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僕の足元の沼地

予想しない訪問者

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僕はデービス殿下を膝の上に乗せながら、プレゼントした絵本を一緒に見た。僕がデービス殿下に作ったのは、リットン領の海をイメージしたものだ。真ん中より上に船がいくつか浮いていて、下には大きな魚を泳がせた。

実は巨大なオオダコをイメージしたヌルトンの切り絵を海底に貼った。そして絵本の真ん中のひもにデービス殿下を模した紙人形をぶら下げた。


僕はその紙人形を使って、飛び出た船に乗せたりヌルトンから逃げたりと、絵本でどうやって遊ぶか教えてあげた。デービス殿下は目をキラキラさせて、楽しそうに声をあげて笑っていた。

ほんとにデービス殿下は可愛らしい。僕はすっかりお兄さん気分で、デービス殿下と一緒にわちゃわちゃしていた。そんな僕たちを胸を押さえた周囲の獣人たちが見つめていたなんて、全然気づかなかったけどね…。


ひとしきり絵本で遊んだデービス殿下が、急に僕の膝から降りると手を引っ張って言った。

「まもる、かくれんぼ、ちゅる?」

僕がにっこり笑って頷くと、早速目の前のテラスから出て二人の子守と一緒に小さな庭園で隠れんぼが始まった。最初は僕が鬼をやって、金色のふわふわした髪が覗く花壇の隙間を時間をかけて探すふりをした。


弾ける様な笑い声で我慢できなくなったデービス殿下が飛び出してきて、僕は抱き上げて高い高いをした。

「デービス殿下、捕まえましたよ?ふふふ。じゃあ、今度はデービス殿下がカッコいい鬼をやって下さいね?子守が一緒に数を数えてくれますから。」

ご機嫌なデービス殿下が後ろを向いているうちに、僕は庭園の石像の影にしゃがみ込んで隠れた。大人の僕が隠れるには選択肢があまり無かった。実際向こうでは子守の頭が飛び出ている。


デービス殿下が子守の1人と一緒に探し始める声を身をひそめて聞いていると、不意に耳元で声がした。

「隠れんぼかい?」

僕はびっくりして、ハッと後ろを振り返った。そこには細い黒に縁取られた輝く金色の瞳が僕を見つめていた。僕は状況が分からなくてポカンとしていたに違いない。

皇太子はクスッと笑って、僕の肩に手を置いて耳元でささやいた。


「ほら、デービスがこっちに近づいてくるよ。もっと身を屈めて?」

「まもる、どこいっちゃ?まもるー。」

僕は皇太子の息遣いまで感じるこの距離感に、最早さっさとデービスに捕まった方が良い気がした。けれど、皇太子に押さえつけられて、僕は立ち上がることも出来なかったんだ。

ああ、伯爵、僕は悪くありません!
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