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王立学園

お屋敷に帰る

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「はぁ~。やっぱりここは最高だね?ロクシー。」

僕はサマーベッドのような椅子に横になりながら、ロクシーに温室の果物を食べさせていた。先日貴族院でバイトをした時の報酬は、すっかりロクシーのお腹の中に入ってしまった。

随分喜んだから、またあのバイトをしても良いかもしれない。でもその前に伯爵に報告しなきゃ駄目かなって思ったこともあり、帰ってきたんだ。


もっとも、伯爵にも会いたかったし、ロクシーの擬態も解いてやりたかったしね。

ロクシーはご機嫌でキュイキュイ鳴きながら、僕に淡い琥珀色の綺麗な瞳をクリクリと向けた。ロクシーの瞳は見れば見るほどキラキラとした星のようなものが目の奥に見えるんだ。

竜は魔法も使うから、瞳も特別なのかな?僕は滑らかな青銅色の鱗を撫でながらロクシーに尋ねた。

「…もしかしてロクシーはここでのんびり竜らしく過ごした方が幸せなのかな?僕の我儘で一緒に窮屈な寮生活させちゃって…。ロクシーは本当はどうしたいの?」


ロクシーはふと果物を食べるのを止めると、僕に飛びついて首筋に鼻先を寄せた。そして先割れした舌を伸ばして、僕の顎をチロチロと舐めた。

僕はくすぐったくなってクスクス笑うと、ロクシーを抱きしめた。

「ふふふ。僕もロクシーと一緒が良いな。ロクシーも一緒に学園に戻ろうね?」

僕とロクシーがイチャイチャしてると、遅れてやって来た伯爵が呆れ顔で言った。


「…マモルは本当に獣人でも、竜でも、トカゲでも、生きているものは全て虜にするのだな。もしかして怪生物ヌルトンもマモルをただ連れて行きたかっただけかもしれないな…。

ところでさっきの事務局の話だが詳しく教えてくれないか?」

そう言いながら執事が用意した紅茶を口にした伯爵は、少し驚いた顔をした。

「セバス、この紅茶は初めて飲むな。甘くて爽やかな果物の香りが素晴らしい。何処で手に入れたんだ?」


セバスは満面の笑みで僕の方をチラリと見ると、勿体ぶった態度で言った。

「こちらの紅茶は、マモル様が指示されて作らせたものです。」

伯爵は驚いたように僕を見つめた。僕は悪戯が見つかった気分で、ニヤニヤが止まらない。

「この温室に、僕の故郷で食べたものと同じ味の果物があったんです。食感も似ていたので小さく切って乾かして茶葉に混ぜて貰ったんです。アップルティーって名前にしたんですけど、気に入って頂けましたか?」

伯爵はにっこり微笑んで頷いた。


「ああ、とても気に入った。この温室にある果物は、ほとんど王都の店に売っていないものばかりだ。私が庭師に頼んで珍しいものがあったら取り寄せてもらっているんだ。

こんな風に乾燥しても楽しめるなら、もっと本格的に領地で栽培しても良いかもしれない。後で庭師に栽培方法を聞いてみよう。

…ああ、話が逸れたが、先日の貴族院事務局での話をしてくれ。」
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