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僕はパンダ族
僕ですか?えーとパンダです。
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「お前、種族は何だ?あまり見かけない風貌だな?」
目の前のイカつい兄貴が目を光らせて威嚇してくる。…兄貴、頭のてっぺんに何かピコピコ動いてますぜ?僕は厳つさの怖さより、ピコピコ動く獣の耳らしき物体に気が散っていた。
もしかして僕って、今とんでもなくピンチなんじゃないだろうか。相手の耳以外はガタイの良い兵士の様に見える。うむ、耳以外は。もしかして尻尾も有るのだろうか?
そっと視線を兄貴の下半身へ流すと、尻尾らしき物体は見えなかった。なんだ、もしかして頭に付いているのはセンサー的なものなのかな。ちょっとした辱めなのかもしれないな。罰ゲームとか?イカつい兄貴とケモノ耳。誰だ、そんなマッチング考えるやつは。
僕はちょっとした現実逃避をしてたのかもしれない。さっき見た怖い生き物の事を考えないように頑張っていた。体感的には長かったけれど、多分脳内で高速思考でものの1、2秒ってところだろうけど。
僕はさっき目覚めた草っ原で、所持品チェックした時の事を思い出した。今日着ているパーカーのポケットに姉がテーマパークで付けていたと思われる、パンダの付け耳が入っていた筈だ。姉が僕のパーカーを勝手に借りてった時に、入れっぱなしになってたみたいだ。
何となく、自分を人間だと主張するのはまずい気がした僕は、ポケットから両手につけ耳を忍ばせて、フードを脱ぐ際に髪の毛につけ耳を素早く付けた。姉のつけ耳はカチューシャタイプじゃなくて、パッチンタイプだったのが幸いした。
黒くて丸っこい耳が僕の髪にちゃんと留まっているのを手で確認すると、僕は堂々とこう言った。
「僕ですか?えーと、パンダです。」
目の前のイカつい兵士のしかめた眉が更に深さを増した。するとその時、馬車の様な乗り物から誰かが顔を見せた。フードのついたローブを着ているので、顔などはこちらからはよく見えない。その人物は側にいた他の兵士に声を掛けるとドアを開けさせてゆっくりと降りてきた。
「何か問題でも起きたのか?」
異世界もののゲームで着る様な、長いフード付きのローブから響く声は案外若い声で、僕は兵士たちより権力のありそうなその人物に視線を向けた。
僕はこちらを見る、相手の紫の瞳と見つめ合った。その美しい目は、少し驚いた様に見開かれた。僕はこの年齢不詳の権力者に、精一杯の笑顔を繰り出して言った。
「僕、迷子になってしまって…。申し訳ないのですが、街まで一緒に乗せて行ってもらうわけにはいきませんか?」
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そっと視線を兄貴の下半身へ流すと、尻尾らしき物体は見えなかった。なんだ、もしかして頭に付いているのはセンサー的なものなのかな。ちょっとした辱めなのかもしれないな。罰ゲームとか?イカつい兄貴とケモノ耳。誰だ、そんなマッチング考えるやつは。
僕はちょっとした現実逃避をしてたのかもしれない。さっき見た怖い生き物の事を考えないように頑張っていた。体感的には長かったけれど、多分脳内で高速思考でものの1、2秒ってところだろうけど。
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「僕ですか?えーと、パンダです。」
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「僕、迷子になってしまって…。申し訳ないのですが、街まで一緒に乗せて行ってもらうわけにはいきませんか?」
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