65 / 67
変わるもの、変わらないもの
ラファエルsideここまでの道のり
しおりを挟む
今夜をどれくらい待ち望んでいただろう。令嬢としては規格外の婚約者のアンドレアは、私を困らせることに長けていた。アンドレアの事を好きになってしまったあの小鳥の事件の瞬間、私はアンドレアが男の子であると思いながらも好きになっていた。
だからアンドレアが令嬢だと知ってホッとした一方で、私はもしかして女の子であるアンドレアを好きにならないかもしれないとも思った事さえあった。
10歳になったアンドレアは、何処から見ても非の打ちどころのない美しくも可憐な令嬢になっていた。私は何処かでそれを残念に思っていた。あの活発で伸びやかな少年の様なアンドレアは私の胸に深く刻まれていたからだ。
けれどもアンドレアの願いで剣を交わしたあの時、私はまたアンドレアに二度目の恋に堕ちた。気が抜けない剣捌きにゾクゾクする様な興奮を覚えたし、真剣な美しい空色の瞳が私だけを見つめるその瞬間の胸の高まりは覚えが無いものだった。
だから会いに行く度に剣を交えるのは何よりの楽しみだったし、淑女然したアンドレアが内心上手くあの伸びやかなもう一人のアルと折り合いをつけている事に賞賛こそすれ、幻滅する事など何も無かった。
どちらかと言うとアンドレアは私を警戒して中々気を許してくれなかった。王都で私に秋波を送る多くの令嬢達とどうしてこうも違うかと、アンドレアの気を惹くのに苦労したのは今思い出しても苦笑してしまう。
時々私の前で失敗して顔色を窺うアンドレアさえ愛しくて、そして唇を重ねる度に貪欲になっていく素直なアンドレアに煽られて大変だった。
けれどもまさか辺境伯を口説き落として男装して学院へ潜入するなどとは想定外だった。フレッドは口を割らなかったけれど、アンドレアを溺愛していて心配した長兄のオリバーが、酒に酔って思わず漏らしたその情報は私を驚愕させた。
ここでアンドレアがしようとしている事を中止させることも出来たろうと思う。だけれど5年も掛けたその願いを私が握りつぶしたら、結婚生活は破綻しただろうし、そもそも結婚も無かったかもしれない。
私は辺境伯と同じにアンドレアの願いを見守ることしか出来なかった。ジェイクを守りに立てたものの、想像するだけでそれは胸の焼ける様な事だった。だから度々王都の屋敷に顔を出してアンドレアにお仕置きもどきの悪戯を仕掛ける事になったのも今なら許して貰えるだろうか。
そうは言ってもすっかり淑女より青年の様に思考回路が寄ってしまったアルは、私を止めるどころか欲望と好奇心のままに突っ走っていく。
アルに会いにいく度に、震える様な悦びと、欲求不満に苦しい程だった。そのアルが私の腕の中で蕩けて、その先を強請る様に見つめられて、私はこの小悪魔の様で純粋な素晴らしい存在をまさに自分だけのものにする事に、叫び出したいほどの喜びを感じていた。
ああ、アル、アンドレア、君は私の全てだ。
~お知らせ~
新作公開開始しました♡
【竜の国の人間様】
現代ものの連載が続いて、異世界ファンタジーBLのほのぼのの禁断症状が出てしまい、治療のため書き始めました笑
以前から書きたかった竜人の国を舞台にした作品です。幼児スタートで沢山ほのぼの出来そうですw
竜人以外に獣人も国民ですのでモフモフでも楽しめるはず!です。好きなものてんこ盛りで楽しく書いてます。
よろしくお願いします♡
だからアンドレアが令嬢だと知ってホッとした一方で、私はもしかして女の子であるアンドレアを好きにならないかもしれないとも思った事さえあった。
10歳になったアンドレアは、何処から見ても非の打ちどころのない美しくも可憐な令嬢になっていた。私は何処かでそれを残念に思っていた。あの活発で伸びやかな少年の様なアンドレアは私の胸に深く刻まれていたからだ。
けれどもアンドレアの願いで剣を交わしたあの時、私はまたアンドレアに二度目の恋に堕ちた。気が抜けない剣捌きにゾクゾクする様な興奮を覚えたし、真剣な美しい空色の瞳が私だけを見つめるその瞬間の胸の高まりは覚えが無いものだった。
だから会いに行く度に剣を交えるのは何よりの楽しみだったし、淑女然したアンドレアが内心上手くあの伸びやかなもう一人のアルと折り合いをつけている事に賞賛こそすれ、幻滅する事など何も無かった。
どちらかと言うとアンドレアは私を警戒して中々気を許してくれなかった。王都で私に秋波を送る多くの令嬢達とどうしてこうも違うかと、アンドレアの気を惹くのに苦労したのは今思い出しても苦笑してしまう。
時々私の前で失敗して顔色を窺うアンドレアさえ愛しくて、そして唇を重ねる度に貪欲になっていく素直なアンドレアに煽られて大変だった。
けれどもまさか辺境伯を口説き落として男装して学院へ潜入するなどとは想定外だった。フレッドは口を割らなかったけれど、アンドレアを溺愛していて心配した長兄のオリバーが、酒に酔って思わず漏らしたその情報は私を驚愕させた。
ここでアンドレアがしようとしている事を中止させることも出来たろうと思う。だけれど5年も掛けたその願いを私が握りつぶしたら、結婚生活は破綻しただろうし、そもそも結婚も無かったかもしれない。
私は辺境伯と同じにアンドレアの願いを見守ることしか出来なかった。ジェイクを守りに立てたものの、想像するだけでそれは胸の焼ける様な事だった。だから度々王都の屋敷に顔を出してアンドレアにお仕置きもどきの悪戯を仕掛ける事になったのも今なら許して貰えるだろうか。
そうは言ってもすっかり淑女より青年の様に思考回路が寄ってしまったアルは、私を止めるどころか欲望と好奇心のままに突っ走っていく。
アルに会いにいく度に、震える様な悦びと、欲求不満に苦しい程だった。そのアルが私の腕の中で蕩けて、その先を強請る様に見つめられて、私はこの小悪魔の様で純粋な素晴らしい存在をまさに自分だけのものにする事に、叫び出したいほどの喜びを感じていた。
ああ、アル、アンドレア、君は私の全てだ。
~お知らせ~
新作公開開始しました♡
【竜の国の人間様】
現代ものの連載が続いて、異世界ファンタジーBLのほのぼのの禁断症状が出てしまい、治療のため書き始めました笑
以前から書きたかった竜人の国を舞台にした作品です。幼児スタートで沢山ほのぼの出来そうですw
竜人以外に獣人も国民ですのでモフモフでも楽しめるはず!です。好きなものてんこ盛りで楽しく書いてます。
よろしくお願いします♡
0
お気に入りに追加
338
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。
オレの愛しい王子様
瑞原唯子
恋愛
ずっと翼のそばにいて、翼を支える——。
幼いころ創真はひとりの少女とそう約束を交わした。
少女はいつしか麗しい男装で王子様と呼ばれるようになるが、
それでも創真の気持ちはあのころのまま変わらない。
【完結】新米メイドは男装令嬢のお気に入り
たおたお
恋愛
見た目はどう見ても美少女のマリオンは、実は男の娘。辺境のランズベリー領から王都にやってきて、皆に少女と勘違いされたまま王宮でメイドとして働き始めます。
一方ミランダは王宮でも有名な男装令嬢でフランツ第二王子の幼馴染。あることがきっかけで美少女?メイドのマリオンと出会い、そして男の娘とは知らずに彼女に惹かれていくのでした。
自身が女性であるにも関わらず、初めて少女に惹かれていることに疑問を持ちつつも、どんどんマリオンが気になっていくミランダ。そんな中、親友でもあるフランツもマリオンのことが気になり出していて、そしてついには……!?
見た目はあべこべな二人の恋の行方は? 「ちょっと」変わったメイドのマリオンを中心に繰り広げられるラブコメディーをお楽しみください。
※本作は第17回恋愛小説大賞に応募しております。気に入って頂けましたら、是非評価&投票の程、宜しくお願いします!
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる