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リットン領への旅路
リチャードside目の前の出来事
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私は目の前で深刻な顔をしている、港の守護所の者達の聞き取り調査をしていた。昨日突然行方不明になった子供が、港に遊びに行くと家族に言っていた証言を取れたからだ。船着場での捜索が終わって、砂浜の方で見かけたという目撃情報を取れた私たちは、ふと海の方へ目を向けた。
そこには身なりの良い人物と護衛らしき兵士が三人ほど、波打ち際ではしゃいでる少年を見つめていた。この街であんなに海に興奮する様な獣人はいないので、他所の土地から来た獣人だろう。
私たちは砂浜へと行方不明になった子供の痕跡を探すために、その集団を目の端に入れながら浜辺を注意深く進んでいた。するとあの少年が急に倒れたと思いきや、バシャバシャと必死な様子で暴れていた。
護衛らしき獣人達も少年を必死に捕まえようとするが、少年に近づこうとすると何か白い鞭の様なものに打たれて阻まれていた。少年はじわじわと沖へと引き摺られていく。
私たちはまさかと驚愕の顔を見合わせると、急いで少年の元へと走った。こんな時のために持っていた手元の魔剣を振りかざして、私たちに伸びる白い触手を切り落とした。
まだ膝ほどの遠浅の海だったが、水の抵抗があって直ぐには少年の元には辿り着けなかった。ようやく少年の手を掴む1番大きな触手を切り落とすと、その海の怪生物ヌルトンは弱った身体を潜っていた砂から浮かび上がらせた。
私は近寄ってきた少年の付き添い達に、少年の身を預けると仲間と共にヌルトンを切り刻んだ。船着場から異変に気づいた者たちが応援に駆けつけたのを目にすると、ようやく動きの止まったヌルトンの引き揚げを総勢10人ほどに任せた。
私は魔剣を仕舞うと、砂浜に横たわってぐったりした少年の元へと急いだ。血の気のない少年は一目で溺れたのがわかるほどで、私は慣れない手つきで救助している護衛を押し退けると、胸に空気を送り込む最上位の救命を行った。
時間との闘いである救命の結果、少年が水を吐き出すと、側で深刻な顔をしていた、身なりの良い人物が少年の額に指を押しつけて何かぶつぶつと囁いた。これは…、回復の魔法だ。
しばらくすると、血の気のない少年の顔にほのかに赤みが戻り、指先がピクリと動いた。よく見ると見覚えのある人物が、父親の様に少年に、聞き慣れない響きの名前を何度か必死に呼びかけると、少年はゆっくり瞼を開けた。
様子を見守っていた私たちは、その時初めて、その少年が黒髪で、黒い瞳の見慣れない風貌をしていることに気付いたんだ。
そこには身なりの良い人物と護衛らしき兵士が三人ほど、波打ち際ではしゃいでる少年を見つめていた。この街であんなに海に興奮する様な獣人はいないので、他所の土地から来た獣人だろう。
私たちは砂浜へと行方不明になった子供の痕跡を探すために、その集団を目の端に入れながら浜辺を注意深く進んでいた。するとあの少年が急に倒れたと思いきや、バシャバシャと必死な様子で暴れていた。
護衛らしき獣人達も少年を必死に捕まえようとするが、少年に近づこうとすると何か白い鞭の様なものに打たれて阻まれていた。少年はじわじわと沖へと引き摺られていく。
私たちはまさかと驚愕の顔を見合わせると、急いで少年の元へと走った。こんな時のために持っていた手元の魔剣を振りかざして、私たちに伸びる白い触手を切り落とした。
まだ膝ほどの遠浅の海だったが、水の抵抗があって直ぐには少年の元には辿り着けなかった。ようやく少年の手を掴む1番大きな触手を切り落とすと、その海の怪生物ヌルトンは弱った身体を潜っていた砂から浮かび上がらせた。
私は近寄ってきた少年の付き添い達に、少年の身を預けると仲間と共にヌルトンを切り刻んだ。船着場から異変に気づいた者たちが応援に駆けつけたのを目にすると、ようやく動きの止まったヌルトンの引き揚げを総勢10人ほどに任せた。
私は魔剣を仕舞うと、砂浜に横たわってぐったりした少年の元へと急いだ。血の気のない少年は一目で溺れたのがわかるほどで、私は慣れない手つきで救助している護衛を押し退けると、胸に空気を送り込む最上位の救命を行った。
時間との闘いである救命の結果、少年が水を吐き出すと、側で深刻な顔をしていた、身なりの良い人物が少年の額に指を押しつけて何かぶつぶつと囁いた。これは…、回復の魔法だ。
しばらくすると、血の気のない少年の顔にほのかに赤みが戻り、指先がピクリと動いた。よく見ると見覚えのある人物が、父親の様に少年に、聞き慣れない響きの名前を何度か必死に呼びかけると、少年はゆっくり瞼を開けた。
様子を見守っていた私たちは、その時初めて、その少年が黒髪で、黒い瞳の見慣れない風貌をしていることに気付いたんだ。
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