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家出
御前での告白
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僕はポカンと口を開けていたに違いない。伯爵に咳払いされて、僕は我に返った。我に返ったものの、頭の中はパニックだった。僕が爵位をもらう?人間として?…それは取り敢えず置いておこう。
僕の耳に聞こえてきたのは、王子二人との婚姻の話だった。二人って?え?僕は言葉の解析に行き詰まって、またまたフリーズしてしまった。
伯爵が僕の方を向いて話し出した。
「…マモルの国の文化が一人の相手としか婚姻を結ばないのは知っている。しかし、この国でのマモルの魅了具合を考えると、それでは争いが起きてしまうかもしれない。
実際、皇太子とリチャード殿下がお二方ともマモルにひどく惹かれているのは、はたから見ていても分かる程だ。恋というのは恐ろしい。普段隠している獣人としての気質が表立ってしまう。
マモルを巡って獅子の殿下たちが争うのは、この国の崩壊を意味するんだ。だったら二人とマモルが距離を取ればいい話なのだが…。
皇太子が夏の夜でマモルを見初めた事、そして人間として王が爵位を与えてくださる事を鑑みても、そんな単純な話にはならないのではないかと思う。
マモルは殿下方の事をどう思っているんだい?」
え。ここで?王子たちの父君である、王様が聞いているのに?僕はチラッと王様を見つめた。王様は面白そうな顔で片眉を上げると言った。
「思っている事を言っていいぞ。マモルにどう思われているかで、王子たちの器量が知れるというもの。ははは。ここだけの話だ。遠慮は要らぬぞ。」
僕は二人の大人の顔を見回すと、諦めて言った。
「…僕は、二人とも魅力的だと思います。リチャード殿下はそもそも命の恩人で、僕には可愛い一面を見せながらも、雄々しいところもあって見習いたいとも思います。
一方で皇太子は、思慮深くて僕を困らせない様に常に気を配ってくれています。でも僕はそんな自分の立場から逸脱できない皇太子が苦しそうに見えて放って置けないんです。
好きか嫌いかで言ったら、僕は二人とも気になる存在です。」
王様はしばらく黙っていたけれど、ぼそっと呟いた。
「…マモルは、王子たちにとって稀有な存在なのは間違いない。特に王になる道を進む事を決められた皇太子にとって、マモルの様に王としての資質を理解してくれる存在は得難いものだ。
父としてマモルに頼みたい。我が息子たちと婚姻を結んではもらえぬか。ただ、獣人の獅子族の常として、正妃と一人以上の側妃は慣例として必要になる。後継のためには必要だからな…。
マモルがその点を呑んでくれるのならば、マモルも王子たち以外の者との婚姻を同様に認めようと思うのだ。考えてくれまいか?」
僕の耳に聞こえてきたのは、王子二人との婚姻の話だった。二人って?え?僕は言葉の解析に行き詰まって、またまたフリーズしてしまった。
伯爵が僕の方を向いて話し出した。
「…マモルの国の文化が一人の相手としか婚姻を結ばないのは知っている。しかし、この国でのマモルの魅了具合を考えると、それでは争いが起きてしまうかもしれない。
実際、皇太子とリチャード殿下がお二方ともマモルにひどく惹かれているのは、はたから見ていても分かる程だ。恋というのは恐ろしい。普段隠している獣人としての気質が表立ってしまう。
マモルを巡って獅子の殿下たちが争うのは、この国の崩壊を意味するんだ。だったら二人とマモルが距離を取ればいい話なのだが…。
皇太子が夏の夜でマモルを見初めた事、そして人間として王が爵位を与えてくださる事を鑑みても、そんな単純な話にはならないのではないかと思う。
マモルは殿下方の事をどう思っているんだい?」
え。ここで?王子たちの父君である、王様が聞いているのに?僕はチラッと王様を見つめた。王様は面白そうな顔で片眉を上げると言った。
「思っている事を言っていいぞ。マモルにどう思われているかで、王子たちの器量が知れるというもの。ははは。ここだけの話だ。遠慮は要らぬぞ。」
僕は二人の大人の顔を見回すと、諦めて言った。
「…僕は、二人とも魅力的だと思います。リチャード殿下はそもそも命の恩人で、僕には可愛い一面を見せながらも、雄々しいところもあって見習いたいとも思います。
一方で皇太子は、思慮深くて僕を困らせない様に常に気を配ってくれています。でも僕はそんな自分の立場から逸脱できない皇太子が苦しそうに見えて放って置けないんです。
好きか嫌いかで言ったら、僕は二人とも気になる存在です。」
王様はしばらく黙っていたけれど、ぼそっと呟いた。
「…マモルは、王子たちにとって稀有な存在なのは間違いない。特に王になる道を進む事を決められた皇太子にとって、マモルの様に王としての資質を理解してくれる存在は得難いものだ。
父としてマモルに頼みたい。我が息子たちと婚姻を結んではもらえぬか。ただ、獣人の獅子族の常として、正妃と一人以上の側妃は慣例として必要になる。後継のためには必要だからな…。
マモルがその点を呑んでくれるのならば、マモルも王子たち以外の者との婚姻を同様に認めようと思うのだ。考えてくれまいか?」
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