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リットン領への旅路
リチャードsideパンダ族
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パンダ族である愛し子の話をするリットン伯爵は、何を考えているのか全くこちらに読めない表情で淡々と話し続けた。私はその姿に、かつて王立学園の特別講座でリットン伯爵の講釈を受けた事まで記憶に蘇った。
人知れぬ独立国でひっそりと存在するパンダ族の国は、私達が踏みれたことの無い秘境に有るらしかった。拐われてきたマモルはその行程で記憶を無くしており、ウェリントン伯爵の跡継ぎのロービンに保護されてからここひと月あまり、其方で過ごしていたらしかった。
そう言えばリットン伯爵と、ウェリントン伯爵夫人は叔父と姪の関係だったか…。ロービンたちが王立学園の入学で王都へ出立するのを機に、後見になったリットン伯爵と共に領地へと戻る途中だったらしい。
マモルの希望で海へ寄った挙句のあの事件。何ともパンダ族のマモルはあちこちで騒動を起こすタチらしかった。私は、ポーカーフェイスのリットン伯爵に尋ねた。
「伯爵、王族でもパンダ族と言う種族については認知していない。其方は高名な研究者だから、パンダ族について知識があったのか?」
伯爵は頷いて答えた。
「…何の根拠もない不確かなものを発表するわけにはまいりません。…私はマモルにあった時に、古い文献を思い出したのです。それはマモルによく似た種族についての記述が書かれていたのです。しかし、水害によってそれを失ってしまいました。
しかし、目の前にマモルが佇んだ時、私の記憶のピースがパチリとハマったのです。マモル自身は自分がパンダ族という事は覚えていました。マモルも完全に記憶を無くした訳ではなく、微かに覚えていることもある様です。」
私はリットン伯爵の表情を読むのを諦めて、それでも何かが気になって、それが何なのか分からないことに妙にもどかしさを感じた。
「伯爵、マモルを王立学園へ入学させたいと申したな。彼はそれに値する獣人か?」
伯爵は急に口元を綻ばして言った。
「殿下もマモルを知ればきっと驚かされるでしょう。彼は十分な賢さを持っています。まだ学び足りない部分はありますが、直ぐに追いつくでしょう。そして殿下もお気づきなのでは?獣化の程度を見ても彼はパンダ族の中でも高位の生まれでしょう。王立学園で学ぶことに何の不足もありません。」
私はこれ以上粘っても伯爵から情報は貰えないと踏んで、ソファから立ち上がると、こんなに楽しい事は久しぶりだと思いながら、伯爵に宣言した。
「伯爵、私もしばらく其方のリットン城でお世話になろう。そうだな、愛し子を助けたお礼という事でどうだ?」
伯爵の苦い顔に、私は弾ける様に笑ったのだった。
人知れぬ独立国でひっそりと存在するパンダ族の国は、私達が踏みれたことの無い秘境に有るらしかった。拐われてきたマモルはその行程で記憶を無くしており、ウェリントン伯爵の跡継ぎのロービンに保護されてからここひと月あまり、其方で過ごしていたらしかった。
そう言えばリットン伯爵と、ウェリントン伯爵夫人は叔父と姪の関係だったか…。ロービンたちが王立学園の入学で王都へ出立するのを機に、後見になったリットン伯爵と共に領地へと戻る途中だったらしい。
マモルの希望で海へ寄った挙句のあの事件。何ともパンダ族のマモルはあちこちで騒動を起こすタチらしかった。私は、ポーカーフェイスのリットン伯爵に尋ねた。
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しかし、目の前にマモルが佇んだ時、私の記憶のピースがパチリとハマったのです。マモル自身は自分がパンダ族という事は覚えていました。マモルも完全に記憶を無くした訳ではなく、微かに覚えていることもある様です。」
私はリットン伯爵の表情を読むのを諦めて、それでも何かが気になって、それが何なのか分からないことに妙にもどかしさを感じた。
「伯爵、マモルを王立学園へ入学させたいと申したな。彼はそれに値する獣人か?」
伯爵は急に口元を綻ばして言った。
「殿下もマモルを知ればきっと驚かされるでしょう。彼は十分な賢さを持っています。まだ学び足りない部分はありますが、直ぐに追いつくでしょう。そして殿下もお気づきなのでは?獣化の程度を見ても彼はパンダ族の中でも高位の生まれでしょう。王立学園で学ぶことに何の不足もありません。」
私はこれ以上粘っても伯爵から情報は貰えないと踏んで、ソファから立ち上がると、こんなに楽しい事は久しぶりだと思いながら、伯爵に宣言した。
「伯爵、私もしばらく其方のリットン城でお世話になろう。そうだな、愛し子を助けたお礼という事でどうだ?」
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