64 / 67
変わるもの、変わらないもの
思い出し笑い
しおりを挟む
結局あの遠乗りのせいなのか、僕とエルの婚約期間はあっという間に終了する事になってしまった。エルも狡いんだ。僕にあんな甘い果実を食べさせて、もっと欲しいと言えば結婚しないとダメだと言うのだから。
結局僕はエルの策略にハマってあっという間に結婚式を迎えてしまった。僕のお父様でさえ展開の速さに驚いていたけれど、僕も望んでいるのを知ると、ポートリー辺境伯の権力を行使して友人であるグルーバンス侯爵と晴れの日を用意してしまった。
お母様は僕の髪が短い事を気に病んで、そうは言っても長い所は肩につきそうだったけれど、結婚式はもう少し後でも良いのではないかと戸惑った様子だった。
けれどもラファエルがお母様に、どんなに僕を愛していてもう一時も離れていたくないのだと恥ずかし気もなく愛を語らったせいで、すっかり夢見る少女の様に頬を染めて僕たちをうっとりと見つめる羽目になった。
同時にお父様にも甘い眼差しを送って、お父様も満更じゃない様子だった。まさかもう一人子供が産まれるとかあるだろうか。流石にないかな?
一番の関門はやっぱり僕の兄様達で、特に24歳の長兄のオリバーは、お父様と同じ青い目を険しく光らせてラファエルを詰問したみたいだった。僕はその場に居た訳じゃなかったから詳細は分からなかったけれど、何度もエルが呼び出されているのは聞いていた。
結局シモン兄様とエルの親友であるフレッド兄様が、オリバー兄様を何とか説得してくれて無事に結婚出来た。両親が許したとしてもやはり家族全員に心から祝ってもらいたいのは本当だから、心底安堵したよ。
僕の同性で唯一の親友であるマチルダは兄のシドと同じ黒髪をサラリとなびかせて、印象的な緑色の瞳を興奮と感動に揺らめかせて僕の花嫁姿を称賛してくれた。…いや、どうだろう。
『今までで一番美しいですわ!美しいミルクティー色の巻毛の短さも上手く誤魔化せて、アンドレアのその美しい水色の瞳が愛に輝いてますもの。
…アンドレアは、結局ラファエル様に良い様に誑かされたのですわね?はしたないことにハードルの低いアンドレアの弱点を突くなんて、本当に頭がいいこと。でもアンドレアが望むのですもの、私達がどうこう言うことじゃありませんわね?』
確かそんな事を言われた気がするから、やっぱり悪口だろうか。でもそう言うマチルダだってジェイクにすっかり絡め取られていたからおあいこだ。ジェイクはエルの様に難しい男じゃないけど、マチルダだってすっかり恋する眼差しでジェイクとイチャイチャしてたからね?
僕がそんな事をクスクス笑いながら思い出していると、不意に後ろから手が伸びてきて抱きしめられた。首筋に柔らかく濡れた感触がすると、エルの低くて甘い声が聞こえた。
「私の奥様、これからする楽しい事を考えていたのかい?ずっと私を煽ってくれたお礼を今宵たっぷりさせて貰うつもりだよ。アル…。」
僕は微笑んだままエルの腕の中で身体を反転させると、エルの蕩けそうな眼差しを見上げた。心臓は一気にドキドキと鳴り響いている。ああ、ついに僕たちは本当に結ばれるんだ。僕はエルのサラリとした銀色の髪を指先でくすぐる様に耳に掛けて、そのまま首をなぞって胸に手を置いて言った。
「本当?僕ずっと我慢してたんだから…。きっと素敵な夜になるでしょう?エル、愛してる。」
エルは一瞬目を見開いたけれど、次の瞬間美しい灰色の瞳を細めて僕を睨んだ。
「油断すると直ぐこれだ。アルは本当に…。私をどれだけ溺れさせたら気が済むんだい?」
結局僕はエルの策略にハマってあっという間に結婚式を迎えてしまった。僕のお父様でさえ展開の速さに驚いていたけれど、僕も望んでいるのを知ると、ポートリー辺境伯の権力を行使して友人であるグルーバンス侯爵と晴れの日を用意してしまった。
お母様は僕の髪が短い事を気に病んで、そうは言っても長い所は肩につきそうだったけれど、結婚式はもう少し後でも良いのではないかと戸惑った様子だった。
けれどもラファエルがお母様に、どんなに僕を愛していてもう一時も離れていたくないのだと恥ずかし気もなく愛を語らったせいで、すっかり夢見る少女の様に頬を染めて僕たちをうっとりと見つめる羽目になった。
同時にお父様にも甘い眼差しを送って、お父様も満更じゃない様子だった。まさかもう一人子供が産まれるとかあるだろうか。流石にないかな?
