17 / 45
科挙の結果
登用の朝
しおりを挟む 私は官吏の衣を着て荷物を抱えると、塗りの剥げた門の前で母上と二人の弟の顔を見回すと言った。
「私はこれから官吏の寮に入ることになる。仕事は10日ほど続くから、休みは3日続けて取れる様だ。休みには顔を出すよ。今日は官吏の儀の後、配属先が決まる日だから遅れない様にもう行くよ。」
私は母親と弟たちに挨拶すると、近所の人たちに見送られて宮廷へ向かって歩き出した。しばらく歩いてひと気が無くなると、目の前に立派な黄家の馬車が待っていた。
私はため息をついて珀が扉を開けるのを待った。これまでの経験から無駄な抵抗は意味がないと知っていた。馬車の中には、やはり黄翔海が、紅龍の官僚衣を着て、その身体を見せつける様に幅を取って座っていた。
私が黙って馬車に乗り込むと、黄翔海がニヤリと笑って言った。
「やはり早めに来て正解だった様だ。全く、お前は人に頼るという事をしなくて困る。…その官吏の服もよく似合っているぞ。眼鏡はやめたのか。…いや、やめろと言ったのは私だったな。」
妙に口数の多い黄翔海に私は眉を顰めて言った。
「これを仕立てて下さったのは黄様でしょう。一緒に見ていませんでしたか?今日は配属が知らされた後、寮での部屋が開示されるんです。まぁ、私の荷物はほとんど有りませんけどね。
寮を出た人の置き荷物があるときいて、そこから物色しようかと思ってるんです。何とかなるでしょう。」
そう言う私に、苦い顔をした黄翔海は面白くなさそうに言った。
「…私の情夫にそんな惨めな事をさせるわけ無いだろう。お前の部屋はもう昨日のうちに整え済みだ。全くそんな綺麗な顔をしているくせに頓着が無さすぎる。
お前が頼むから、私との関係は内密にしているが、何かあったらそれも無しだ。言ったろう。私は自分のものに手を出されるのは我慢ならないと。」
私は目の前の男が、妙に世話焼きな事にうんざりして言った。
「私は自分が誰かの情夫だなどと人に知られたくはありません。せっかく科挙に通ったのですからね。特に何が起きるなどとは思いませんけど。」
そう言って黄翔海の隣に座ると、グイっと腰を引き寄せられた。
「…しばらくお前と枕を交わせなくなるのだ。到着するまで情夫としてきっちり役目を果たしてもらおうか。」
そう言うと、妙に真剣な眼差しで私を見つめると貪る様に口づけた。私は眉を顰めて、こんな時にも情夫として良いようにされる事に悔しさを感じた。
しかし一方で、黄に慣らされ始めた私の身体は、その甘やかな舌使いにあっという間に蕩けさせられて、強請る様に黄の着物を握りしめた。
黄はそんな私を覗き込むと、甘やかに呟いた。
「こんな場所だが、期待には応えてやらねばな?」
「私はこれから官吏の寮に入ることになる。仕事は10日ほど続くから、休みは3日続けて取れる様だ。休みには顔を出すよ。今日は官吏の儀の後、配属先が決まる日だから遅れない様にもう行くよ。」
私は母親と弟たちに挨拶すると、近所の人たちに見送られて宮廷へ向かって歩き出した。しばらく歩いてひと気が無くなると、目の前に立派な黄家の馬車が待っていた。
私はため息をついて珀が扉を開けるのを待った。これまでの経験から無駄な抵抗は意味がないと知っていた。馬車の中には、やはり黄翔海が、紅龍の官僚衣を着て、その身体を見せつける様に幅を取って座っていた。
私が黙って馬車に乗り込むと、黄翔海がニヤリと笑って言った。
「やはり早めに来て正解だった様だ。全く、お前は人に頼るという事をしなくて困る。…その官吏の服もよく似合っているぞ。眼鏡はやめたのか。…いや、やめろと言ったのは私だったな。」
妙に口数の多い黄翔海に私は眉を顰めて言った。
「これを仕立てて下さったのは黄様でしょう。一緒に見ていませんでしたか?今日は配属が知らされた後、寮での部屋が開示されるんです。まぁ、私の荷物はほとんど有りませんけどね。
寮を出た人の置き荷物があるときいて、そこから物色しようかと思ってるんです。何とかなるでしょう。」
そう言う私に、苦い顔をした黄翔海は面白くなさそうに言った。
「…私の情夫にそんな惨めな事をさせるわけ無いだろう。お前の部屋はもう昨日のうちに整え済みだ。全くそんな綺麗な顔をしているくせに頓着が無さすぎる。
お前が頼むから、私との関係は内密にしているが、何かあったらそれも無しだ。言ったろう。私は自分のものに手を出されるのは我慢ならないと。」
私は目の前の男が、妙に世話焼きな事にうんざりして言った。
「私は自分が誰かの情夫だなどと人に知られたくはありません。せっかく科挙に通ったのですからね。特に何が起きるなどとは思いませんけど。」
そう言って黄翔海の隣に座ると、グイっと腰を引き寄せられた。
「…しばらくお前と枕を交わせなくなるのだ。到着するまで情夫としてきっちり役目を果たしてもらおうか。」
そう言うと、妙に真剣な眼差しで私を見つめると貪る様に口づけた。私は眉を顰めて、こんな時にも情夫として良いようにされる事に悔しさを感じた。
しかし一方で、黄に慣らされ始めた私の身体は、その甘やかな舌使いにあっという間に蕩けさせられて、強請る様に黄の着物を握りしめた。
黄はそんな私を覗き込むと、甘やかに呟いた。
「こんな場所だが、期待には応えてやらねばな?」
11
お気に入りに追加
350
あなたにおすすめの小説



好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

有能官吏、料理人になる。〜有能で、皇帝陛下に寵愛されている自分ですが、このたび料理人になりました〜
𦚰阪 リナ
BL
琳国の有能官吏、李 月英は官吏だが食欲のない皇帝、凛秀のため、何かしなくてはならないが、何をしたらいいかさっぱるわからない。
だがある日、美味しい料理を作くれば、少しは気が紛れるのではないかと考え、厨房を見学するという名目で、厨房に来た。
そこで出逢った簫 完陽という料理人に料理を教えてもらうことに。
そのことがきっかけで月英は、料理の腕に目覚めて…?!
料理×BL×官吏のごちゃまぜ中華風お料理物語、ここに開幕!
※、のところはご注意を。

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる