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僕の足元の沼地
皇太子登場
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「あすらんおにいちゃま!」
不意に皇太子が大きく身動きして、デービス殿下は嬉しそうに声をあげた。皇太子はデービス殿下を抱き上げると、頬にキスして、誰か見つかっていない獣人はいないか尋ねた。
デービス殿下が僕の名前を呼ぶと、僕はそっと石像の横に移動して見つかりやすい様に顔を出した。デービス殿下と目があうと、皇太子がデービス殿下を抱っこしたまま僕に近づいてきた。
う…、逃れられない。何で皇太子がここにいるんだろう。僕の考えが顔に浮かんでいたのか、皇太子はにっこり笑うと言った。
「デービスが今度マモルと遊ぶと聞いてね、是非私も誘ってくれと頼んでおいたんだ。デービスはすっかりマモルの事が大好きみたいだ。」
デービスは僕に手を伸ばして抱っこをせがむと、皇太子は眉を上げて、クスクス笑いながら僕に殿下を受け渡した。殿下は僕の首に抱きつくと、猫の様に僕の首筋にスリスリして言った。
「ぼく、まもるちゅき。けっこん、ちゅる。」
予想もしない殿下の発言に僕はびっくりして目を丸くしたけれど、皇太子はデービス殿下のぷくぷくした頬を突っついて笑った。
『ライバルだな?デービス。』
何だか不穏な発言が聞こえた気がしたけど、僕は気づかないふりをして、皆の待っている場所へ歩き出した。テラスに出てきた側妃が皇太子の姿を見て、微笑んだ。
「まぁ、嬉しい訪問者ですね。丁度マモルが遊びにきてくれているんですよ。皇太子はマモルとは面識が有るのではなかったかしら?」
そう言って悪戯っぽく微笑んだ。あ、これはもしかして図られたのかな…。僕の焦りとは裏腹に、皇太子は僕を見つめて微笑んだ。
「ええ、夏の夜に挨拶は交わしました。時間がなくて話が出来なかったのですが、今日はたまたまデービスと遊ぼうとこちらに顔を出して正解でしたね。」
僕から滑り降りたデービスは、子守から僕の手作りの絵本を受け取って自慢げに皇太子に見せると、僕の膝の上に乗ってもう一度絵本遊びに興じた。僕は皇太子というギャラリーの前でごっこ遊びをするのは、何だか羞恥心が煽られた…。
そこで、僕は皇太子も巻き込んでずいずいずっころばしをやった。子供っぽい遊びで皇太子を揶揄う気持ちがあったんだ。デービス殿下の小さな指を捕まえようとする沢山の指穴に、殿下はキャッキャと喜んだ。
僕の番になって、僕が皆の指穴に人差し指を歌に合わせて差し込むと、なぜか皇太子の指穴にがっちりと捕まってしまった。僕はそれはルール違反だと言おうと皇太子の顔を見上げると、彼は金色の瞳を光らせて僕をじっと見つめていた。
…伯爵、僕、悪くないですよねっ!?
不意に皇太子が大きく身動きして、デービス殿下は嬉しそうに声をあげた。皇太子はデービス殿下を抱き上げると、頬にキスして、誰か見つかっていない獣人はいないか尋ねた。
デービス殿下が僕の名前を呼ぶと、僕はそっと石像の横に移動して見つかりやすい様に顔を出した。デービス殿下と目があうと、皇太子がデービス殿下を抱っこしたまま僕に近づいてきた。
う…、逃れられない。何で皇太子がここにいるんだろう。僕の考えが顔に浮かんでいたのか、皇太子はにっこり笑うと言った。
「デービスが今度マモルと遊ぶと聞いてね、是非私も誘ってくれと頼んでおいたんだ。デービスはすっかりマモルの事が大好きみたいだ。」
デービスは僕に手を伸ばして抱っこをせがむと、皇太子は眉を上げて、クスクス笑いながら僕に殿下を受け渡した。殿下は僕の首に抱きつくと、猫の様に僕の首筋にスリスリして言った。
「ぼく、まもるちゅき。けっこん、ちゅる。」
予想もしない殿下の発言に僕はびっくりして目を丸くしたけれど、皇太子はデービス殿下のぷくぷくした頬を突っついて笑った。
『ライバルだな?デービス。』
何だか不穏な発言が聞こえた気がしたけど、僕は気づかないふりをして、皆の待っている場所へ歩き出した。テラスに出てきた側妃が皇太子の姿を見て、微笑んだ。
「まぁ、嬉しい訪問者ですね。丁度マモルが遊びにきてくれているんですよ。皇太子はマモルとは面識が有るのではなかったかしら?」
そう言って悪戯っぽく微笑んだ。あ、これはもしかして図られたのかな…。僕の焦りとは裏腹に、皇太子は僕を見つめて微笑んだ。
「ええ、夏の夜に挨拶は交わしました。時間がなくて話が出来なかったのですが、今日はたまたまデービスと遊ぼうとこちらに顔を出して正解でしたね。」
僕から滑り降りたデービスは、子守から僕の手作りの絵本を受け取って自慢げに皇太子に見せると、僕の膝の上に乗ってもう一度絵本遊びに興じた。僕は皇太子というギャラリーの前でごっこ遊びをするのは、何だか羞恥心が煽られた…。
そこで、僕は皇太子も巻き込んでずいずいずっころばしをやった。子供っぽい遊びで皇太子を揶揄う気持ちがあったんだ。デービス殿下の小さな指を捕まえようとする沢山の指穴に、殿下はキャッキャと喜んだ。
僕の番になって、僕が皆の指穴に人差し指を歌に合わせて差し込むと、なぜか皇太子の指穴にがっちりと捕まってしまった。僕はそれはルール違反だと言おうと皇太子の顔を見上げると、彼は金色の瞳を光らせて僕をじっと見つめていた。
…伯爵、僕、悪くないですよねっ!?
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