一番の関門はやっぱり僕の兄様達で、特に24歳の長兄のオリバーは、お父様と同じ青い目を険しく光らせてラファエルを詰問したみたいだった。僕はその場に居た訳じゃなかったから詳細は分からなかったけれど、何度もエルが呼び出されているのは聞いていた。
結局シモン兄様とエルの親友であるフレッド兄様が、オリバー兄様を何とか説得してくれて無事に結婚出来た。両親が許したとしてもやはり家族全員に心から祝ってもらいたいのは本当だから、心底安堵したよ。
僕の同性で唯一の親友であるマチルダは兄のシドと同じ黒髪をサラリとなびかせて、印象的な緑色の瞳を興奮と感動に揺らめかせて僕の花嫁姿を称賛してくれた。…いや、どうだろう。
『今までで一番美しいですわ!美しいミルクティー色の巻毛の短さも上手く誤魔化せて、アンドレアのその美しい水色の瞳が愛に輝いてますもの。
…アンドレアは、結局ラファエル様に良い様に誑かされたのですわね?はしたないことにハードルの低いアンドレアの弱点を突くなんて、本当に頭がいいこと。でもアンドレアが望むのですもの、私達がどうこう言うことじゃありませんわね?』
確かそんな事を言われた気がするから、やっぱり悪口だろうか。でもそう言うマチルダだってジェイクにすっかり絡め取られていたからおあいこだ。ジェイクはエルの様に難しい男じゃないけど、マチルダだってすっかり恋する眼差しでジェイクとイチャイチャしてたからね?
僕がそんな事をクスクス笑いながら思い出していると、不意に後ろから手が伸びてきて抱きしめられた。首筋に柔らかく濡れた感触がすると、エルの低くて甘い声が聞こえた。
「私の奥様、これからする楽しい事を考えていたのかい?ずっと私を煽ってくれたお礼を今宵たっぷりさせて貰うつもりだよ。アル…。」
僕は微笑んだままエルの腕の中で身体を反転させると、エルの蕩けそうな眼差しを見上げた。心臓は一気にドキドキと鳴り響いている。ああ、ついに僕たちは本当に結ばれるんだ。僕はエルのサラリとした銀色の髪を指先でくすぐる様に耳に掛けて、そのまま首をなぞって胸に手を置いて言った。
「本当?僕ずっと我慢してたんだから…。きっと素敵な夜になるでしょう?エル、愛してる。」
エルは一瞬目を見開いたけれど、次の瞬間美しい灰色の瞳を細めて僕を睨んだ。
「油断すると直ぐこれだ。アルは本当に…。私をどれだけ溺れさせたら気が済むんだい?」
9
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説
オレの愛しい王子様
瑞原唯子
恋愛
ずっと翼のそばにいて、翼を支える——。
幼いころ創真はひとりの少女とそう約束を交わした。
少女はいつしか麗しい男装で王子様と呼ばれるようになるが、
それでも創真の気持ちはあのころのまま変わらない。
獅子騎士と小さな許嫁
yu-kie
恋愛
第3王子獅子の一族の騎士ラパス27歳は同盟したハミン国へ使いで来た。そこで出会った少女は、野うさぎのように小さく可愛らしい生き物…否、人間…ハミン国の王女クラン17歳だった!
