鹿馬鹿しいけど、これはマジだ。何だか皆妙に小さいし。僕は授業を受けながら、何だか今の状況の方がよっぽど違和感があるなと苦笑してしまった。

僕は少し切り揃えられた顎までの髪に触った。この髪も、結局バッサリと切るのは躊躇われた。彼らが好きなこの髪を短くするのが嫌だった。


獣人の世界へ行く前にどれだけ短くしたかったかって考えるとおかしな話だけど…。

僕は意識を取り戻してからずっと考え続けている。本当に獣人の世界があったんだろうかって。僕は事故にあった後、ずっと病院のベッドの上で眠っていたんだ。じゃあ、あれは僕の夢だったんだろうか。


でも僕にはそう思えない。だって夢ならどんどん薄れていくだろう記憶は、まったく薄れなくて、ありありと生々しく感じられるのだから。

僕は次元の狭間に落ちたのかな。そうだとしたら、今向こうで僕の身体はどうなっているんだろう。やっぱり眠っているのかな。それとも…消えた?


僕は考えてもどうしようもない今の状況に、全然普通の高校生としてやって行ける気がしなかった。僕が昏睡状態だったのは三ヶ月ほどだった。この時間経過もおかしい。

僕は向こうで一年以上は過ごしていた筈だ。でも、考えてもどうしようもない事だって、気づいていた。僕は今、現実の世界はここだ。

結局、高校との話し合いで、僕はギリギリ成績次第で進級できるって事になった。僕自身は余裕がある偏差値だったので、成績は大丈夫だと思った。


だけど…、僕を見つめるクラスメイトの視線が気になった。僕は入学早々事故に遭って欠席していた、のっぺらぼうの生徒なんだ。そのせいか何処にいても纏わりつく視線に、僕はうんざりしていた。

だから、段々と僕は周囲のクラスメイトと話さなくなってしまっていた。あんなに男らしく生きていこうって入学時に張り切っていた僕なのに、そんな考えも、もうどうでも良くなっていた。


いつものように売店へお弁当を買いに行った僕は、そのまま中庭の木の下のベンチで食べることにした。涼しい風が通り抜けて、ガヤガヤした教室で視線を気にしながら食べるよりは随分マシだと思った。

僕が目を閉じて風を感じていると、不意に足音が近づいて来た気がした。僕が目を開けてそちらを見るのと、そいつが話しかけてくるのはほとんど同時だった。

「…なぁ、風間守ってお前か?」
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