僕が獣人？いいえ、人間です。内緒ですけど。

リットン領

番外編 ロービンsideマモルからの手紙

私はリットン領から届いた手紙を握り締めて、アーチストの居る談話室まで急いだ。

「アーチスト！聞いてくれ！」

私の剣幕にアーチストは目を白黒させていたが、一緒に談話室にいた学生たちも私を驚いたように見た。

「ロービン、どうしたんだ。そんな血相を変えて。お前がそんな態度を取るなんて見たことがないぞ？」


私は邪魔な奴がいたと、少し顔を顰めて落ち着きを取り戻すと、改めて言った。

「ウィル、今、相手をしてる暇はないんだ。アーチスト！一緒に来てくれ。」

虎族のウィルは少し呆れた顔で、私と急いでやって来たアーチストを交互に見ながら言った。

「お前、相変わらずだな…。まぁ面白い事だったら、俺にも教えてくれよ？」



私の部屋に一緒に急ぎながら、アーチストが尋ねてきた。きっと私の様子からマモルの話だろうと察したのだろう。

「…何か嫌な予感がするな。前回の手紙で、マモルが怪生物ヌルトンに襲われて、九死に一生を得た話には度肝を抜かれたぞ？しかもマモルは死後の世界見ちゃったって、何だか喜んでるような書き方だったからな。

あいつはちょっとどこかおかしいって。今回は何だっていうんだ。」

部屋に入りながら、私は周囲を見渡して誰も居ない事を確認して鍵を閉めると、手元の手紙をアーチストへ渡した。

「今度はこれだ。読んでも叫ぶなよ？」


手紙を読みながら、アーチストは目を丸くして、口元に手を当てて叫ぶのを必死に我慢しているようだった。

「ロービン！あいつは一体どうなってるんだ！今度は竜⁉︎竜なんて幻の生物だろ？伝承の生き物で、目撃もされてるわけじゃない。御伽噺のひとつだ。

そう思ってたけど、この手紙が嘘じゃないのなら…、リットン領のマモルの前に竜が現れたって事なのか⁉︎」

私は、自分だけが驚かされたわけじゃない事に少し気が済んで、アーチストに2枚目を読むように言った。


「ああ、続き読んだか？僕は竜の子供をペットにしましたって書いてあるのを。なぁ、竜ってペットに出来るのか？…まだ小さいみたいだけどな。

確かにマモルは妙にトカゲを手懐けたり、好かれがちだけど、だからって竜？私はこれを読んだ時、思わず叫んでしまったよ。だってそうだろう？

もうすぐ、マモルが編入試験を受けに王都にやってくるけれど、私は楽しみ半分、恐怖が半分だ。マモルの事だ。竜を王都に呼び寄せかねない。」

アーチストはこころなしか青褪めていたけれど、私はこの予想が当たらない事を心から願った。