※シリアス?ほのぼの、天然?な、二人の恋がゆっくり始まる~。
※不思議なフワフワをお楽しみください。
誰もいないのなら
海無鈴河
恋愛
嫌いな彼と秘密の恋人になりました(フリだけど)
ごく普通の高校生――大和朱莉はある日突然許嫁がいることを知ってしまう。
その相手は容姿、家柄、能力、全てにおいて完璧な同じ学校の生徒会長――吉野蒼司だった。
しかし、学校では対立している二人の仲は最悪。
仕方なく仲の良い恋人同士として過ごしてみようと同盟を組んだ二人だが、それには「周囲にバレない」というオプションが付いていた!
右も左も分からない!二人の秘密の結末ははたしてどこに向かっていく……!
----------------
一応学園×コメディ×ごくまれにラブ
※この作品は他サイトにも掲載しています。
表紙写真は写真AC様よりお借りしました。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
年上の許嫁女教師は大胆な帰国子女
naomikoryo
恋愛
里崎亨は、高校生活を送る普通の男子高校生。
彼の幼馴染であり、3歳年上の美咲は、アメリカに移住してから数年後に帰国した。
彼女は英語、数学、体育の教員免許を持つ優秀な帰国子女であり、学校で臨時の英語教師として教壇に立つことになった。
久しぶりの再会に胸を躍らせる亨だが、彼女の存在は彼にとって特別なものであり、心の奥に秘めた思いが浮かび上がる。
美咲は大胆でサバサバした性格であり、教室内での彼女の存在感は抜群。亨は、彼女の教え方や魅力に惹かれ、授業中も彼女のことばかり考えてしまう。しかし、彼女が何気なく送るウインクや、思わず触れた手が心に残り、彼の心は高鳴るばかりだ。
ある日、美咲が亨の家庭を訪れ、二人は楽しい時間を過ごす。
その中で、彼女の過去の経験やアメリカでの生活について話が弾む。
気づけば、彼女との距離が徐々に縮まり、思いがけないキスを交わすことに。
亨は彼女に対する想いが募り、年上の彼女が実は自分の許嫁であることに気づく。
二人の関係は、幼馴染から年上の許嫁へと発展し、甘く、時には困難な恋愛模様が描かれていく。
果たして、亨は美咲との関係を深められるのか。
彼女の大胆さと優しさに触れながら、彼自身も成長していく姿が描かれる青春ラブストーリー。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!
仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。
18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。
噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。
「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」
しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。
途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。
危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。
エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。
そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。
エルネストの弟、ジェレミーだ。
ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。
心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――
【完結】新米メイドは男装令嬢のお気に入り
たおたお
恋愛
見た目はどう見ても美少女のマリオンは、実は男の娘。辺境のランズベリー領から王都にやってきて、皆に少女と勘違いされたまま王宮でメイドとして働き始めます。
一方ミランダは王宮でも有名な男装令嬢でフランツ第二王子の幼馴染。あることがきっかけで美少女?メイドのマリオンと出会い、そして男の娘とは知らずに彼女に惹かれていくのでした。
自身が女性であるにも関わらず、初めて少女に惹かれていることに疑問を持ちつつも、どんどんマリオンが気になっていくミランダ。そんな中、親友でもあるフランツもマリオンのことが気になり出していて、そしてついには……!?
見た目はあべこべな二人の恋の行方は? 「ちょっと」変わったメイドのマリオンを中心に繰り広げられるラブコメディーをお楽しみください。
※本作は第17回恋愛小説大賞に応募しております。気に入って頂けましたら、是非評価&投票の程、宜しくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる