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リットン伯爵side密やかな会談

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「伯爵は気がついておろう。皇太子が事のほかマモルを気に入っていることを…。今は後見としてでは無く、博識な学者としての見解を聞きたい。

我が国、ベェリッテンバスクは獣人の国だ。その王となる皇太子がもし人間であるマモルを娶る事になったら、それはどんな意味を持つのかの。」


私は王の御前で難しい問いに顔を顰めた。その問いには私自身何度と無く考えて、調べてきたのだから。そして結論は出ない難問だ。私はため息をつくと王を見つめて答えた。

「私自身、その事については何度となく考えました。マモルは人間です。元の人間の世界には戻るあてもなく、このままこの国で過ごす事になるでしょう。


人間は、獣人とは全く生き方も考え方も違います。身体の構造も似ているようで微妙に違います。王が当然考えておられるように、我が国の皇太子の正妃は獣人であるべきとも思います。

ですが、伝承の存在である人間を王族が娶る事は、この国にとってメリットはあっても、デメリットは無い様に思います。…幸か不幸か、マモルは男です。


もしマモルが女の性を持つ人間だった場合、生まれるかもしれない子供の問題も含めて、王の問われた質問の答えはもっと難しい事になったでしょう。

しかもマモルの国では一夫一妻らしく、そうでない関係をマモルが受け入れられるかという問題があります。一方で私はマモルの魅了を考えると、マモルこそ一妻多夫であっても良いとも思うのです。


マモルを巡ってこの国に災いが起こるのを、私は一番恐れているのです。王よ、マモルに惹かれているのは、何も皇太子だけではありません。

第二王子であるリチャード殿下は、怪生物ヌルトンからマモルを救った時から、マモルに恋焦がれているように私には思えます。このマモルの魅了は、ある意味災いの種になるのではありませんか。

ですから私は、マモルは伝承の人間として獣人とは別の存在として扱うのが良いと思うのです。王族の保護の元、誰か一人のものにする事なく、マモルの望む在り方にする事こそ、この国にとっての最善ではないかと、今の時点では思えるのですが。」


私の提言に、王は目を閉じて腕を組んでしばらく考え込んでいた。そして、目を開けると深みのある黄金の瞳を私に向けて言った。

「…王子たちがマモルを巡って争うのは一番避けたいことではある。両方選ぶか、どちらも選ばないか。マモルにはそれだけは選択してもらわないとならぬであろうな。

まだ、16歳のマモルには酷かもしれぬが、伯爵の提言を検討した後、年内には公言する事にしようぞ。さすれば、皇太子の腹も決まろう…。」



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