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宮廷での生活
言い訳できない※
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私は黄翔海の王官吏への怒りを感じて、あの時の恐怖と戸惑い、そして礼部へ配属を受けてからの李長官からのそしりと冷遇、過剰労働と相まって、感情が溢れ出してしまった。
気がつけば私は涙をポロポロと止める事も出来ずに、ただ唇を食いしばって嗚咽を堪えていた。私の疲れた身体を支える黄翔海の力強さが、今は私を支える全てだった。
黄翔海は私を抱き上げると、寝台に腰掛けて私の顔を唇で優しくなぞった。
「…泣くな、永明。お前に泣かれると、私はどうしていいか分からぬ…。」
そう言って、私を胸に寄りかからせて背中を大きな手で撫で続けた。私は父上が亡くなってから、初めて、人に甘えていた。自分には決して許されなかった事を、よりにもよって黄翔海で叶えていた。
後から思い出すと叫びたいほどの恥ずかしさだったが、その時は色々な事が重なって冷静ではなかったんだ。黄翔海は私をそっと寝台に寝かせると、労わる様に唇を額に押しつけて起き上がった。
私は立ち去ろうとする黄翔海の黒い着物の袖を無意識に掴んでいた。ハッとして強張った顔で私を見下ろす黄翔海は、ゆっくりともう一度寝台に腰掛けた。
「…疲れた永明に無理を強いたくないのだ。」
そう言って、恥ずかしさで目を閉じた私の頬を撫でた。私は黄翔海の熱い強さが欲しかった。心細い私を包み込んで欲しかった。だから自分が発したその言葉は今考えるとどうかしてたとしか思えないけれど、その時は本心だったんだ。
自分の手を、頬を撫でる黄翔海の節張った大きな手に重ねると、手のひらに唇を押し当ててささやいた。
「行かないで。…今夜は私の情夫になって…。」
馬鹿な事を言ってしまったと、恐る恐る黄翔海を見上げると、薄明かりの中でぎらついた眼差しが私を睨みつけていた。
「…朱永明は私を惑わす、美しい物の怪かもしれん。だが望みは叶えなくてはな。…私は物の怪に魅入られているのだから。」
そう言って立ち上がって、するりと着物を脱ぎ捨てて、逞しい裸体を優しい月あかりに浮かび上がらせた。身体の中心に雄々しくそびえる昂りはすっかり準備万端で、私の視線を奪った。
私は思わずごくりと喉を鳴らして、黄翔海に慣らされてきた自分の身体の疼きを感じた。そんな私を真っ直ぐに見つめると、黄翔海は私に覆い被さって優しく唇を啄んだ。
その唇に焦らされた私は、黄翔海の頭を手で掴んで引き寄せると、大きく口を開けて貪る様に舌を突き入れたんだ。
気がつけば私は涙をポロポロと止める事も出来ずに、ただ唇を食いしばって嗚咽を堪えていた。私の疲れた身体を支える黄翔海の力強さが、今は私を支える全てだった。
黄翔海は私を抱き上げると、寝台に腰掛けて私の顔を唇で優しくなぞった。
「…泣くな、永明。お前に泣かれると、私はどうしていいか分からぬ…。」
そう言って、私を胸に寄りかからせて背中を大きな手で撫で続けた。私は父上が亡くなってから、初めて、人に甘えていた。自分には決して許されなかった事を、よりにもよって黄翔海で叶えていた。
後から思い出すと叫びたいほどの恥ずかしさだったが、その時は色々な事が重なって冷静ではなかったんだ。黄翔海は私をそっと寝台に寝かせると、労わる様に唇を額に押しつけて起き上がった。
私は立ち去ろうとする黄翔海の黒い着物の袖を無意識に掴んでいた。ハッとして強張った顔で私を見下ろす黄翔海は、ゆっくりともう一度寝台に腰掛けた。
「…疲れた永明に無理を強いたくないのだ。」
そう言って、恥ずかしさで目を閉じた私の頬を撫でた。私は黄翔海の熱い強さが欲しかった。心細い私を包み込んで欲しかった。だから自分が発したその言葉は今考えるとどうかしてたとしか思えないけれど、その時は本心だったんだ。
自分の手を、頬を撫でる黄翔海の節張った大きな手に重ねると、手のひらに唇を押し当ててささやいた。
「行かないで。…今夜は私の情夫になって…。」
馬鹿な事を言ってしまったと、恐る恐る黄翔海を見上げると、薄明かりの中でぎらついた眼差しが私を睨みつけていた。
「…朱永明は私を惑わす、美しい物の怪かもしれん。だが望みは叶えなくてはな。…私は物の怪に魅入られているのだから。」
そう言って立ち上がって、するりと着物を脱ぎ捨てて、逞しい裸体を優しい月あかりに浮かび上がらせた。身体の中心に雄々しくそびえる昂りはすっかり準備万端で、私の視線を奪った。
私は思わずごくりと喉を鳴らして、黄翔海に慣らされてきた自分の身体の疼きを感じた。そんな私を真っ直ぐに見つめると、黄翔海は私に覆い被さって優しく唇を啄んだ。
その唇に焦らされた私は、黄翔海の頭を手で掴んで引き寄せると、大きく口を開けて貪る様に舌を突き入れたんだ。
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