僕が獣人？いいえ、人間です。内緒ですけど。

公開演習

公開演習

今日は特殊技能を武術で選択した新入生たちの公開演習の日だ。僕は凄く楽しみで、数日前からウキウキしていたんだ。ロービンとアーチストには、自分が出るわけじゃないのに何でそんなに興奮しているのかと呆れられた。

でも僕は二人の剣捌きは知っていたし、ファンタジー世界を満喫できる今日の日を、楽しみにしないはずないよね？

「ね？勝ち抜き戦なんでしょ？無差別級バトルって事だよね⁉︎ふふふ、めっちゃ楽しみなんだけど！あ、二人とも怪我しないようにね？頑張って！」


アーチストは僕を胡乱な眼差しで見つけるとボソッと言った。

「私は時々、マモルの言う事がわからない時があるんだ。……むさ…ばとる？はぁ、まあいいや。なぁ、私たちが五番以内になったら、マモルから何かご褒美くれよ。何かやる気が出るものが無いとなぁ。」

防具を付けていたロービンが、急に動きを止めると僕の方を向いて言った。


「私もマモルからご褒美が欲しい。一つだけ願いを叶えて欲しいな…。」

少し頬を赤らめるロービンの顔を、アーチストが呆れたように眺めると肩をすくめて言った。

「ロービンが本気出すってことか…。こりゃ面白くなってきたな。辺境伯の名を汚すわけに行かなくなってきたぞ。ははは、燃えてきた！よしっ、五番以内になったらマモルからご褒美な？」


僕の返事を待たずに、なぜかご褒美をあげる事が決まってしまったみたいだ。しかもそれから何故か会う学生が皆、ご褒美の確認してくるとかどういう事？

上位五人全員にご褒美あげるって事？はぁ、どうしよう。伯爵と相談しようか…。とりあえず、僕も盛り上がるのは好きだし、このイベントを楽しもうっと。



「今年の公開演習は、何だか生徒たちの気合いが違いますね？マモル君は応援ですか？」

観覧席から競技場を眺めていた僕の後ろから声を掛けてきたのは、特別講義をしてくれている言語学のディック先生だ。先生方の中じゃかなり若い方だ。

耳が出てないので何の獣人か分からないけれど、いつも穏やかで僕は大好きなんだ。


「ディック先生！こんにちは。先生も見学にいらっしゃったんですか？僕は友人達が張り切ってるので、応援を頑張りに来ました。ふふふ。

僕は見るからに武芸には向いてませんけど、ディック先生は武芸が得意だと言われても納得の、いい身体してますよね？」

僕がそんな事を言うと、ディック先生は悪戯っぽい顔をして言った。

「触ってみるかい？」