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家出

家出大冒険

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僕は随分甘やかされていたんだなと、歯を食いしばりながら、ピッピの背中に備えられた鞍の上でお尻を揺らされていた。こんなに何時間もピッピと駆けたのは初めてで、限界を感じ始めていた。

僕は手綱を引きながら、ピッピに言った。

「ピッピ、ちょっと止まって!休憩しようか。僕、結構限界みたい。」


僕がそう言うと、お利口さんのピッピは腰を落として僕が降りられる様にしてくれた。スルリと先に降りたロクシーはギュイと鳴きながら周囲をキョロキョロと見回した。

僕も釣られて見回すと、そこは小さな可愛い村の入り口の様だった。少し先に僕が目指す山の麓が見えて、そこから続くなだらかな緑に覆われた丘が、こちらの村まで続いていた。


点在する三角屋根の家々や、トカゲの放牧地が点在していて、僕は王都とも、リットン領とも違う長閑な雰囲気に大きく息を吸い込んだ。この景色は以前画像で見た、スイスの村に似ていた。

僕は何か食事でも摂れるような食堂でもないかと、背中のリュックにロクシーを突っ込むと、ピッピの手綱を引きながら村の中に向かって歩き出した。


背中でロクシーがギュイと文句を言っている様な気がしたけれど、実は僕はお金は持ってきたけれど、手元に食べ物はほとんど持っていなかった。

平日の真昼間だというのにひと気を感じない村は、のどかな景色と矛盾する様で、僕は何だか落ち着かなかった。普通、村民の一人とばったり会ったり、小さな子供や、家畜の声が聞こえてくるものではないのかな?


僕が不思議に思って周囲を見渡していると、ピッピが広場の入り口のトカゲ用の水飲み場で脚を止めた。僕はピッピが水を飲むのを眺めながら、やっぱり獣人の気配を感じない近くの家をじっと見つめた。

何だか様子が変だった。僕は念のため水を飲み終わったピッピに跨ると、ゆっくりとその家の側まで歩き寄った。僕がその家の囲いの柵に近寄ると、やっぱり違和感を感じざるを得なかった。


庭先には子供の木製の玩具が放り出されたように転がっていた。視線を動かすと玄関の飾り棚からは花鉢が落ちて割れていた。慌てて飛び出したかの様なその光景に僕は眉を顰めた。

何だろう、とっても嫌な予感がする。僕は伯爵から見せてもらった怪生物の一覧がなぜか頭に浮かび上がってきた。その時、村の奥から凄まじい咆哮が辺りを切り裂いた。


ピッピの鱗がビリビリと浮き上がった。そしていつの間にリュックから出てきたのか、ロクシーが僕の前に身を乗り出してその咆哮が聞こえた方角へ顔を向けていた。


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