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リットン領への旅路
リットン伯爵side愛し子は人間
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明るい笑顔を見せながら、波打ち際ではしゃぐマモルを見守りながら、私は人間というものの無垢さをまざまざと感じていた。獣人には本能的に備わっているだろう警戒心や、猜疑心、逞しい体格や筋肉、その全てが目の前の人間には無かった。
16歳といえば、獣人の社会ではほとんど大人と言っても良いだろう。普通の庶民は働き始める年頃だ。一方、貴族や、卓越した能力の庶民は16歳からの2年間王立学園で学ぶことが義務付けられている年齢だ。
けれど、マモルは16歳とは名ばかりで、その華奢な体格と優しい穏やかな性格、無邪気な感情表現で私たちをほっこりさせる。かと言って、幼子かといえばそうでも無くて、時々非常に聡いところを見せたり、大人の様な振る舞いをする。
非常にアンバランスで、獣人には無いその振る舞いや、可愛らしい容姿のマモルは側にいる獣人をことごとく守り手として絡め取っていくのだ。
側で客観的にそれを見ていてる私は、研究対象としても、ある意味興味深く感じていた。けれど、こうして目の前で海に無邪気に喜んでいるマモルを見つめていると、私の中でもとっくに愛し子として心の中に食い込んでいることを感じてしまう。
私には妻も子供もないが、マモルはまさに私の子供の様な存在になっていた。そんな事を思いながら、そろそろ浜から上がって、領地まで残り半日の旅路に出立しようとマモルに声を掛けた時だった。
マモルは少し残念そうな表情を浮かべつつも、立ち上がってもう一度海を目に焼き付けたいとばかりに眺めて私たちのところに戻ろうとしていたのだ。何か足元に見つけたのか、ふと立ち止まって手首までの浅い海の中に手を伸ばした。
すると何か触手の様なものががっちりとマモルの手首を掴んで、あっという間にマモルを沖へ向かって引きずり始めた。マモルも抵抗していたが、じわじわと膝までの深さまで連れて行かれた。
私たちも指を咥えて見ていたわけではなかった。護衛達がすぐさまマモルを取り戻そうと剣を手に向かっていったけれど、何か鞭のようにしなる何本もの白い触手が剣を弾き、阻まれて、近づけなかった。
その触手を見た時、それが100年前に現れたと文献に載っていた海の怪生物ヌルトンだと気がついて、私は衝撃と深い絶望を感じた。ヌルトンには魔剣でないと斬ることも刺すことも出来ず、ただ指を咥えて拐われるのを見ていることしか出来ないと文献には書いてあったからだ。
なす術がない、私は目の前の現実が信じられなかった。
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非常にアンバランスで、獣人には無いその振る舞いや、可愛らしい容姿のマモルは側にいる獣人をことごとく守り手として絡め取っていくのだ。
側で客観的にそれを見ていてる私は、研究対象としても、ある意味興味深く感じていた。けれど、こうして目の前で海に無邪気に喜んでいるマモルを見つめていると、私の中でもとっくに愛し子として心の中に食い込んでいることを感じてしまう。
私には妻も子供もないが、マモルはまさに私の子供の様な存在になっていた。そんな事を思いながら、そろそろ浜から上がって、領地まで残り半日の旅路に出立しようとマモルに声を掛けた時だった。
マモルは少し残念そうな表情を浮かべつつも、立ち上がってもう一度海を目に焼き付けたいとばかりに眺めて私たちのところに戻ろうとしていたのだ。何か足元に見つけたのか、ふと立ち止まって手首までの浅い海の中に手を伸ばした。
すると何か触手の様なものががっちりとマモルの手首を掴んで、あっという間にマモルを沖へ向かって引きずり始めた。マモルも抵抗していたが、じわじわと膝までの深さまで連れて行かれた。
私たちも指を咥えて見ていたわけではなかった。護衛達がすぐさまマモルを取り戻そうと剣を手に向かっていったけれど、何か鞭のようにしなる何本もの白い触手が剣を弾き、阻まれて、近づけなかった。
その触手を見た時、それが100年前に現れたと文献に載っていた海の怪生物ヌルトンだと気がついて、私は衝撃と深い絶望を感じた。ヌルトンには魔剣でないと斬ることも刺すことも出来ず、ただ指を咥えて拐われるのを見ていることしか出来ないと文献には書いてあったからだ。
なす術がない、私は目の前の現実が信じられなかった。
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