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心境の変化
ジェイクsideなぜ気づかなかったのか
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『僕はラファエル様の許嫁のアンドレアだよ。』とアルに事もなげに言われて私はシドの顔を見た。シドは肩をすくめて頷いた。いや、あのアルの足元に落ちていたコルセットは明らかに女物として仕立ててあったけれど、だからと言ってラファエル様の許嫁!?
私は思わず立ち上がっていた。
「え?アルが女かもしれないって思った上に、そのとんでもない情報ぶっ込んでくるのやめて…!」
私は頭を抱えてもう一度力無く座り込んだ。そんな私に追い打ちを掛けるように、シドは私に説明し始めた。
「俺は元々アンドレアとは幼馴染だったんだ。昔からアンドレアは男まさりで、いやほとんど少年と言っても良かった。そんな変わり者のアンドレアを気に入って許嫁にと望んだのはラファエル様だけどな。
流石の辺境伯も10歳からはアンドレアが少年のように振る舞うのを許してはくれなかったけど、アンドレアもこの通り、男として学院で力試しをしたいと辺境伯を口説き落とした。
結果的に完璧な淑女としてのアンドレアとして必要な時に振る舞いつつ、今はこうして学院でアルベルトとして何とかこの一年過ごしたって訳だ。俺はまぁ、保護者というか、監視役だな。」
私はラファエル様が直々に、アルベルトの味方になるように依頼してきた事を思い出して呟いた。
「ラファエル様はアルの事が心配だったんだな。いや、普通止めるだろ?そんな無謀な事!」
けれど私の目の前にいるアルを見ていると、ラファエル様の気持ちも分からなくはなかった。アルは淑女というよりは令息だ。私はため息をついて言った。
「まだ整理はつかないけど、とりあえずこの勝ち抜き戦で怪我をしないでくれよ?ここで何かあったら、私もシドもラファエル様や辺境伯に顔向け出来ないからな。はぁ、それにしてもこの一年間のシドの気苦労を思うと、本当同情するよ。」
私がそう言うと、アルはシドの脇腹を肘で突いてニヤニヤ笑った。
「シド、これからは愚痴を言える相手が出来て良かったね?」
私とシドは、この綺麗で何とも手のかかる友人であり監視対象を思わず埴輪目で眺めてしまった。アルはご機嫌でそろそろ時間だと立ち上がると、しなやかな身体を伸ばして準備体操を始めた。
私が思わずアルの後ろ姿を見るともなしに眺めていたけれど、確かに女だと思って眺めると柔らかな魅力的な尻だとか、腿だとか、急に目に毒な気がしてきた。
そんな私をシドがジロリと見ると、警告するように言った。
「俺はアルを今更女として見るには、痛い目にあった材料が多過ぎてその気にはならないけどな。ジェイク、お前は仮の恋人役ということもあるし、変に意識するかもしれない。だが、ラファエル様然り、辺境伯然り、下手な考えはしない方が身のためだぞ?
…それにアルはあの通り綺麗だが、中身があれだからな。振り回されるのがオチだぞ。」
私はため息をついてシドを見返して言った。
「分かってるよ。私もラファエル様を敵に回すほど馬鹿じゃない。ラファエル様の許嫁への恐ろしいまでの溺愛は貴族界に響き渡ってるからな。しかしアルが許嫁か…。ラファエル様も随分と思い切ったよな。」
私たちは顔を見合わせて苦笑した。どう考えてもアルは一筋縄でいかない人間だ。さすがはラファエル様なのか?
私は思わず立ち上がっていた。
「え?アルが女かもしれないって思った上に、そのとんでもない情報ぶっ込んでくるのやめて…!」
私は頭を抱えてもう一度力無く座り込んだ。そんな私に追い打ちを掛けるように、シドは私に説明し始めた。
「俺は元々アンドレアとは幼馴染だったんだ。昔からアンドレアは男まさりで、いやほとんど少年と言っても良かった。そんな変わり者のアンドレアを気に入って許嫁にと望んだのはラファエル様だけどな。
流石の辺境伯も10歳からはアンドレアが少年のように振る舞うのを許してはくれなかったけど、アンドレアもこの通り、男として学院で力試しをしたいと辺境伯を口説き落とした。
結果的に完璧な淑女としてのアンドレアとして必要な時に振る舞いつつ、今はこうして学院でアルベルトとして何とかこの一年過ごしたって訳だ。俺はまぁ、保護者というか、監視役だな。」
私はラファエル様が直々に、アルベルトの味方になるように依頼してきた事を思い出して呟いた。
「ラファエル様はアルの事が心配だったんだな。いや、普通止めるだろ?そんな無謀な事!」
けれど私の目の前にいるアルを見ていると、ラファエル様の気持ちも分からなくはなかった。アルは淑女というよりは令息だ。私はため息をついて言った。
「まだ整理はつかないけど、とりあえずこの勝ち抜き戦で怪我をしないでくれよ?ここで何かあったら、私もシドもラファエル様や辺境伯に顔向け出来ないからな。はぁ、それにしてもこの一年間のシドの気苦労を思うと、本当同情するよ。」
私がそう言うと、アルはシドの脇腹を肘で突いてニヤニヤ笑った。
「シド、これからは愚痴を言える相手が出来て良かったね?」
私とシドは、この綺麗で何とも手のかかる友人であり監視対象を思わず埴輪目で眺めてしまった。アルはご機嫌でそろそろ時間だと立ち上がると、しなやかな身体を伸ばして準備体操を始めた。
私が思わずアルの後ろ姿を見るともなしに眺めていたけれど、確かに女だと思って眺めると柔らかな魅力的な尻だとか、腿だとか、急に目に毒な気がしてきた。
そんな私をシドがジロリと見ると、警告するように言った。
「俺はアルを今更女として見るには、痛い目にあった材料が多過ぎてその気にはならないけどな。ジェイク、お前は仮の恋人役ということもあるし、変に意識するかもしれない。だが、ラファエル様然り、辺境伯然り、下手な考えはしない方が身のためだぞ?
…それにアルはあの通り綺麗だが、中身があれだからな。振り回されるのがオチだぞ。」
私はため息をついてシドを見返して言った。
「分かってるよ。私もラファエル様を敵に回すほど馬鹿じゃない。ラファエル様の許嫁への恐ろしいまでの溺愛は貴族界に響き渡ってるからな。しかしアルが許嫁か…。ラファエル様も随分と思い切ったよな。」
私たちは顔を見合わせて苦笑した。どう考えてもアルは一筋縄でいかない人間だ。さすがはラファエル様なのか?
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