11 / 45
最悪の出会い
気怠い朝の決心
しおりを挟む
重い身体は、まだ熱っぽく動くこともままならなかった。どうも、黄との閨で無理がたたったようだ。痺れる快感と一緒に思い出すのは、苦しさでもあった。
あの男は、初めて男を受け入れる私に無理を強いたに違いなかった。科挙のためだとは言え、沸々と湧き上がる怒りに、更に熱が上がりそうだった。
横になっている寝台は、あの趣味の悪い紅と金色の薄絹が天蓋からかかっていたものとは違っていて、目に優しい翡翠色の柔らかな薄絹が周囲を覆っていた。
それだけで、癒された気がするのは科挙の試験までの寝不足と、試験の疲れで過労が溜まっていたせいかもしれない。もちろん追い討ちをかける様に黄に強いられた閨が一番の原因だけど…。
ぼんやりと惰眠を貪っていると、ふと部屋に誰かが入ってきた気がした。開かない瞼を無理に開けると、薄絹越しに仁王立ちしたあの男の姿が見てとれた。
思わず目を閉じて寝たふりをしてしまったのはどうしてなのか自分でも分からなかった。すると黄は衣擦れの音をさせて、寝台に座った様だった。
その時、大きな節張った手が私の額に触れた。しばらく確かめる様に置かれた後、ふっとため息をついた黄は私の汗ばんだ額の髪を撫で付けると、立ち上がって部屋を出て行った。
私は驚きで目をパチリと開けると、今の仕草があの強引な男の振る舞いでは無い気がして戸惑いを感じた。まるで私の事を心配しているかの様だった。まさかな…。
しかし直ぐに私は、考える気力も無くなって、また泥の様な眠りへと潜って行った。次に気がついた時にはだいぶ調子が良くなっていて、私はゆっくり起き上がった。
思いの外腰がだるく、筋肉の痛みを感じたけれど、その原因に思い至って、私は顔を覆ってため息をついた。こんな事を後どれ位しないといけないのだろう。
まさか顔の黒子で自分の事がバレるとは思わなかった。薄暗い妓楼と化粧で隠れていると思ったのだけれど、詰めが甘かった様だ。でもあの男を蘭平楼で見かけたことは無かった。
では何故あの男の知るところとなったのか、私はあの男だけでなく、妓楼に来ていた官吏や官僚のお客にもこれ以上利用されたくないと固く決心していた。
あの男が欲望の吐け口として私を利用するのなら、私もあの男の、三大名家と称される黄家の権力を利用させてもらおうと思った。私はこの時、あの男の手の内へと自ら巻き込まれていく事を、意図せずに決心してしまったのだった。
あの男は、初めて男を受け入れる私に無理を強いたに違いなかった。科挙のためだとは言え、沸々と湧き上がる怒りに、更に熱が上がりそうだった。
横になっている寝台は、あの趣味の悪い紅と金色の薄絹が天蓋からかかっていたものとは違っていて、目に優しい翡翠色の柔らかな薄絹が周囲を覆っていた。
それだけで、癒された気がするのは科挙の試験までの寝不足と、試験の疲れで過労が溜まっていたせいかもしれない。もちろん追い討ちをかける様に黄に強いられた閨が一番の原因だけど…。
ぼんやりと惰眠を貪っていると、ふと部屋に誰かが入ってきた気がした。開かない瞼を無理に開けると、薄絹越しに仁王立ちしたあの男の姿が見てとれた。
思わず目を閉じて寝たふりをしてしまったのはどうしてなのか自分でも分からなかった。すると黄は衣擦れの音をさせて、寝台に座った様だった。
その時、大きな節張った手が私の額に触れた。しばらく確かめる様に置かれた後、ふっとため息をついた黄は私の汗ばんだ額の髪を撫で付けると、立ち上がって部屋を出て行った。
私は驚きで目をパチリと開けると、今の仕草があの強引な男の振る舞いでは無い気がして戸惑いを感じた。まるで私の事を心配しているかの様だった。まさかな…。
しかし直ぐに私は、考える気力も無くなって、また泥の様な眠りへと潜って行った。次に気がついた時にはだいぶ調子が良くなっていて、私はゆっくり起き上がった。
思いの外腰がだるく、筋肉の痛みを感じたけれど、その原因に思い至って、私は顔を覆ってため息をついた。こんな事を後どれ位しないといけないのだろう。
まさか顔の黒子で自分の事がバレるとは思わなかった。薄暗い妓楼と化粧で隠れていると思ったのだけれど、詰めが甘かった様だ。でもあの男を蘭平楼で見かけたことは無かった。
では何故あの男の知るところとなったのか、私はあの男だけでなく、妓楼に来ていた官吏や官僚のお客にもこれ以上利用されたくないと固く決心していた。
あの男が欲望の吐け口として私を利用するのなら、私もあの男の、三大名家と称される黄家の権力を利用させてもらおうと思った。私はこの時、あの男の手の内へと自ら巻き込まれていく事を、意図せずに決心してしまったのだった。
19
お気に入りに追加
350
あなたにおすすめの小説



好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

有能官吏、料理人になる。〜有能で、皇帝陛下に寵愛されている自分ですが、このたび料理人になりました〜
𦚰阪 リナ
BL
琳国の有能官吏、李 月英は官吏だが食欲のない皇帝、凛秀のため、何かしなくてはならないが、何をしたらいいかさっぱるわからない。
だがある日、美味しい料理を作くれば、少しは気が紛れるのではないかと考え、厨房を見学するという名目で、厨房に来た。
そこで出逢った簫 完陽という料理人に料理を教えてもらうことに。
そのことがきっかけで月英は、料理の腕に目覚めて…?!
料理×BL×官吏のごちゃまぜ中華風お料理物語、ここに開幕!
※、のところはご注意を。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる