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変わるもの、変わらないもの

ラファエルsideここまでの道のり

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今夜をどれくらい待ち望んでいただろう。令嬢としては規格外の婚約者のアンドレアは、私を困らせることに長けていた。アンドレアの事を好きになってしまったあの小鳥の事件の瞬間、私はアンドレアが男の子であると思いながらも好きになっていた。

だからアンドレアが令嬢だと知ってホッとした一方で、私はもしかして女の子であるアンドレアを好きにならないかもしれないとも思った事さえあった。


10歳になったアンドレアは、何処から見ても非の打ちどころのない美しくも可憐な令嬢になっていた。私は何処かでそれを残念に思っていた。あの活発で伸びやかな少年の様なアンドレアは私の胸に深く刻まれていたからだ。

けれどもアンドレアの願いで剣を交わしたあの時、私はまたアンドレアに二度目の恋に堕ちた。気が抜けない剣捌きにゾクゾクする様な興奮を覚えたし、真剣な美しい空色の瞳が私だけを見つめるその瞬間の胸の高まりは覚えが無いものだった。


だから会いに行く度に剣を交えるのは何よりの楽しみだったし、淑女然したアンドレアが内心上手くあの伸びやかなもう一人のアルと折り合いをつけている事に賞賛こそすれ、幻滅する事など何も無かった。

どちらかと言うとアンドレアは私を警戒して中々気を許してくれなかった。王都で私に秋波を送る多くの令嬢達とどうしてこうも違うかと、アンドレアの気を惹くのに苦労したのは今思い出しても苦笑してしまう。

時々私の前で失敗して顔色を窺うアンドレアさえ愛しくて、そして唇を重ねる度に貪欲になっていく素直なアンドレアに煽られて大変だった。


けれどもまさか辺境伯を口説き落として男装して学院へ潜入するなどとは想定外だった。フレッドは口を割らなかったけれど、アンドレアを溺愛していて心配した長兄のオリバーが、酒に酔って思わず漏らしたその情報は私を驚愕させた。

ここでアンドレアがしようとしている事を中止させることも出来たろうと思う。だけれど5年も掛けたその願いを私が握りつぶしたら、結婚生活は破綻しただろうし、そもそも結婚も無かったかもしれない。


私は辺境伯と同じにアンドレアの願いを見守ることしか出来なかった。ジェイクを守りに立てたものの、想像するだけでそれは胸の焼ける様な事だった。だから度々王都の屋敷に顔を出してアンドレアにお仕置きもどきの悪戯を仕掛ける事になったのも今なら許して貰えるだろうか。

そうは言ってもすっかり淑女より青年の様に思考回路が寄ってしまったアルは、私を止めるどころか欲望と好奇心のままに突っ走っていく。


アルに会いにいく度に、震える様な悦びと、欲求不満に苦しい程だった。そのアルが私の腕の中で蕩けて、その先を強請る様に見つめられて、私はこの小悪魔の様で純粋な素晴らしい存在をまさに自分だけのものにする事に、叫び出したいほどの喜びを感じていた。

ああ、アル、アンドレア、君は私の全てだ。




~お知らせ~

新作公開開始しました♡
【竜の国の人間様】
現代ものの連載が続いて、異世界ファンタジーBLのほのぼのの禁断症状が出てしまい、治療のため書き始めました笑
以前から書きたかった竜人の国を舞台にした作品です。幼児スタートで沢山ほのぼの出来そうですw
竜人以外に獣人も国民ですのでモフモフでも楽しめるはず!です。好きなものてんこ盛りで楽しく書いてます。
よろしくお願いします♡

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