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ターゲットは僕?

リチャードside驚きの秘密

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王と皇太子、そして私を前に、リットン伯爵は心無しか緊張していた。いつも動じる事のない人物がここまで緊張を滲ませるのは、これから伯爵の話す内容が他言無用であると言う事なのだろう。

王が、私たちを見回して伯爵に尋ねた。

「そちがその様な顔をするとは珍しい。私の執務の邪魔をしたほどだ。良いから話せ。」


伯爵は少し迷った表情を浮かべながら口を開いた。

「王よ、まずは私を許して頂きたいのです。これは私が独断でやった事で、マモル自身が意図して行った訳ではないからです。最初はそうだったとしても、それは状況的にしょうがなかったと思われます。」

王は眉を顰めて伯爵に言った。

「そなたが何を言いたいのか分からぬ。もっとわかる様に話せ。」


私はマモルの何かとんでもない事が伯爵の口から飛び出すのかと、拳を握りしめながら伯爵を見守った。隣の皇太子も落ち着かない様子で話の続きを待っている様だ。

「…マモルはこの国の伝承のひとつ、人間です。」

私達は誰も声を出せなかった。何と言って良いか分からなかったからだ。マモルが小さな竜を抱き抱えて、困った顔で私を見つめたあの時以上に驚愕していた。


皇太子が伯爵に掠れた声で尋ねた。

「伯爵、マモルは獣人ではないのか?…人間。マモルは獣化しないという事なのか?」

伯爵は頷くと、目の前の紅茶をひと口飲んで微笑んだ。

「…最初私がマモルに会ったのは、ウェリントン伯爵の城でした。

マモルの初めてのトカゲ乗りの際、ほんの二刻程で誰の助けもなく乗りこなし、トカゲがマモルを守るように支え、更に舌を伸ばして舐めたと驚きを持って城の者が噂していました。


私はその話を聞いて、ひと目その人物に会いたいと思いました。客人の部屋を訪ねると、マモルはトカゲ乗りに疲れ切って眠っていました。

ベッドに横たわっていたのは見たことの無い黒い髪で、獣人よりも華奢な身体つきの少年でした。ですが私はマモルをひと目見て、古い文献に載っていた『人間』を思い浮かべました。


私は無意識にマモルの髪を掻き上げて、あるはずの無い人間の証である毛のない耳を探しました。しかし、予想に反して私の目の前に、つるりとした美しい耳が現れたのです。

指先を見ても、全く獣化を感じさせないマモルの姿がそこにありました。」

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